来日して間もないころに受けたカルチャーショックや“びっくりエピソード”を先輩たちが振り返る『センパイ座談会』を始めます。初回は「日本の交通」をテーマに4人の留学生や元留学生がオンラインで語り合いました。
Hoan(ホアン)さん:2018年に来日。日本語学校を経て現在は大学2年(経済学専攻)。
Tuan(トゥアン)さん: 2009年に来日。日本語学校、秋田大学を経て現在は在日ベトナム人協会(VAIJ)職員。
Phuong(フォン)さん:2019年に来日。日本語学校を経て現在は専門学校生(貿易)。
司会=Lan Anh(ランアイン、LA)さん:KOKORO編集部メンバー。日本在住30年以上の大先輩。
――(司会)「センパイ座談会」初回の今日は「日本の交通」についてです。ベトナムにも公共交通機関はありますが、日本の方がはるかに発達していますね。初めて来日したとき、どのように感じましたか?
Hoan 鉄道の発達ぶりがすごいですね。「どこの駅も混雑しているな」というのが第一印象でしたが、運営がしっかりしているため、利用客がたくさんいても混乱がありません。電車はいつも時間通りに来るし、たまに遅れる場合も駅員が必ずアナウンスします。乗客に親切なところが日本の良いところですね。また、利用者もマナーが高く、列に整然と並び、電車が到着しても中の人が降りるのを待ってから乗車しますね。これにもびっくりしました!
――「列に並ぶこと」はベトナム人の習慣からするとかなり衝撃ですよね。
Phuong 私は来日後間もなく、電車で失敗をしました。東京都内の日本語学校に初めて行った日のことです。授業が終って駅まで歩き、電車に乗りました。本当は千葉方面に向かう電車に乗らなければならなかったのですが、うっかり反対方向に乗ってしまったのです。発車して次の駅が聞き慣れない駅名だったので不安になり、その次の駅で思い切って電車を降りました。すると、近くに駅員さんがいたので、「西船橋駅(千葉県)に行きたいのですが、どうすればよいですか?」と聞くと、正しい電車に乗るためのホームを教えてくれました。
――反対方向の電車に乗るのは、東京ではよくあることですね(笑)でも、日本の駅員さんはやさしいですよね。
Hoan 僕は通学の際に駅名をよく見て乗車しました。先に留学していた姉から「行きを覚えれば帰りは同じ」「駅の数や駅名を覚える」というアドバイスを受けていました。アパートの最寄り駅から日本語学校までは4駅だったので、乗車後は通過する駅名を一つずつ確認し、駅の数も数えました。帰りはその逆になっていれば間違えずに帰れます。
Tuan 僕は日本語学校に初めて登校したときは、先輩が一緒だったので苦労なく電車に乗れました。その日、校長先生が僕たちに東京の電車路線図を渡してくれたのですが、僕にはそれがクモの巣にしか見えませんでした(笑)。来日前にドンズー日本語学校(ホーチミンの有名日本語学校)で6カ月間勉強したのですが、駅名の漢字はほとんど読めませんでした。
東京の地下鉄路線図。まるでクモの巣!?
Phuong 東京の新宿や池袋のような大きな駅にはたくさんの鉄道会社や路線の駅が集まっていて、構内がとても複雑ですね。出口も多く、電車を降りてから目的地に行く際にいつも迷ってしまいます。
――電車に乗るときに交通系ICカードを使うのが一般的ですね。電子マネー機能が付いているので、カードにお金をチャージしておけば、電車はもちろん駅やコンビニなどで買い物にも使えます。このカードはバスでも利用できます。
Phuong 私は普段の外出や病院に行くときなどによくバスを利用します。バスの場合は、乗るときにも降りるときにも、乗降口付近のリーダーにICカードをタッチします。これさえ覚えれば、バスも路線がたくさんあって、とっても便利ですね。ベトナムのバスとの違いはというと…バス内のスタッフが運転手さんしかいないところかな。
――日本の場合は昔からほとんどがワンマンバスですね。
Hoan 僕は以前、マクドナルドでアルバイトをしていました。別の店のサポートに行くことが時々あって、バスに乗る必要がありました。店の日本人スタッフに行き方を教わるのですが、何しろ来日して間もなかったのでバス停にたどり着くまで5分おきに人にたずねる始末でした。ようやくバス停を見つけてバスに乗り込むと、今度は運転手さんに行き先を告げ、「僕が降りる停留所に近づいたら教えてください」とお願いしました。声をかけてもらいやすいように運転席のすぐ後ろに立っていたところ、運転手さんが「次で降りてくださいね」と言ってくれたので、無事に目的の停留所で降りることができました。
Tuan 僕が素晴らしいと思うのは日本のノンステップバスですね。車椅子利用者やお年寄りが楽に乗り降りできるように設計されているバスのことで、乗降口の段差をなくし床も低くしてあるんですね。
――次は、最も身近な交通手段である自転車について。みなさん、日本の自転車の交通ルールは把握できていますか?
