体験談(留学・高度)

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By KOKORO(毎日新聞社+VAIJ主催、在ベトナム日本国大使館など後援)

今回の先輩

グエン・ティエン・タムさん
  • 2009年高校卒業〈タイビン県〉
  • 2009年農業〈ダクノン県〉
  • 2010年徴兵(3年)
  • 2012年農業〈ダクノン県〉
  • 2014年大学入学〈ハノイ〉
  • 2017年日本語センターで学習〈ハノイ〉
  • 2017年日本語学校入学 /10月〈仙台市〉
  • 2019年専門学校入学〈仙台市〉
  • 2020年SGモータース就職内定(2021年4月から正社員)

〈1991年生まれ、タイビン省出身〉

日本で国際ボランティア団体などに参加し、日本語でたくさんの交流を重ねてきた留学生・タムさん。交流を通じて日本語も上達し、人脈も広がり、日本での就職もすんなり決まった。

社会人になってから日本留学

私の両親は私が10歳のときからダクノン省でコーヒーとコショウを栽培しており、年収は約400,000,000ドン(約183万円)です。私は弟や祖父母と生まれ故郷のタイビン省で育ち、高校卒業後は、徴兵に応じたり両親や親せきの農園を手伝ったりしたほか、大学にも行きましたが、中退しました。そんなある日、母が私の将来を考えて日本留学を勧めてくれたので、日本に行くことにしました。

こうして私は26歳のときにハノイの留学あっせん会社に依頼し、仙台の日本語学校を紹介してもらいました。ハノイでの日本語学習は4カ月間だけで、訪日直後は、日本人の話すことをほとんど理解できませんでした。

留学の費用

日本語学校で〈2019年3月〉

留学あっせん会社には計100,000,000ドン(約46万円)を払いました。ここには、授業料やキャンプ参加費、在留資格申請費、寮費、日本への飛行機代などが含まれています。また、在留資格を取得後、仙台の日本語学校の授業料1年分(約60万円=約132,000,000ドン)を追加で支払いました。

3年半の留学のために両親から出してもらった費用は全部で約600,000,000ドン(約275万円)で、私は日本で就職してから返すつもりです。

※100円=21,910 VND(2021年2月15日現在)

日本語学校を卒業して専門学校へ

自動車整備の専門学校

私は2017年10月に訪日し、日本語学校に1年半通い、2019年4月に自動車整備の勉強をするために同じ仙台市内の専門学校に入りました。専門学校は2年間で、入学金12万円、1年分の授業料は72万円です。卒業前に自動車整備士(2級)の国家試験があるので、現在、受験勉強を続けています。

アルバイト先の会社に就職内定

SGモータースでの休憩時間〈2018年〉

自動車整備士になることを決めたのは、仙台の自動車整備工場でアルバイトして、この仕事が気に入ったからです。アルバイト先は、ハノイの留学あっせん会社の幹部が紹介してくれた「SGモータース仙台店」です。幹部も仙台で留学経験があり、同店にコネがあったのです。

ハノイでの同期生は十数人ですが、日本語の成績の良かった私を含む4人だけが訪日前にSGモータースを紹介してもらえました。そのときに、幹部から「アルバイト先でまじめにやれば、卒業後に正社員になれる可能性がある」と聞かされていました。

バイト先へ仲間と自転車通勤〈2018年〉

SGモータースでは、自動車修理や整備の準備作業や掃除などを担当しています。国家資格を取得すれば、私も整備を担当できるようになります。勤務は月~金曜の18:00から5時間。夏休みでも勤務時間を増やしてもらえないのが残念ですが、お金は正社員になってから稼げばいいと考えています。

私と一緒にここで働いていた同期3人のうち2人はベトナムで大学を出ているので2020年4月に先に正社員になりました。私も2020年3月に試験と面接を受けて内定をいただきました。日本各地に工場を持つ会社なので、東京から来た面接官の面接を受けましたが、面接の日本語も問題なくこなせました。

ベトナム人コミュニティ

左:VYSAが協力した国際交流イベント〈宮城県で2018年〉, 右:VYSAの仲間数人で福島県にドライブ〈2018年〉

私は日本で様々な活動に参加しました。それによって仲間も増え、日本語の実践練習にもなりました。外国語は実生活で使うと格段に上達しますし、生活も充実します。ベトナム人コミュニティと国際交流に分けて紹介します。

