体験談(技能)

◎181103-ひまわり
By KOKORO(毎日新聞社+VAIJ主催、在ベトナム日本国大使館など後援)

プラスチック部品を作る工場で技能実習を5年間続けたあと、同じ会社で特定技能外国人になったフーンさん。従業員約90人のうち約3分の1がベトナム人という職場です。フーンさんはベトナム人とも日本人とも仲良く働いており、将来は永住権を取ることも考えています。

今回の先輩

グェン・ティ・ジェム・フーンさん
  • 2009年 高校卒業〈ヴィンロン省〉
  • 2012年 ヴィンロン経済金融大学卒業
  • 2012年 スーパーマーケット勤務
  • 2013年 送出機関で勉強〈ホーチミン〉
  • 2014年 訪日→研修→工場で技能実習〈愛知県〉
  • 2017年 技能実習修了、帰国
  • 2017年 ベトナムの人材会社に勤務
  • 2018年 技能実習生再開(3号)〈愛知県〉
  • 2021年 同じ会社で特定技能に移行

〈1991年生まれ、ヴィンロン省出身〉

ベトナム人の多い職場

私は愛知県小牧市の「三扇化学(さんせん・かがく)」で働く特定技能外国人です。さまざまなプラスチック製部品を作る工場で、機械から出てきた製品をニッパーで軸から切り離したり検品したりするのが私の仕事です。

  • ・仕事は朝8時から
  • ・自宅から自転車で通勤
  • ・従業員約90人のうち32人がベトナム人(特定技能7人、技能実習25人)

私たちの製品は米国やヨーロッパでも使われています。製品は車両部品(ハンドルの部品、ハザードランプのボタンなど)▽プリンターの部品▽洗面台やトイレの部品――などです。

日本に来る前のこと

姉の支援で経済金融大学を卒業〈2012年〉

私の両親はミカンなどを作る農家で、2人で計約100,000,000 VNDの年収しかありません。このため、4つ年上の姉が日本で技能実習をしてお金を貯め、私はそのお金で経済金融大学に行かせてもらいました。

私は大学を出て地元のスーパーで3カ月間働きましたが、月給が4,000,000 VNDしかありませんでした。そこで、姉のように日本で働いて家族を助けたいと思い、自分も技能実習生になることにしました。 先進国である日本に住み、日本の仕事や文化を学びたいという気持ちもありました。

送出機関に払ったお金

送出機関にて〈2014年〉

私は技能実習生になるためにホーチミンの送出機関に登録しました。

  • ・ヴィンロン省の就職センターで3つの送出機関を紹介されました。
  • ・その3つをネット調べ、規模が大きく費用が安い送出機関を選びました。
  • ・送出機関に支払った費用は全部で2,700 USDです。ここに手数料や授業料、ビザ取得費などが含まれていました。
  • ・飛行機代は三扇化学が払ってくれました。
  • ・日本語センターで8カ月勉強しました。

この費用や条件は、私たちの監理団体(組合)である愛知商工連盟協同組合(愛商連)が送出機関に約束させた金額です。愛商連から送出機関を紹介してもらうと、むだなお金を使わずに日本に行けます。

愛知商工連盟協同組合(ベトナム語のFacebookページ)

5年間で両親に送ったお金

日本での給料は残業時間によって毎月変わりましたが、技能実習3年目の手取り給料(税金や社会保険を引いた額)は月120,000円~170,000円でした。

※100,000円=約17,210,000 VND(2022年6月18日現在)

技能実習の計5年でベトナムの両親に送ったお金は約480万円です。今は円安ですが、これを当時のレートでベトナムドンに換算すると、約1,000,000,000 VNDになりました。このお金で果樹園を買ったり、家を建て直したりしました。残りは老後の資金として置いています。

  • ・約200,000,000 VND+両親のお金→果樹園を拡大
  • ・約400,000,000 VND→実家の建て替え

技能実習から特定技能へ

日本に戻った私を歓迎してくれた三扇化学の同僚たち〈2018年〉

私は2017年に帰国し、ホーチミンの送出機関で数カ月働きました。そんなとき、三扇化学からLINEで 「また三扇で働きたいですか?」と連絡があり、私は3号技能実習生として日本に戻ることにしました。

3号とは技能実習の4~5年目のことで、職種によっては2号まで(3年だけ)しかありません。私の技能実習の職種も最初は2号までしかありませんでしたが、そのときの制度改正によって3号もできることになったので、また会社から呼んでもらえたのです。