Hoan 日本では自転車は左側通行が原則!外国人も従わないといけませんね。
Phuong それに、自転車は歩道を走ってはいけないですよね。それから、「2人乗り禁止」ですね。もし後ろに人を乗せているところを警察官に見つかったら、違反で呼び止められてしまいます。
Hoan 実は僕、2人乗りで警察官に注意されたことがあるんです。違反と知りながら、日本語学校の帰りに2人乗りで歩道を走っていました。すると、背後から突然パトカーのサイレンが聞こえ、拡声器で「2人乗りは違反ですよ。自転車は歩道を走ってはいけません」と呼びかけられたのです。当時は来日2年目でその日本語の意味も分かったので、すぐに自転車から降りて歩きました。それ以降は自転車の後ろに人を乗せていません。
external link ブログ:「日本-自転車の国」
――電車、バス、自転車以外で日本の交通について印象に残ったことはありますか?
Hoan 日本の車はほとんどクラクションを鳴らさないですね! 僕にとってはそれが一番興味深い発見でした。「本当に危険な時にしか鳴らさない」という印象ですね。
Phuong そうそう、日本では車の数がすごく多いのに、クラクションを聞くと「珍しい」と感じます。ベトナムでは「車はいつも大きな音を立てている」という印象(笑)。日本の道路はクラクションの音がしないからとても静かで、ベトナムとの大きな違いですね。
LA 車をよく運転する日本人に聞くと、電車やバスの乗降時のマナーと同じで、日本では車の運転時にも譲り合いの気持ちを大事にする人が多いので、本当に危険なときにしかクラクションを鳴らさない傾向があるそうです。
――それでは、最後に一言ずつどうぞ。
Hoan 初めて日本に来たとき、留学会社のスタッフの皆さんにたくさんサポートしてもらいました。勉強・生活・仕事などあらゆる面で助けてもらい、とても感謝しています。
Phuong 日本の移動手段はとても便利だと思いますし、困ったことがあれば駅員や警察がすぐに助けてくれます。街の人たちも、外国人だろうと分け隔てなく親切にしてくれます。私にとって日本はとても住みやすい国です。
Tuan 日本の標識や案内板には英語や中国語はあってもベトナム語はまだほとんどありません。しかし、Hoanさんのように分からないことがあれば、何でも周りの人に聞いてみましょう。日本人の多くはフレンドリーで親切ですよ。
すべて
日本に行こう
日本で暮らす
日本で留学
日本で働く
困ったときは
日本語を学ぶ
わたしの体験
KOKORO BLOG
JASSO(日本学生支援機構)
外国人労働者弁護団
WA.SA.Bi.
来日したばかりの皆さんは目的地へ移動する最適な交通手段が分かりませんね。在日ベトナム人の先輩がよく使う交通系アプリを紹介します。
「午前10時のアポイントメントです。何時何分から遅刻ですか?」。日本で働く場合の時間の感覚について、ビジネスマナー講師(日本人)と日本の会社役員(ベトナム人)が解説します。
日本人の実に約60%が自転車を使っていて、1人あたりの保有台数は世界でも6~7位です。今回はそんな日本の“自転車文化”を紹介します。
長野県の高原リゾート「軽井沢」は有名政治家や財界人、文化人の別荘が集まっている場所として有名ですが、東京から約1時間で行けるため、週末旅行や日帰り旅行を楽しむ人も多いです。