【VYSA】

在日ベトナム学生青年協会。各地に支部があり、私はFacebookでVYSA仙台を知りました。仲の良かったリーダーが就職して東京に行ってからはあまり参加していませんが、以前は、イベントを手伝ったり、メンバーで旅行に行ったりしました。

Sen TVA主催のテトのイベント〈仙台市で2020年〉

【Sen TVA】

在仙台ベトナム人協会。日本各地のベトナム人協会の中でも特に活発に活動している団体です。私も以前、テト(旧正月)のイベントなどに参加しました。

これ以外に、ハノイの日本語センターの同期や日本の日本語学校、専門学校の仲間とも食事会をしたり、観光を楽しんだりしています。

国際交流

「心の港」のオフィスで食事会。共通言語は日本語か英語〈仙台市内で2018年〉

訪日直後は、日本人の話す言葉がほとんど分かりませんでしたが、国際交流活動で多くの日本人と知り合い、日本語力が上がりました。また、日本人の友だちができると、自分や友人が困っているときに相談に乗ってもらえるようになりました。

【Sing for Joy / 心の港】

2018年に仙台にできたカトリックのボランティア団体で、ベトナム人、カナダ人、フィリピン人、インドネシア人、日本人など約50人が参加しています。毎月1、2回、十数人で老人ホームに出向き、お年寄りと交流したり歌を歌ったりします。毎週水曜にミーティングがあり、菓子をたべながら英語や日本語で話し合います。カトリックの別のボランティア国際グループ「心の港」にも参加しています。

ベトアジで知り合った日本人たちと今も交流〈別の料理教室で2020年〉

【ベトアジなど】

ベトアジは「ベトナムの味」という意味で、日本各地にあるチャリティー・ベトナム料理教室です。スタッフが様々な国籍の参加者にベトナム料理を教えます。私はここで出会った日本人とも友だちになり、交流しています。

また、SGモータースでも休憩時間に日本人も含めて数人でおしゃべりをします。このように、生活の様々な場面で日本語での交流を重ね、日本語が上達しました。日本に来る前は、日本語がこんなに話せるようになるとは思っていませんでした。

普段の生活と生活費

私の部屋と近所の川原で採取した食用の草

私は歌うのが好きで、休日には歌の練習をしています。ベトナム語のポップやロック、バラードのほか、日本語の歌も少し歌います。アパートから専門学校までは自転車で約30分。学校が終わると、いったん帰宅して夕飯を食べ、再び自転車で約20分かけてSGモータースに行きます。

私の家計簿(1カ月の平均)

※専門学校1年目の家計簿※100円=21,910 VND(2021年2月15日現在)

収入(合計75,000円~85,000円)
アルバイト1件 75,000 円~85,000円
支出(合計70,000円)
家賃

29,500円

※水道代2,500円(固定)を含む

※一人暮らし(ワンルーム)

光熱費

3,000円

※電気・ガスの合計

携帯電話

3,200円

※インターネット+通話

食費

20,000円

※自炊

雑費

15,000円

※食事会、友人の誕生日など

差額・貯金(10,000円)
貯金

10,000円

※これ以外に授業料720,000円(1年分)は両親が負担

仙台市郊外の港

専門学校の近くで

後輩へのアドバイス

左:仙台駅 , 右:仙台市内の商店街

私は日本で正社員になったら、両親にお金を送り、もっと旅行もするつもりです。そして、ベトナムでもこれから乗用車が増えていくので、いつか、ベトナムで自分の自動車整備工場を開くのが夢です。

留学生にとってお金は生命線ですが、アルバイトだけで授業料と生活費の両方をまかなうのは困難です。東北など授業料や家賃の安い地方都市に住んで、部屋もシェアすれば、授業料も含めて毎月10万円前後で生活できる可能性もあります。しかし、東京だと、アルバイトの時給も高いですが、授業料や家賃も高いので、かなり苦しいのではないでしょうか。

私のように就職してから返済する計画なら、学生時代にいろいろな体験をできて財産になります。これから日本に留学する人には様々な活動に参加していただければ幸いです。そうすれば、日本に早くなじみ、日本語のレベルも上がると思います。

