技能実習・特定技能
特定技能の登録支援機関とは?
「登録支援機関」という言葉をご存知ですか?特定技能1号の外国人に対しては、受入会社がサポートを行うよう義務付けられています。その会社がサポートを自分で行うことができない場合、登録支援機関が代わりに行います。登録支援機関について説明します。
登録支援機関とは
特定技能外国人(1号)の受入会社は、その外国人に次のようなサポートをすることが、法律で義務付けられています。
1. 入国前の生活ガイダンス |
2. 入国時の空港への出迎えと帰国時の空港への見送り |
3. 住宅確保に向けた支援(保証人になることを含む) |
4. 在留中の生活オリエンテーション(銀行口座の開設や携帯電話の利用契約の支援を含む) |
5. 生活のための日本語習得の支援 |
6. 本人からの相談・苦情への対応 |
7. 各種行政手続についての情報提供と支援(同行) |
8. 日本人との交流機会の提供 |
9. 本人に責任がないのに解雇された場合に転職支援 |
こうしたサポートを受入会社が自分で行う場合もあります。しかし、外国語で行わなければならない支援もあるため、登録支援機関に委託する会社の方が多いです。
登録支援機関の中には、これらの支援以外に独自の支援を追加で行っている機関もあります。
登録支援機関の担い手
実際に登録支援機関になっているのは次のような組織です。
・技能実習の組合(監理団体)
・人材紹介会社
・行政書士や社会保険労務士の事務所
・外国人を支援する団体
・外国人の生活をサポートする会社
宿泊・外食以外の12分野では、技能実習の約3年間を問題なく修了した人が試験なしで特定技能に移ることができます。その場合、技能実習の組合が登録支援機関としてサポートを続けることが多いです。
技能実習と違う職場で働きたい場合、人材会社などの紹介で他社で働くこともできます。その場合、人材会社が登録支援機関になっている場合があります。
行政書士や社会保険労務士、通訳、外国人支援を行う団体、住宅確保や携帯電話提供など外国人の生活サポートを行っている会社も登録支援機関になっています。
登録支援機関の母体によって、法律で義務付けられた支援以外の追加支援の内容が違うので、特定技能の求人情報を調べる際に登録支援機関についてもチェックしてみるとよいでしょう。
登録支援機関になるには?
登録支援機関になるには、入管に申請して認められなければなりません。その際に、例えば次のような条件があります。
・特定技能外国人を支援する責任者や担当者がいる。
・2年以内に中長期在留者(3カ月を超えて日本に在留する人)の受け入れ実績がある。
・支援担当者が過去5年のうち2年以上、中長期在留者の生活相談を業務として行ったことがある。
・1年以内に、自分の責任で特定技能外国人や技能実習生の行方不明者を出していない。
また、登録支援機関に支払う費用を負担するのは受入会社であり、特定技能外国人に費用を負担させてはいけません。
登録支援機関が外国人へのサポートを適切に行わなかったり、入管への提出物を出さなかったりすると、入管から登録を取り消されます。
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★基本情報=特定技能(総まとめ)
<このページの内容> 1.特定技能制度とは 2.特定技能制度の仕組み 3.特定技能の在留資格の取り方 4.特定技能の特徴 5.まとめ これまで専門的・技術的分野以外の分野(いわゆる単純労働分野)で働ける外国人は主に次の3つの場合に限られていました。 ❶「永住者」「日本人の配偶者」など(どんな仕事も可能/フルタイムもOK) ❷「留学」などの在留資格+資格外活動許可(労働時間は原則として週28時間以内) ❸「技能実習」(83業種/フルタイム) これらに加えて、2019年に「特定技能」という新しい在留資格ができました。特定技能には、「相当程度の知識または経験を必要とする技能(特定技能1号)」と「熟練した技能(特定技能2号)」の2種類があります。それでは、特定技能制度のポイントについて解説します。 【弁護士法人Global HR Strategy・杉田昌平弁護士】 1.特定技能制度とは 農業の特定技能外国人(宮崎県) 特定技能制度の趣旨 2019年に日本の「出入国管理及び難民認定法(入管法)」が改正され、新しい在留資格として「特定技能1号」と「特定技能2号」ができました。これは、働き手が著しく不足している産業・サービスの分野で、研修などを経ずに働くことができる技能を持った外国人の就労を認めるための制度です。 