私は三扇化学が好きですし、ホーチミンのような騒がしい場所よりも小牧市のような落ち着いた町の方が住みやすいです。また、日本は町も空気もきれいです。私は喜んで日本に戻ることにしました。

職場の日本人との交流

左:横山さん(中央)たちと梨園へ、右:社員旅行で琵琶湖へ

一緒に働く日本人の方々ともよく話をします。休日に日本人の先輩や同僚と一緒に遊びに行くこともあります。年2、3回、横山さん(女性)と後藤さん(男性)がベトナム人技能実習生を車で観光地に連れて行ってくれます。2人が車2台で私たちを迎えに来て、全部で10人ぐらいで遊びに行きます。例えば、ブドウ園に行ってブドウを摘んで一緒に食べたりしました。

このほか、会社が主催する食事会や会社が費用を負担する社員旅行もあります。旅行は日帰りのバス旅行で、これまでに琵琶湖(滋賀県)や京都などに行きました。

仲間たちと楽しく生活

会社の仲間はみな仲良しで、休日は一緒に楽しく過ごしています。

買い物
  • ・近くにスーパーがたくさんあります。
  • ・特によく行くのはディスカウント・ストアの「ドンキホーテ」
ベトナム食材店
  • ・ここ数年、ベトナムの食材を売る店がどんどん増えています。私たちの寮の近くにもあります。
食事会
  • ・同僚ベトナム人の誕生日会や歓送迎会、送別会を寮の部屋でやることが多いです。台所にビニルシートを敷いて20人ぐらいで食事会をします。
寮(アパート)
  • ・寝室が3つあるアパートに技能実習生4人で住んでいます。
お出かけ
会社の仲間と月に1、2回、電車で遊びに行きます。
  • ・花のきれいな観光地
  • ・イルミネーションのきれいな観光地
  • ・名古屋の市街地
  • ・ベトナム料理店
  • ・焼肉店や回転寿司(安い寿司店)

私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=約17,210 VND(2022年6月18日現在)

収入: ¥110,000~¥160,000
手取り給与

¥110,000~¥160,000

*税金、社会保険、寮費を引いたあとの金額

*このうち寮費は27,000円(水道・電気・ガス代を含む)

支出: ¥61,500
Wi-Fi(1人分)

¥1,500

食材費

¥30,000

外食費・雑費

¥30,000

差額: ¥50,000~¥100,000

*ほとんど全額を実家に送金

将来の希望

来日前は、日本語センターで8カ月間勉強し、来日後1年は、毎日、日本語で日記を書きました。2年目以降は毎日1時間ぐらい勉強しています。JLPT(日本語能力試験)はN4で、2017年にN3に落ちてからは受けていません。しかし、私は日本語会話が結構できるので、これでよいと思っています。

私は現在、特定技能1号という在留資格です。これは最長5年です。 その後、特定技能2号になると、在留資格を何回も更新でき、将来は永住権を取れる可能性もあります。私の職種では現在は2号がありませんが、将来は制度改正で2号ができると思います。その場合は、できるだけ長くこの会社で働きたいと思っています。

社長インタビュー

児玉社長(左)

三扇化学の児玉康彦社長にインタビューしました。

――従業員の約3分の1がベトナム人ですね?

社長はい。当社は、入社すれば長く働いてくれる人が多いのですが、最近は、工場で働いてくれる若い日本人が少なくなりました。そこで、ベトナム人を受け入れています。

――外国人の中でベトナム人を選ぶ理由は何ですか?

社長他社が中国人とベトナム人を雇っていたので、中国人も検討しました。しかし、ベトナム人には勤勉な人が多いと聞いたので、ベトナム人技能実習生を採用しました。雇ってみると、実際にまじめで素直な人が多く、将来の目標を持って働いている人も多かったので、ベトナム人ばかり採用しています。

――技能実習が終わってから別の会社で特定技能をする人も多いですが、この会社では他社に移らずここで特定技能をする人が多いですね?

社長遠い国から来て心細い思いをしていてはいけないと思い、私はベトナム人従業員になるべく声をかけるようにしています。そのためか、他の日本人社員もベトナム人に親切にしてくれています。

――フーンさんはどんな社員ですか?