今回の先輩

Nguyễn Tiến Tâm(グエン・ティエン・タム)さん
  • 2009年高校卒業〈タイビン〉
  • 2009年農業〈ダクノン〉
  • 2010年徴兵(3年)
  • 2012年農業〈ダクノン〉
  • 2014年大学入学〈ハノイ〉
  • 2017年日本語センターで学習〈ハノイ〉
  • 2017年日本語学校入学 /10月〈仙台〉
  • 2019年専門学校入学〈仙台〉
  • 2020年SGモータース就職内定(2021年4月から正社員)

〈1991年生まれ、タイビン省出身〉

日本で国際ボランティア団体などに参加し、日本語でたくさんの交流を重ねてきた留学生・タムさん。交流を通じて日本語も上達し、人脈も広がり、日本での就職もすんなり決まった。

社会人になってから日本留学

私の両親は私が10歳のときからダクノン省でコーヒーとコショウを栽培しており、年収は約400,000,000ドン(約183万円)です。私は弟や祖父母と生まれ故郷のタイビン省で育ち、高校卒業後は、徴兵に応じたり両親や親せきの農園を手伝ったりしたほか、大学にも行きましたが、中退しました。そんなある日、母が私の将来を考えて日本留学を勧めてくれたので、日本に行くことにしました。

こうして私は26歳のときにハノイの留学あっせん会社に依頼し、仙台の日本語学校を紹介してもらいました。ハノイでの日本語学習は4カ月間だけで、訪日直後は、日本人の話すことをほとんど理解できませんでした。

留学の費用

留学あっせん会社には計100,000,000ドン(約46万円)を払いました。ここには、授業料やキャンプ参加費、在留資格申請費、寮費、日本への飛行機代などが含まれています。また、在留資格を取得後、仙台の日本語学校の授業料1年分(約60万円=約132,000,000ドン)を追加で支払いました。

3年半の留学のために両親から出してもらった費用は全部で約600,000,000ドン(約275万円)で、私は日本で就職してから返すつもりです。

※100円=21,910 VND(2021年2月15日現在)

日本語学校で〈2019年3月〉

日本語学校を卒業して専門学校へ

私は2017年10月に訪日し、日本語学校に1年半通い、2019年4月に自動車整備の勉強をするために同じ仙台市内の専門学校に入りました。専門学校は2年間で、入学金12万円、1年分の授業料は72万円です。卒業前に自動車整備士(2級)の国家試験があるので、現在、受験勉強を続けています。

自動車整備の専門学校

アルバイト先の会社に就職内定

自動車整備士になることを決めたのは、仙台の自動車整備工場でアルバイトして、この仕事が気に入ったからです。アルバイト先は、ハノイの留学あっせん会社の幹部が紹介してくれた「SGモータース仙台店」です。幹部も仙台で留学経験があり、同店にコネがあったのです。

ハノイでの同期生は十数人ですが、日本語の成績の良かった私を含む4人だけが訪日前にSGモータースを紹介してもらえました。そのときに、幹部から「アルバイト先でまじめにやれば、卒業後に正社員になれる可能性がある」と聞かされていました。

SGモータースでの休憩時間〈2018年〉

SGモータースでは、自動車修理や整備の準備作業や掃除などを担当しています。国家資格を取得すれば、私も整備を担当できるようになります。勤務は月~金曜の18:00から5時間。夏休みでも勤務時間を増やしてもらえないのが残念ですが、お金は正社員になってから稼げばいいと考えています。

私と一緒にここで働いていた同期3人のうち2人はベトナムで大学を出ているので2020年4月に先に正社員になりました。私も2020年3月に試験と面接を受けて内定をいただきました。日本各地に工場を持つ会社なので、東京から来た面接官の面接を受けましたが、面接の日本語も問題なくこなせました。

バイト先へ仲間と自転車通勤〈2018年〉

ベトナム人コミュニティ

私は日本で様々な活動に参加しました。それによって仲間も増え、日本語の実践練習にもなりました。外国語は実生活で使うと格段に上達しますし、生活も充実します。ベトナム人コミュニティと国際交流に分けて紹介します。