特定技能の対象分野 1号 2号 介護 〇 ビルクリーニング 〇 素形材産業 〇 産業機械製造業 〇 電気・電子情報関連産業 〇 建設 〇 〇 造船・舶用工業 〇 〇 自動車整備 〇 航空 〇 宿泊 〇 農業 〇 漁業 〇 飲食料品製造業 〇 外食業 〇 それでは、働き手が著しく不足している産業分野とは何でしょうか? 特定技能1号の受け入れが認められている産業分野(特定産業分野)は上の表の14分野です。「外食」など技能実習生が働けない分野も含まれています。特定技能2号を受け入れられるのは建設と造船・舶用工業の2分野のみです。 特定技能の位置付け この図をご覧ください。左上の「専門的・技術的分野」は具体的には「高度専門職(1・2号)」や「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を持つ方々を指します。こうした人材を「高度外国人材」と呼ぶこともあります。 日本では、特定技能ができるまでは、働く外国人を受け入れる方針としては、専門的・技術的分野の人材の受け入れを主眼にしていました。一方、「技能実習」は働きながら技能を学ぶ制度と位置付けられ、労働者を日本に呼び込む制度には含まれていません。 この専門的・技術的分野と技能実習の中間に作られたのが「特定技能1号」です。また、専門的・技術的分野と同じ技能水準で、産業・サービスの現場で働くための在留資格が「特定技能2号」です。 2.特定技能制度の仕組み 特定技能制度の登場人物 特定技能制度の主な登場人物は次の3つです。 特定技能外国人 受入企業(特定技能所属機関) 登録支援機関 これらの登場人物の関係や役割について、「特定技能1号」の場合を中心に説明します。特定技能制度では、特定技能外国人と受入企業の二者間だけ契約を完結することも可能です。例えば、技能実習生として働いてきた人がそれまでと同じ企業で同様の仕事で特定技能1号になるような場合は、二者間で契約を結ぶことも容易です。 1号特定技能外国人支援 ただし、受入企業と特定技能外国人の二者間で契約した場合でも、企業が「1号特定技能外国人支援」と呼ばれる支援をその外国人に行う必要があります。 ■1号特定技能外国人支援の内容 ①入国前の生活ガイダンス ②入国時の空港への出迎えと帰国時の空港への見送り ③住宅確保に向けた支援(保証人になることを含む) ④在留中の生活オリエンテーション(銀行口座の開設や携帯電話の利用契約の支援を含む) ⑤生活のための日本語習得の支援 ⑥本人からの相談・苦情への対応 ⑦各種行政手続についての情報提供と支援(同行) ⑧日本人との交流機会の提供 ⑨本人に責任がないのに解雇された場合に転職支援 この支援について、受入企業は支援計画を作成して実行しなければなりません。また、図や表の中でオレンジ色を施した支援については、その外国人が理解できる言語で提供しなければなりません。こうした支援を受入企業が自社でできない場合、登録支援機関に委託することになります。 送出機関 既に日本で留学や技能実習、就労をしている人が特定技能外国人になりたい場合は、日本国内で就職活動ができますが、ベトナムから新規で日本に行って特定技能外国人になる場合は、ベトナムの送出機関を通じて就職先を探す必要があります。そのため、技能実習と同じで送出機関をどのように選ぶかがとても重要になります。送出機関の選び方については、下記のリンク先を参考にしてください。 送出機関の選び方 *このページではApache 2.0ライセンスで配布されているアイコンを利用しました。 3. 特定技能の在留資格の取り方 宿泊業の技能測定試験の過去問題 特定技能外国人になる2つのルート 特定技能1号の在留資格を取得するには次の2つのルートがあります。 ①試験ルート…日本語力と技能水準を試験で証明する ②技能実習ルート…技能実習2号(1号と2号で計3年間)を良好に修了する 試験ルート ・日本語の試験…日本語能力試験(JLPT)のN4以上。または、国際交流基金が行うJFT-Basicに合格。 ※介護については、これらに加えて介護日本語評価試験への合格が必要 ※JLPTは年2回、JFT-Basicは年6回 日本でも受けられるようになったJFT-Basic ・技能測定試験(技能試験)…産業分野別の筆記試験に合格 このように日本語試験と技能試験に合格すれば、一度も日本に行ったことがない人でも特定技能1号になることができます。また、日本で留学していた人や他の在留資格で仕事をしていた人が試験を受けて特定技能を目指すケースも増えてきています。 