困りごと解決

包丁持ち歩きで逮捕!?

★包丁
2021年11月16日

 

在日ベトナム人も飲食品や食器などを持ち寄って友人宅や野外でよく宴会をします。しかし、その際に料理を手伝おうと思って包丁を持って行くと、場合によっては警察につかまってしまいます。包丁やナイフなどの持ち歩きに関する注意点をお伝えします。

包丁所持で交番に同行①

私は以前、留学生として全国チェーンの居酒屋でアルバイトをしていました。店は東京・渋谷にありましたが、うちの店が忙しいときは、近くのグループ店のスタッフがうちの店にサポート(手伝い)に来ましたし、近くの店が忙しいときには、逆にうちからだれかがサポートに行きました。

ある日の午後8時ごろ、同僚のベトナム人留学生が店長から「包丁を持って隣の店にサポートに行ってください」と指示されました。包丁は厨房の仕事で使います。包丁を持って他店のサポートに行くことは当時よくあることで、彼は包丁1本を新聞紙で包み、そのまま手に持って出かけました。

渋谷の繁華街

すると、彼が数百メートル離れた他店に歩いて向かう途中、警察官2人に呼び止められ、職務質問されました。日本では警察官が不審に思った人を呼び止めるのはよくあることです。何をしているのか聞かれ、場合によっては所持品も調べられます。彼は新聞紙で包んだ包丁を持っていたことがもとで近くの交番に連れていかれてしまいました。

彼は警察官に事情を説明しましたが、日本に来てまだ2年目で日本語力が足りず、意味があまり伝わりません。やがて、警察からうちの店に「おたくのスタッフが包丁を持って繁華街を歩いていたため、交番で一時的に保護している」と電話がかかってきました。

店長が交番に出向いて事情を説明し、やっと納得してもらえましたが、店長も同僚も「すぐに使える状態で包丁を持ち歩くのは危険だ」と警察から注意されたそうです。彼が警察から解放されたのは、店を出てから約2時間後のことでした。

包丁所持で交番に同行:ケース②

上野公園の夜桜

私は東京に長く住んでおり、ベトナム人仲間で宴会をしたり、桜や紅葉を見に行ったりすることがよくあります。その際、食べ物や飲み物、果物、食器など、飲食品や備品の準備を分担します。2017年春に東京の上野公園に二十数人で花見に出かけたときもそうでした。

このとき、果物の皮をむくための包丁や肉を切るはさみを持ってくる担当になった留学生がいました。彼は包丁と大きなはさみをカバンに入れて電車に乗り、上野駅で降りましたが、駅の近くで警察官たちから職務質問を受け、カバンに包丁が入っていたため、やはり交番に連れて行かれました。

彼も日本語があまり話せなかったため、包丁を持っていた理由をきちんと説明できませんでした。また、彼は普段は携帯電話をWi-FiにつないでSNSで仲間と連絡を取っており、携帯にSIMが入っていなかったので、Wi-Fiのない警察から私たちに連絡することもできませんでした。

警察は結局、彼の留学先の日本語学校に電話し、学校の担当者と通訳が警察に説明に来てやっと理解してもらえました。彼が職務質問されてから解放されるまで4時間半ぐらいかかりました。

刃物に関する日本の法律

日本には銃や刃物の携帯を規制する法律があります。包丁やナイフ、はさみなどは仕事や生活に必要なので、所有することは自由です。しかし、正当な理由なくこれらを持ち歩くことは法律で禁止されています。刃物の携帯は犯罪につながるので、必要な場合に警察が取り締まることができるようにするためです。

この法律では、刃渡りが6 cmを超える刃物について、「業務その他正当な理由による場合を除いては、これを携帯してはならない」と定めています。違反すると刑罰の対象になります。

ここで「業務その他正当な理由」とは次のような意味です。

「業務」とは仕事です。例えば、調理師が包丁をカバンに入れて職場に持って行く場合は「業務のため」なので合法です。また、「その他正当な理由(それ以外の正当な理由)」とは、例えば、店で包丁を購入し、パッケージされた状態のままカバンに入れて自宅に持ち帰る場合などを指します。しかし、護身のためにナイフなどを持ち歩く行為は「正当な理由」とはみなされず、違法となります。

居酒屋のアルバイトで包丁を持って他店に行くことは仕事上の行為ではあります。しかし、新聞紙に包んだ包丁を持ち歩くと、包丁をすぐに使える状態なので、周囲から見ると非常に危険です。したがって、警察から厳重に調べられてしまいます。カバンに入れて持ち歩いても、ケースなどに入れずカバンからすぐに取り出して使える状態であれば、同じように危険なので、やはり警察から詳しく調べられる可能性があります。

なお、刃渡り6 cm以下の刃物の携帯も別の法律で規制されており、正当な理由が必要です。正当な理由なく刃物を持ち歩くと周囲に不安を与え、場合によっては警察に逮捕されます。日本では、基本的に刃物を持ち歩かない方がよいでしょう。