【VYSA】

在日ベトナム学生青年協会。各地に支部があり、私はFacebookでVYSA仙台を知りました。仲の良かったリーダーが就職して東京に行ってからはあまり参加していませんが、以前は、イベントを手伝ったり、メンバーで旅行に行ったりしました。

左:VYSAが協力した国際交流イベント〈宮城県で2018年〉, 右:VYSAの仲間数人で福島県にドライブ〈2018年〉

【Sen TVA】

在仙台ベトナム人協会。日本各地のベトナム人協会の中でも特に活発に活動している団体です。私も以前、テト(旧正月)のイベントなどに参加しました。

これ以外に、ハノイの日本語センターの同期や日本の日本語学校、専門学校の仲間とも食事会をしたり、観光を楽しんだりしています。

Sen TVA主催のテトのイベント〈仙台市で2020年〉

国際交流

訪日直後は、日本人の話す言葉がほとんど分かりませんでしたが、国際交流活動で多くの日本人と知り合い、日本語力が上がりました。また、日本人の友だちができると、自分や友人が困っているときに相談に乗ってもらえるようになりました。

【Sing for Joy / 心の港】

2018年に仙台にできたカトリックのボランティア団体で、ベトナム人、カナダ人、フィリピン人、インドネシア人、日本人など約50人が参加しています。毎月1、2回、十数人で老人ホームに出向き、お年寄りと交流したり歌を歌ったりします。毎週水曜にミーティングがあり、菓子をたべながら英語や日本語で話し合います。カトリックの別のボランティア国際グループ「心の港」にも参加しています。

「心の港」のオフィスで食事会。共通言語は日本語か英語〈仙台市内で2018年〉

【ベトアジなど】

ベトアジは「ベトナムの味」という意味で、日本各地にあるチャリティー・ベトナム料理教室です。スタッフが様々な国籍の参加者にベトナム料理を教えます。私はここで出会った日本人とも友だちになり、交流しています。

また、SGモータースでも休憩時間に日本人も含めて数人でおしゃべりをします。このように、生活の様々な場面で日本語での交流を重ね、日本語が上達しました。日本に来る前は、日本語がこんなに話せるようになるとは思っていませんでした。

ベトアジで知り合った日本人たちと今も交流〈別の料理教室で2020年〉

普段の生活と生活費

私は歌うのが好きで、休日には歌の練習をしています。ベトナム語のポップやロック、バラードのほか、日本語の歌も少し歌います。アパートから専門学校までは自転車で約30分。学校が終わると、いったん帰宅して夕飯を食べ、再び自転車で約20分かけてSGモータースに行きます。

私の部屋と近所の川原で採取した食用の草

私の家計簿(1カ月の平均)

※専門学校1年目の家計簿

※100円=21,910 VND(2021年2月15日現在)

収入(合計75,000円~85,000円)
アルバイト1件 75,000 円~85,000円
支出(合計70,000円)
家賃

29,500円

※水道代2,500円(固定)を含む

※一人暮らし(ワンルーム)

光熱費

3,000円

※電気・ガスの合計

携帯電話

3,200円

※インターネット+通話

食費

20,000円

※自炊

雑費

15,000円

※食事会、友人の誕生日など

差額・貯金(10,000円)
貯金

10,000円

※これ以外に授業料720,000円(1年分)は両親が負担

仙台市郊外の港

専門学校の近くで

後輩へのアドバイス

私は日本で正社員になったら、両親にお金を送り、もっと旅行もするつもりです。そして、ベトナムでもこれから乗用車が増えていくので、いつか、ベトナムで自分の自動車整備工場を開くのが夢です。

留学生にとってお金は生命線ですが、アルバイトだけで授業料と生活費の両方をまかなうのは困難です。東北など授業料や家賃の安い地方都市に住んで、部屋もシェアすれば、授業料も含めて毎月10万円前後で生活できる可能性もあります。しかし、東京だと、アルバイトの時給も高いですが、授業料や家賃も高いので、かなり苦しいのではないでしょうか。

私のように就職してから返済する計画なら、学生時代にいろいろな体験をできて財産になります。これから日本に留学する人には様々な活動に参加していただければ幸いです。そうすれば、日本に早くなじみ、日本語のレベルも上がると思います。

左:仙台駅 , 右:仙台市内の商店街