技能実習ルート 技能実習を2年10カ月以上「良好」に行った人は、技能実習と同じ分野の仕事であれば、無試験で特定技能1号の在留資格を得ることができます。「良好」に技能実習を行ったと認定してもらうためには、技能実習3年目に受検する技能検定3級や技能実習評価試験(専門級)への合格などが大事です。 また、自分の技能実習と違う産業分野で特定技能をしたい場合は、その分野の技能試験に合格すれば大丈夫です。その場合でも、技能実習の3年間を良好に修了していれば、日本語試験は免除されます。 4.特定技能の特徴 特定技能の在留期間 ・特定技能1号…在留期間は通算で5年まで(1年、6カ月、4カ月ごとに更新) ・特定技能2号…在留資格を何度でも更新できる(3年、1年、6カ月ごとに更新) 他の在留資格との違い ・技能実習との違い…①日本で別の会社に転職できる ②日本人と同等の報酬をもらえる ・「技術・人文知識・国際業務」との違い…学歴にかかわらず在留資格を取得できる 特定技能1号と2号の違い(家族の帯同) ・特定技能2号では家族を帯同できますが、特定技能1号では帯同できません。 永住について 日本に在留するうち、永住者の在留資格を得たいと思う方もいると思います。永住者の在留資格を得るためには、原則として続けて10年以上日本に在留していることなどが必要です。そして、その10年のうち5年以上については、就労資格か居住資格(日本人の配偶者等)を持って在留を続けたという経歴が求められます。その場合の「就労資格」には「技能実習」や「特定技能1号」は含まれませんが、「特定技能2号」は含まれます。つまり、日本に続けて10年以上在留し、そのうち5年以上が特定技能2号の在留資格だった場合、永住者の在留資格に変更できる可能性があります。 5.まとめ ここまで説明してきた特定技能制度のポイントをまとめると、次のようになります。 特定技能は専門的・技術的分野と技能実習の中間的な位置付け 特定技能1号で働けるのは14の産業分野 登録支援機関を介さずに会社と契約することもできる 特定技能外国人になるには2つのルート(技能実習、試験)がある 日本人と同等の給料+転職が可能(技能実習との違い) 学歴要件がない(技術・人文知識・国際業務との違い」 特定技能制度はできたばかりで、手続きも複雑です。他方で、日本で働く新しいチャンスでもあります。制度の内容をよく理解し、自分の希望する働き方や進路と合致するかどうかを良く確かめて制度を活用してください。
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特定技能の申請に使える日本語新テスト
特定技能の申請に使える日本語試験 “JFT-Basic”を3月から日本でも受験できます。試験結果は受験終了後すぐにわかります。年に6回あり、年2回のJLPTより便利です。 JFT-Basicが日本でも受験可能に JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト/Japan Foundation Test for Basic Japanese)が3月から日本国内でも実施されることになりました。このテストは「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力」があるかどうかを判定します。テスト結果は「特定技能」の在留資格を申請する際にも使えます。初回は2021年3月1日(月)~19日(金)です。 JFT-Basic は2019年4月~2020年12月に海外(モンゴル、インドネシア、カンボジア、タイ、フィリピン、ミャンマー、ネパール)で14,900名が受験、5,543名が基準点に到達しました。 https://www.jpf.go.jp/jft-basic/index.html JFTのホームページ 特定技能の申請に使える 在留資格「特定技能1号」を取得するには、各職種(14分野)の技能試験と日本語試験に合格することが必要です。技能実習を3年間、良好に続けた人は日本語試験を免除されます。そうでない場合は、JLPT(日本語能力試験)でN4を取得する以外にJFT-Basicで200点を取る(250点満点)という選択肢も加わりました。 留学生から特定技能外国人になりたい人や、新型コロナの影響などで技能実習を3年間続けられなかった人などが、特定技能の在留資格を申請する際に利用できます。しかも、1年に6回あり、年2回のJLPTより便利です。 