ブログ

ベトナムの常識・日本の非常識_24:ハグは迷惑 !?

常識・非常識24-7
2021年12月09日

多くのベトナム人が相手の人への親愛の情を示すために行うハグは、日本人にはあまり歓迎されません。日本人にとってのハグの受け止め方▽お辞儀の文化▽丁寧(ていねい)な見送り――など、あいさつに関する日本の文化を見ていきましょう。

ハグはあまり歓迎されません

こんな場面を想像してみてください。

あなたは旅行に行き、1週間ホームステイをしました。温かく迎え入れてくれたステイ先の家族と触れ合い、おもてなしにとても感動しました。別れのときが来て、あなたは感謝の気持ちを伝えるため何かしなければ、と思いました。

こんなとき、西洋文化の影響を受けているベトナム人はお世話になった家族にごく普通にハグ(抱擁)をします。日ごろのステイ生活でも、家族と夕食を共にしてワインを傾けたりする際には、肩や腕が触れ合うような距離感が一般的です。

しかし、日本では、たとえ親しくなったとしても、ハグをしたり肩を触れ合わせながら食事をしたりするのはまれです。夫婦や恋人、家族などをのぞき、親愛の情を示すアクションとしてハグはあまり使われないのが日本の文化であり、ハグは場合によっては非常識な態度だと思われてしまいます。

中洲エリア

こんな話もあります。

福岡市の中洲エリアにある「ハナホステル福岡」というゲストハウス(安い宿泊施設)の更衣室とトイレの両方に英語の看板があります。

In Japan, we don’t hug. We say Thank you (Arigatou gozaimasu).
(日本ではハグはしません。『ありがとうございます』と口で言うだけです。)

外国人客が多いこのホステルでは、受付の女性3人が欧米の男性宿泊客たちからのハグを丁寧にお断りしなければならない場面がよくあるそうです。彼らの行動は世界的には珍しくありませんが、日本では、男性が女性に過度に接触すると、非常識だと思われることが多いのです。

日本人のお辞儀文化

「ハグ」に関する日本人の感じ方については、多くのベトナム人が不思議に思うでしょう。「抱きしめずに、日本人はどのようにお別れを告げるのですか?」と聞きたくなりますね。その答えは「彼らはお辞儀をします」です。日本のお辞儀は角度によって意味も変わってきます。

ベトナム人には、会ったときやお酒を飲んだ後に握手する文化があります。日本人も握手をしますが、それよりも頻繁に行われるのがお辞儀です。

日本人はお辞儀の角度によっては使い方を変えています。例えば次のような感じです。

  • 軽いお辞儀(約15度)=一般的なあいさつ
  • 普通のお辞儀(約30度)=丁寧なあいさつ
  • 深いお辞儀(約45度)=深い感謝や敬意を表現
  • もっと深いお辞儀(45度以上)=さらに深い感謝や敬意を表現

「感謝」「敬意」以外に「謝罪」の意味でお辞儀をする場合もあります。その場合もお辞儀が深いほど、強い気持ちを込めることになります。

これが日本人のあいさつです。

丁寧(ていねい)な見送り

次に、お別れのあいさつについても見ていきましょう。日本でも、日常生活で友人に別れを告げるときは、手を振って「バイバイ」と言って別れます。細かな動きや言葉は多少異なりますが、基本的には日本もベトナムも同じです。

しかし、仕事の場面などでの別れ方は異なります。ベトナムでは「○○さんさようなら」「お先に失礼します」などと言葉に敬意を込めるだけですが、日本人は言葉に加えてお辞儀をします。地位の高い人には、深くお辞儀をします。また、大事な相手が帰る際は、エレベーターや出口まで見送ってお辞儀をします。見送る人はエレベーターの扉が閉まるまでお辞儀を続けます。

見送られる人が出口まで見送ってもらった場合は、そこでお辞儀をして別れを告げ、少し歩くと振り返ってまたお辞儀をし、さらに、交差点などで相手が見えなくなる前にもう一度振り返ってお辞儀をするといった場合がよくあります。逆に、見送る方は相手が見えなくなるまで出口で待ちます。

「バイバイ、ボス!」と言ってすぐに相手に背を向けて帰るような行動は、場合によっては「礼儀知らず」と思われてしまいます。

日本人は会社の中だけでなく、日常生活でも手厚いお別れをします。誰かの家を訪ねて帰るとき、あなたが見えなくなるまで相手が玄関の外に立って見送ってくれても驚かないでください。

“ありがとう”と“すみません”の文化

かつて『来日2週間で体験した日本の文化』というテーマでライブストリーミング動画を配信していた東京在住の米国人ブロガーは、日本ほど「ありがとう」や「ごめんなさい」という言葉が使われる国には住んだことがない、と冗談を言っていました。「日本人はその人生においてあらゆる状況で感謝と謝罪をする」というのです。

日本人がいつもお礼やお詫びの言葉を発することについては、私も少し違和感があります。例えば、あなたがエレベーターに乗り込み、ドアが閉まる直前に日本人が乗ってきたとします。そのとき、その日本人から「すみません」と頭を下げられることがあります。これは、その人が後から入ってきたためドアが閉まるのが少し遅れたことへのお詫びのようです。しかし、かつて私には彼らが何を謝罪しているのか分かりませんでした。

逆に、日本人から「ベトナム人は『ありがとう』や『すみません』をあまり言わない……」と批判されるかもしれません。しかし、これは日本とベトナムの文化の違いです。日本人にもその点は理解して頂けると幸いです。

日本人は感謝や謝罪を伝える際に礼儀正しい言葉を使いますが、ベトナム人の表現は異なります。例えば、子どもが大人からキャンディーをもらった場合、日本人は「ありがとう」と言いますが、ベトナム人の多くは「いただきます」と言います。また、あなたが誤ってだれかの靴を踏んだとします。日本人は「すみません」と謝罪しますが、ベトナム人はストレートに謝らず「わざとじゃないんです」と言うかもしれません。

感謝やお詫びの表現についてベトナム文化と日本文化では少なからず違いがあります。お互いの文化を理解し、「郷に入っては郷に従え」で、その国や地域の習慣に合わせて円滑なコミュニケーションを心がけたいですね。