社長彼女は働きぶりも素晴らしいですし、後輩ベトナム人たちの面倒もよくみてくれるので、私は大変助かっています。できればずっと当社で働いてほしい人材です。

プラスチック部品を作る工場で技能実習を5年間続けたあと、同じ会社で特定技能外国人になったフーンさん。従業員約90人のうち約3分の1がベトナム人という職場です。フーンさんはベトナム人とも日本人とも仲良く働いており、将来は永住権を取ることも考えています。

今回の先輩

グェン・ティ・ジェム・フーンさん
  • 2009年 高校卒業〈ヴィンロン省〉
  • 2012年 ヴィンロン経済金融大学卒業
  • 2012年 スーパーマーケット勤務
  • 2013年 送出機関で勉強〈ホーチミン〉
  • 2014年 訪日→研修→工場で技能実習〈愛知県〉
  • 2017年 技能実習修了、帰国
  • 2017年 ベトナムの人材会社に勤務
  • 2018年 技能実習生再開(3号)〈愛知県〉
  • 2021年 同じ会社で特定技能に移行

〈1991年生まれ、ヴィンロン省出身〉

ベトナム人の多い職場

私は愛知県小牧市の「三扇化学(さんせん・かがく)」で働く特定技能外国人です。さまざまなプラスチック製部品を作る工場で、機械から出てきた製品をニッパーで軸から切り離したり検品したりするのが私の仕事です。

  • ・仕事は朝8時から
  • ・自宅から自転車で通勤
  • ・従業員約90人のうち32人がベトナム人(特定技能7人、技能実習25人)

私たちの製品は米国やヨーロッパでも使われています。製品は車両部品(ハンドルの部品、ハザードランプのボタンなど)▽プリンターの部品▽洗面台やトイレの部品――などです。

日本に来る前のこと

私の両親はミカンなどを作る農家で、2人で計約100,000,000 VNDの年収しかありません。このため、4つ年上の姉が日本で技能実習をしてお金を貯め、私はそのお金で経済金融大学に行かせてもらいました。

私は大学を出て地元のスーパーで3カ月間働きましたが、月給が4,000,000 VNDしかありませんでした。そこで、姉のように日本で働いて家族を助けたいと思い、自分も技能実習生になることにしました。 先進国である日本に住み、日本の仕事や文化を学びたいという気持ちもありました。

姉の支援で経済金融大学を卒業〈2012年〉

送出機関に払ったお金

私は技能実習生になるためにホーチミンの送出機関に登録しました。

  • ・ヴィンロン省の就職センターで3つの送出機関を紹介されました。
  • ・その3つをネット調べ、規模が大きく費用が安い送出機関を選びました。
  • ・送出機関に支払った費用は全部で2,700 USDです。ここに手数料や授業料、ビザ取得費などが含まれていました。
  • ・飛行機代は三扇化学が払ってくれました。
  • ・日本語センターで8カ月勉強しました。

この費用や条件は、私たちの監理団体(組合)である愛知商工連盟協同組合(愛商連)が送出機関に約束させた金額です。愛商連から送出機関を紹介してもらうと、むだなお金を使わずに日本に行けます。

愛知商工連盟協同組合(ベトナム語のFacebookページ)

送出機関にて〈2014年〉

5年間で両親に送ったお金

日本での給料は残業時間によって毎月変わりましたが、技能実習3年目の手取り給料(税金や社会保険を引いた額)は月120,000円~170,000円でした。

※100,000円=約17,210,000 VND(2022年6月18日現在)

技能実習の計5年でベトナムの両親に送ったお金は約480万円です。今は円安ですが、これを当時のレートでベトナムドンに換算すると、約1,000,000,000 VNDになりました。このお金で果樹園を買ったり、家を建て直したりしました。残りは老後の資金として置いています。

  • ・約200,000,000 VND+両親のお金→果樹園を拡大
  • ・約400,000,000 VND→実家の建て替え

技能実習から特定技能へ

私は2017年に帰国し、ホーチミンの送出機関で数カ月働きました。そんなとき、三扇化学からLINEで 「また三扇で働きたいですか?」と連絡があり、私は3号技能実習生として日本に戻ることにしました。

3号とは技能実習の4~5年目のことで、職種によっては2号まで(3年だけ)しかありません。私の技能実習の職種も最初は2号までしかありませんでしたが、そのときの制度改正によって3号もできることになったので、また会社から呼んでもらえたのです。