JFT-Basicの特徴と実施要領 ⚫ JFT-Basicの特徴 ・テスト会場でコンピュータ画面で問題を読み、画面上で解答します。 ・テスト結果は受験後すぐにわかります。 ・テストは年6回 ・全国約120会場で実施 ⚫ 実施要領 ・受験料:7,000円(税込み) ・受験資格:日本在留資格を持つ外国人 ・申込:テスト実施業者のウェブサイトから http://ac.prometric-jp.com/testlist/jfe/index.html テストの形式・構成 ・コンピュータ画面で問題を見て、画面の上で解答(CBT方式) ・受験者は各ブースでコンピュータ画面に表示される問題やヘッドフォンに流れる音声をもとに、画面上で解答します。「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4セクションに分かれ、全部で約60問あります。 ・受験時間は60分間 試験問題のサンプル。設問の言語は画面上で選択でき、ベトナム語も選べます。 その他のサンプル問題 テスト結果 ・テストが終わると、画面に総合得点と判定結果が表示されます。その後5営業日以内に予約ウェブサイトにログインすると、正式な判定結果通知書が表示され、印刷できます。 ・このテストは「日本語で何がどれだけできるか」を測定します。総合得点は250点満点で、200点以上を取れば、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力水準に達している」と判定され、特定技能の申請などに利用できます。
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Vol. 44 農園で技能実習から特定技能へ
今回の先輩 マイ・ティ・スアンさん 2015年 5月チュック・ニン B高校卒業〈ナムディン県〉 2015年 8月ナムディン日本語日本文化学院入学 2017年 7月ナムディン日本語日本文化学院卒業 2017年 8月訪日→講習〈東京〉 2017年 9月技能実習開始〈宮崎県〉 2020年 9月同じ職場で特定技能開始〈宮崎県〉 〈1997年生まれ、ナムディン省出身〉 今回もナムディン学院出身の先輩が登場。スアンさんは一流大学に合格したが、家庭の事情で入学せず、日本語を2年間勉強してから訪日した。食品加工工場などで3年間働いた後、特定技能に変更し、引き続き日本で働くことになった。彼女の日本語学習の努力や職場での活躍ぶりを紹介する。 日本に行こうと思ったきっかけ ナムディン学院で校長が開いた食事会。左端が私。〈2015年〉 私は化学と数学が得意でハノイ工科大学(Trường Đại học Bách khoa Hà Nội HUST)に合格しましたが、「学費を払えないし、大学を出てもいい仕事に就けるかどうかわからない」と母に言われました。数年前に父が交通事故を起こして多額の損害賠償金を払ったほか、父が事業で使っていた砂利運搬船も3回沈没し、わが家に大きな借金があったからです。 私は進学をあきらめて日本で技能実習をすることにしました。そして、せっかくなら日本語をしっかり学んでから行こうと考え、地元で評判の高いナムディン日本語日本文化学院を選びました。 ナムディン学院での努力 ナムディン学院の卒業式〈2017年〉 ナムディン学院の授業は午前だけで、午後は生徒が学校の教室で自習(宿題と復習)をします。私たちは午後1時半~4時半に勉強し、運動や夕食を終えて午後7時~10時にも勉強しました。先生方の教え方と学校の雰囲気のおかげで、勉強すればするほど日本語が楽しくなりました。 私はナムディン学院での2年目、四位農園の会長がナムディン学院を訪れたときに面接を受けて合格し、その7カ月後に訪日しました。送出手数料は学院から借り、実習を始めて3カ月で返しました。JLPTについては、在学中にN3を取得し、訪日の翌年にN2に合格しました。今はN1を目指しています。 【編集部からの情報】 ナムディン学院では、生徒が1年半~2年間勉強し、JLPT・N3レベルになってから日本に行きます。授業料は月2,000,000ドンです。遠方の生徒も受け入れます。 生徒に紹介する技能実習先は、学院の教師らが現地を訪問して給料や職場環境などを調べて選んだ職場だけです。送出機関には手続きだけを依頼し、国が決めた手数料しか支払いません。技能実習が終わってから帰国後、もう一度日本に行って留学し、日本で正式に就職するコースも推奨しています。 *ナムディン日本語日本文化学院:namdinhgakko@yahoo.com.vn ナムディン学院の校長(左奥)が四位農園を訪問〈2019年〉 日本人の先輩のサポート役 工場での作業。右端が私。〈2020年7月〉 私の仕事は朝7時半から夕方4時半までです。最初の半年間は畑で働きましたが、女性実習生の大半が途中で農園内の食品加工工場に移ります。ホウレンソウや枝豆など農園でとれた野菜を冷凍加工する工場です。私は冷凍野菜の包装(袋)の印刷などをチェックし、箱に入れます。袋が箱にいっぱいになると箱(重さ9~16㌔)をパレットに移します。工場の仕事が少ないときは、畑も手伝います。 実習生仲間や日本人の先輩と焼き肉屋へ〈2019年〉 あるベトナム人男性と私が経験も長く日本語もよく話せるので、日本人の先輩たちのサポートをしています。先輩が実習生の配置を決めるのを手伝ったり、通訳をしたり、新しい実習生に仕事を教えたりします。先輩たちと話をすることで日本語の練習になりますし、わからない言葉や間違いを先輩がその場で教えてくれます。先輩たちの車でスーパーに連れて行ってもらったり、一緒にラーメン屋に行ったりすることもあります。 日常生活 女子寮の食堂 ここには40人近い外国人がいますが、私はナムディン学院の後輩3人と特に仲良しで、女子寮で一緒におしゃべりをしたり歌を歌ったりします。学院の行事でよくみんなで歌ったKiroroの「未来へ」をここでも歌っています。寮の台所は共用で、大きな食堂があります。普段はばらばらに食べますが、だれかが実習を終えて帰国する場合などは、みんなで食事会をします。そのときにはお酒も飲みます。 農園の仲間(日本人3人、ベトナム人4人)で観光〈宮崎県で2020年6月〉 実習生用の小さな畑があり、自分たちで食べる野菜を栽培しています。空心菜やゴーヤ、トウモロコシ、インゲン、トマトなどを育てて仲間で分け合い、足りない分はスーパーで買います。買い物には自転車で行きますが、私は日本の運転免許を持っているので、会社のミニバイクを使うときもあります。休日には、仲のよい日本人の同僚や実習仲間と遊びに行くこともあります。これまで、同僚の車で海を見に行ったり大きなショッピングモールに行ったりしました。 私の家計簿(1カ月の平均) ※技能実習時代の家計簿 ※100円=21,982 VND(2020年10月6日現在) 手取り給料(平均110,000~130,000円) 手取り給料 平均110,000~130,000円 ※税金、社会保険料、寮費を引いた後の手取り額 ※このうち寮費は5,000円、水道・光熱費8,000円、Wi-Fi800円 支出(合計20,000~25,000円) 食費 20,000~22,000円 ※主に自炊 雑費・交通費 3,000~5,000円 ※服も化粧品もほとんど買わない 差額・貯金(平均90,000円~110,000円) 差額 平均90,000円~110,000円 ※訪日当初はもう少し収入が少なかった。 ※3年間で計約300万円を両親に送金(自分の貯金はゼロ) 外国人従業員用の畑〈2020年〉 ナムディン学院の先輩たちが通う宮崎県の大学を訪問〈2018年〉 外国人サポート 観光バスで従業員旅行〈熊本県で2019年〉 四位農園では、従業員同士の親睦を図るため農園主催の従業員旅行や忘年会などがあり、国籍に関係なく参加します。また、外国人担当の大山さんという年配の男性がおり、親身になって私たちの相談に乗ってくれます。私は仕事の影響で腰痛になったときなどに彼にクリニックに連れて行ってもらいました。また、職場で人間関係がうまくいかない場合も相談に乗り、場合によっては配置転換をしてくれることもあります。 技能実習生が機械を操縦して枝豆を収穫〈四位農園で2020年7月〉 男性の技能実習生は皆、トラクターの運転免許を持っています。トラクターで畑仕事をするためです。農園の近くに自動車教習所があり、彼らはそこに通います。教習所の費用は約230,000円もしますが、農園が負担してくれます。この免許でミニバイクにも乗れます。私は大山さんからテキストをもらって自分で勉強し、ミニバイクだけの免許を取りました。 技能実習から特定技能に 四位農園では2019年12月に実習を修了した1人が最初の特定技能外国人になりました。私も2020年8月に技能実習が終わり、9月から特定技能に変更して引き続き働いています。特定技能では最長5年間働けます。在留資格変更の際、通常はベトナムに2、3週間帰国するのですが、今は新型コロナに伴う特例で帰国せずに変更しました。私の場合、特定技能になっても仕事内容は同じですが、基本給が5%アップしました。また、今後は日本人と同じように働きぶりを評価され、それに応じて役職や給料も変わっていきます。 枝豆畑〈2020年7月〉 四位農園には現在、特定技能が7人、技能実習生が28人います。女性の方がやや多く、国籍別ではミャンマー人5人以外はベトナム人です。この農園では「外国人を日本人と平等に処遇する」という方針があり、特定技能で残るチャンスを技能実習生全員に与えてくれます。今回は同期生6人全員が残留を希望しました。私は借金返済のために節約を続け、宮崎県の外に旅行に行ったこともありませんが、給料が少し増えたので、今後は同僚と同じように大阪や京都にも旅行したいです。また、日本にできるだけ長くいたいので、特定技能修了後のことも考えて今から準備をしていこうと思います。 今回の先輩 Mai Thị Xuân(マイ・ティ・スアン)さん 2015年 5月チュック・ニン B高校卒業〈ナムディン〉 2015年 8月ナムディン日本語日本文化学院入学 2017年 7月ナムディン日本語日本文化学院卒業 2017年 8月訪日→講習〈東京〉 2017年 9月技能実習開始〈宮崎県〉 2020年 9月同じ職場で特定技能開始〈宮崎県〉 〈1997年生まれ、ナムディン省出身〉 今回もナムディン学院出身の先輩が登場。スアンさんは一流大学に合格したが、家庭の事情で入学せず、日本語を2年間勉強してから訪日した。食品加工工場などで3年間働いた後、特定技能に変更し、引き続き日本で働くことになった。彼女の日本語学習の努力や職場での活躍ぶりを紹介する。 日本に行こうと思ったきっかけ 私は化学と数学が得意でハノイ工科大学(Trường Đại học Bách khoa Hà Nội HUST)に合格しましたが、「学費を払えないし、大学を出てもいい仕事に就けるかどうかわからない」と母に言われました。数年前に父が交通事故を起こして多額の損害賠償金を払ったほか、父が事業で使っていた砂利運搬船も3回沈没し、わが家に大きな借金があったからです。 私は進学をあきらめて日本で技能実習をすることにしました。そして、せっかくなら日本語をしっかり学んでから行こうと考え、地元で評判の高いナムディン日本語日本文化学院を選びました。 ナムディン学院で校長が開いた食事会。左端が私。〈2015年〉 ナムディン学院での努力 ナムディン学院の授業は午前だけで、午後は生徒が学校の教室で自習(宿題と復習)をします。私たちは午後1時半~4時半に勉強し、運動や夕食を終えて午後7時~10時にも勉強しました。先生方の教え方と学校の雰囲気のおかげで、勉強すればするほど日本語が楽しくなりました。 私はナムディン学院での2年目、四位農園の会長がナムディン学院を訪れたときに面接を受けて合格し、その7カ月後に訪日しました。送出手数料は学院から借り、実習を始めて3カ月で返しました。JLPTについては、在学中にN3を取得し、訪日の翌年にN2に合格しました。今はN1を目指しています。 ナムディン学院の卒業式〈2017年〉 【編集部からの情報】 ナムディン学院では、生徒が1年半~2年間勉強し、JLPT・N3レベルになってから日本に行きます。授業料は月2,000,000ドンです。遠方の生徒も受け入れます。 生徒に紹介する技能実習先は、学院の教師らが現地を訪問して給料や職場環境などを調べて選んだ職場だけです。送出機関には手続きだけを依頼し、国が決めた手数料しか支払いません。技能実習が終わってから帰国後、もう一度日本に行って留学し、日本で正式に就職するコースも推奨しています。 *ナムディン日本語日本文化学院:namdinhgakko@yahoo.com.vn ナムディン学院の校長(左奥)が四位農園を訪問〈2019年〉 日本人の先輩のサポート役 私の仕事は朝7時半から夕方4時半までです。最初の半年間は畑で働きましたが、女性実習生の大半が途中で農園内の食品加工工場に移ります。ホウレンソウや枝豆など農園でとれた野菜を冷凍加工する工場です。私は冷凍野菜の包装(袋)の印刷などをチェックし、箱に入れます。袋が箱にいっぱいになると箱(重さ9~16㌔)をパレットに移します。工場の仕事が少ないときは、畑も手伝います。 工場での作業。右端が私。〈2020年7月〉 あるベトナム人男性と私が経験も長く日本語もよく話せるので、日本人の先輩たちのサポートをしています。先輩が実習生の配置を決めるのを手伝ったり、通訳をしたり、新しい実習生に仕事を教えたりします。先輩たちと話をすることで日本語の練習になりますし、わからない言葉や間違いを先輩がその場で教えてくれます。