私は三扇化学が好きですし、ホーチミンのような騒がしい場所よりも小牧市のような落ち着いた町の方が住みやすいです。また、日本は町も空気もきれいです。私は喜んで日本に戻ることにしました。

日本に戻った私を歓迎してくれた三扇化学の同僚たち〈2018年〉

職場の日本人との交流

一緒に働く日本人の方々ともよく話をします。休日に日本人の先輩や同僚と一緒に遊びに行くこともあります。年2、3回、横山さん(女性)と後藤さん(男性)がベトナム人技能実習生を車で観光地に連れて行ってくれます。2人が車2台で私たちを迎えに来て、全部で10人ぐらいで遊びに行きます。例えば、ブドウ園に行ってブドウを摘んで一緒に食べたりしました。

このほか、会社が主催する食事会や会社が費用を負担する社員旅行もあります。旅行は日帰りのバス旅行で、これまでに琵琶湖(滋賀県)や京都などに行きました。

左:横山さん(中央)たちと梨園へ、右:社員旅行で琵琶湖へ

仲間たちと楽しく生活

会社の仲間はみな仲良しで、休日は一緒に楽しく過ごしています。

買い物
  • ・近くにスーパーがたくさんあります。
  • ・特によく行くのはディスカウント・ストアの「ドンキホーテ」
ベトナム食材店
  • ・ここ数年、ベトナムの食材を売る店がどんどん増えています。私たちの寮の近くにもあります。
食事会
  • ・同僚ベトナム人の誕生日会や歓送迎会、送別会を寮の部屋でやることが多いです。台所にビニルシートを敷いて20人ぐらいで食事会をします。
寮(アパート)
  • ・寝室が3つあるアパートに技能実習生4人で住んでいます。
お出かけ
会社の仲間と月に1、2回、電車で遊びに行きます。
  • ・花のきれいな観光地
  • ・イルミネーションのきれいな観光地
  • ・名古屋の市街地
  • ・ベトナム料理店
  • ・焼肉店や回転寿司(安い寿司店)

私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=約17,210 VND(2022年6月18日現在)

収入: ¥110,000~¥160,000
手取り給与

¥110,000~¥160,000

*税金、社会保険、寮費を引いたあとの金額

*このうち寮費は27,000円(水道・電気・ガス代を含む)

支出: ¥61,500
Wi-Fi(1人分)

¥1,500

食材費

¥30,000

外食費・雑費

¥30,000

差額: ¥50,000~¥100,000

*ほとんど全額を実家に送金

将来の希望

来日前は、日本語センターで8カ月間勉強し、来日後1年は、毎日、日本語で日記を書きました。2年目以降は毎日1時間ぐらい勉強しています。JLPT(日本語能力試験)はN4で、2017年にN3に落ちてからは受けていません。しかし、私は日本語会話が結構できるので、これでよいと思っています。

私は現在、特定技能1号という在留資格です。これは最長5年です。 その後、特定技能2号になると、在留資格を何回も更新でき、将来は永住権を取れる可能性もあります。私の職種では現在は2号がありませんが、将来は制度改正で2号ができると思います。その場合は、できるだけ長くこの会社で働きたいと思っています。

社長インタビュー

三扇化学の児玉康彦社長にインタビューしました。

――従業員の約3分の1がベトナム人ですね?

社長はい。当社は、入社すれば長く働いてくれる人が多いのですが、最近は、工場で働いてくれる若い日本人が少なくなりました。そこで、ベトナム人を受け入れています。

――外国人の中でベトナム人を選ぶ理由は何ですか?

社長他社が中国人とベトナム人を雇っていたので、中国人も検討しました。しかし、ベトナム人には勤勉な人が多いと聞いたので、ベトナム人技能実習生を採用しました。雇ってみると、実際にまじめで素直な人が多く、将来の目標を持って働いている人も多かったので、ベトナム人ばかり採用しています。

――技能実習が終わってから別の会社で特定技能をする人も多いですが、この会社では他社に移らずここで特定技能をする人が多いですね?

社長遠い国から来て心細い思いをしていてはいけないと思い、私はベトナム人従業員になるべく声をかけるようにしています。そのためか、他の日本人社員もベトナム人に親切にしてくれています。

――フーンさんはどんな社員ですか?

社長彼女は働きぶりも素晴らしいですし、後輩ベトナム人たちの面倒もよくみてくれるので、私は大変助かっています。できればずっと当社で働いてほしい人材です。