先輩たちの車でスーパーに連れて行ってもらったり、一緒にラーメン屋に行ったりすることもあります。 実習生仲間や日本人の先輩と焼き肉屋へ〈2019年〉 日常生活 ここには40人近い外国人がいますが、私はナムディン学院の後輩3人と特に仲良しで、女子寮で一緒におしゃべりをしたり歌を歌ったりします。学院の行事でよくみんなで歌ったKiroroの「未来へ」をここでも歌っています。寮の台所は共用で、大きな食堂があります。普段はばらばらに食べますが、だれかが実習を終えて帰国する場合などは、みんなで食事会をします。そのときにはお酒も飲みます。 女子寮の食堂 実習生用の小さな畑があり、自分たちで食べる野菜を栽培しています。空心菜やゴーヤ、トウモロコシ、インゲン、トマトなどを育てて仲間で分け合い、足りない分はスーパーで買います。買い物には自転車で行きますが、私は日本の運転免許を持っているので、会社のミニバイクを使うときもあります。休日には、仲のよい日本人の同僚や実習仲間と遊びに行くこともあります。これまで、同僚の車で海を見に行ったり大きなショッピングモールに行ったりしました。 農園の仲間(日本人3人、ベトナム人4人)で観光〈宮崎県で2020年6月〉 私の家計簿(1カ月の平均) ※技能実習時代の家計簿 ※100円=21,982 VND(2020年10月6日現在) 手取り給料(平均110,000~130,000円) 手取り給料 平均110,000~130,000円 ※税金、社会保険料、寮費を引いた後の手取り額 ※このうち寮費は5,000円、水道・光熱費8,000円、Wi-Fi800円 支出(合計20,000~25,000円) 食費 20,000~22,000円 ※主に自炊 雑費・交通費 3,000~5,000円 ※服も化粧品もほとんど買わない 差額・貯金(平均90,000円~110,000円) 差額 平均90,000円~110,000円 ※訪日当初はもう少し収入が少なかった。 ※3年間で計約300万円を両親に送金(自分の貯金はゼロ) 外国人従業員用の畑〈2020年〉 ナムディン学院の先輩たちが通う宮崎県の大学を訪問〈2018年〉 外国人サポート 四位農園では、従業員同士の親睦を図るため農園主催の従業員旅行や忘年会などがあり、国籍に関係なく参加します。また、外国人担当の大山さんという年配の男性がおり、親身になって私たちの相談に乗ってくれます。私は仕事の影響で腰痛になったときなどに彼にクリニックに連れて行ってもらいました。また、職場で人間関係がうまくいかない場合も相談に乗り、場合によっては配置転換をしてくれることもあります。 観光バスで従業員旅行〈熊本県で2019年〉 男性の技能実習生は皆、トラクターの運転免許を持っています。トラクターで畑仕事をするためです。農園の近くに自動車教習所があり、彼らはそこに通います。教習所の費用は約230,000円もしますが、農園が負担してくれます。この免許でミニバイクにも乗れます。私は大山さんからテキストをもらって自分で勉強し、ミニバイクだけの免許を取りました。 技能実習生が機械を操縦して枝豆を収穫〈四位農園で2020年7月〉 技能実習から特定技能に 四位農園では2019年12月に実習を修了した1人が最初の特定技能外国人になりました。私も2020年8月に技能実習が終わり、9月から特定技能に変更して引き続き働いています。特定技能では最長5年間働けます。在留資格変更の際、通常はベトナムに2、3週間帰国するのですが、今は新型コロナに伴う特例で帰国せずに変更しました。私の場合、特定技能になっても仕事内容は同じですが、基本給が5%アップしました。また、今後は日本人と同じように働きぶりを評価され、それに応じて役職や給料も変わっていきます。 四位農園には現在、特定技能が7人、技能実習生が28人います。女性の方がやや多く、国籍別ではミャンマー人5人以外はベトナム人です。この農園では「外国人を日本人と平等に処遇する」という方針があり、特定技能で残るチャンスを技能実習生全員に与えてくれます。今回は同期生6人全員が残留を希望しました。私は借金返済のために節約を続け、宮崎県の外に旅行に行ったこともありませんが、給料が少し増えたので、今後は同僚と同じように大阪や京都にも旅行したいです。また、日本にできるだけ長くいたいので、特定技能修了後のことも考えて今から準備をしていこうと思います。 枝豆畑〈2020年7月〉
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困りごと相談簿 file 04:特定技能で突然解雇
彼は飲食店で特定技能外国人として働き始め、わずか10日で、会社から辞めるように言われました。彼は弁護士を通じて「社員としての地位確認」や「未払い賃金の支払い」を会社に請求しました。会社は「本人が自分からやめた」と主張しましたが、弁護士がある反論をし、その反論が裁判所に認められました。 カテゴリー労働・在留資格 【相談者】 ・特定技能外国人 ・20代男性 ・甲信越地方在住 相談の概要と対応 突然の解雇通告 相談者は大きな飲食店で特定技能外国人として仕事を始めましたが、研修を経て正式に勤務を始めて10日で、会社から辞めるように言われました。理由の説明はありませんでした。 弁護士に相談 知人の紹介で弁護士に相談し、弁護士を通じて「社員としての地位確認」と「未払い賃金の支払い」を会社に請求しました。会社は、相談者の方から退職を申し出たと反論し、交渉では解決しなかったので、相談者は地元の裁判所に「労働審判手続」を申し立てました。 労働審判と裁判で勝利 労働審判で相談者側の主張が全面的に認められ、裁判所は社員としての地位確認と74万円の未払い賃金(勤務を始めてから労働審判の決定が確定するまでの賃金)の支払いを命じました。店側は異議を申し立てて訴訟に移りましたが、裁判官の勧告にしたがって和解しました。「和解」には判決と同じ効力があり、未払い賃金の支払いが確定しました。 相談者の依頼先 この相談者の場合、外国人雇用や労働関係の法律に詳しい弁護士に巡り会えたことが幸いでした。 ◎相談先:杉田昌平弁護士(弁護士法人Global HR Strategy) ポイント:退職の合意があったかどうか 飲食店側は「相談者から退職を申し出た」と主張しました。これに対して、相談者の代理人(弁護士)は労働審判手続で次のように反論し、この反論が労働審判委員会に認められました。 【主張】 ・特定技能は勤務先との雇用契約(労働契約)が前提となる在留資格。転職するには、新しい勤務先との雇用契約を結んで在留資格の変更手続をする必要があり、簡単に転職できるわけではない。 ・特定技能外国人を雇用する会社はその外国人の生活支援を行うほか、労働関係の法律を遵守する必要があり、簡単に見つかるわけではない。 ・このような状況から、転職先も見つかっていないのに、勤務を始めて間もなく自分から退職を申し出るはずがない。 ポイント:解雇を行う事由があったかどうか 特定技能1号では日本で最長5年間働けます。相談者は勤務先とまず1年間の雇用契約を結び、期間1年の在留資格を取得して仕事を始めました。1年後に勤務先と雇用契約を更新し、更新契約をもとに入管に在留資格の期間更新を申請する予定でした。 今回の雇用契約の期間は1年間でしたが、労働契約法17条第1項は、このように期間の定めのある雇用契約について、「やむを得ない事由(理由)」がなければ、期間途中で解雇はできないと規定しています。 相談者の代理人は労働審判手続で「解雇の理由を説明されておらず、やむを得ない事由は存在しない」と主張し、認められました。 ポイント:その後の生活 裁判所で和解が成立し、相談者は職場に戻る権利を得ました。しかし、戻っても1年の契約期間終了後に契約を更新してもらえない可能性が高いので、和解成立後、未払い賃金を受け取って退職しました。特定技能では本来はアルバイトをできませんが、新型コロナの特例で、失職した特定技能外国人もアルバイトをできるので、相談者はアルバイトで生活しながら特定技能での新しい勤務先を探すことにしました。 ポイント:労働審判とは イラスト:最高裁HPより 最後に、この相談者が使った「労働審判」という手続きについて説明します。 ・労働審判手続は、解雇や給料の不払いなど労働関係のトラブルを迅速に解決するための手続きです。訴訟とは異なり非公開で行われます。 ・労働審判手続は、労働審判官(裁判官)1名と労働審判員2名(民間の専門家)で構成する労働審判委員会が行います。 ・原則として3回以内で審理を終えることになっています。約7割の事件が申し立てから3カ月以内に終了しています。 ・労働審判委員会はまず話し合いによる解決(調停)を試み、話し合いがまとまらない場合には、両者の主張を踏まえて労働審判という判断を下します。労働審判に不服があれば、異議申し立てを行うことができます。その場合、労働審判は効力を失い、訴訟手続に移行します。
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