文化
ベトナムの常識・日本の非常識_31:日本人は朝は外食をしません
日本人には、朝食にフォーを食べに行くような習慣はありません。朝食は自宅で食べるのです。このため、日本の多くの飲食店の開店時間は午前11時ごろで、夕方から営業する店もたくさんあります。早朝からサービスを提供している店はほとんどありません。日本の飲食店の朝の様子と例外的に朝でも開いている店について紹介します。
朝から空いている飲食店は少ない
私の家族の話です。来日して1カ月も経たないころ、自宅から50 kmほど離れた観光地に行きました。現地で長く過ごすため、家族全員が午前6時に起床し、レストランで朝食を食べて電車に乗ろうと考えました。
しかし、7時に家を出ると、通りにはほとんど人がいません。ウォーキングやランニングしている人もまばらで、レストランもみな閉まっていました。カレー店やラーメン店に行きましたが、開店時間は午前10時か11時でした。
結局、私たちはコンビニでパンを買って食べました。日本人の友人に聞いてみると、日本人はベトナム人のように早朝から外食をする習慣がないことが分かりました。
ベトナムでは、午前4~5時ごろから人が運動するために通りにあふれ、レストランは午前3時、4時から水を沸騰させており、日の出と同時に来客に食事を提供できるように準備します。そして、午前5時ごろからバイクタクシーや一般のタクシーに乗ることができます。
日本人は仕事が忙しいうえ、電車・バスでの通勤に時間がかかることも多いため、必然的に帰宅が遅くなります。私の娘のクラスの友人によると、両親は午後9~10時に帰宅し、それから夕食を食べて午前0時に就寝しているそうです。
このような生活パターンも手伝ってか、早朝に外出して食事をする日本人はあまりいません。したがって、日本の飲食店の多くは朝は閉まっており、ランチタイムの直前に開店します。
ただし、日本でも朝食を提供する飲食店が少しはあります。参考に例を紹介しておきます。
◆朝食を提供する日本の飲食店の例
カフェ |
カフェの多くは「モーニング・セット」を提供しています。セットの内容は、トーストやホットドッグ、サンドイッチなどの軽食とドリンクです。 |
一部のファストフード店 |
牛丼、そば・うどん、ハンバーガーショップなど |
ファミリーレストラン |
ファミリーレストランにも、朝から営業している店が多くあります。 |
大きなホテルのレストラン |
小さなホテルのレストランの多くは宿泊客専用ですが、大きなホテルのレストランは朝から一般に開放していることが多いです。 |
日本人とSNSで交流することに期待しないでください
Facebookでコメントしたりストーリーのコメントに返信したり、その他のアプリで一晩中チャットしたりすることは、ソーシャルネットワークサービス(SNS)が爆発的に普及してから多くのベトナム人の習慣になっています。
ベトナム人はさまざまな目的でSNSを利用しています。家族の話や仕事のこと、将来のことなどを友人と共有し、「投稿」も多数の人々に伝わります。
しかし、日本で日本人の友人ができても、ベトナム人同士のようにSNSで深く交流することはあまり期待できません。次のように、SNSの使い方に違いがあるからです。
▶︎日本人、特に日本人の若者はベトナム人ほどFacebookを使いません。彼らがよく使うのはTwitterやInstagram、そしてLINEです。
▶︎日本人がSNSに投稿するのは、主に不特定多数の人々と情報を共有したい場合です。例えば、「今年の夏は京都に行きます」とか「先週末はカヤックを体験しました」など、自分のことを広く「発信」するために使います。したがって、投稿にだれが返信しても構いません。
私には日本人の友人がいます。通常生活ではとても親しいのですが、彼女がスキーに行くことについて投稿したSNSに私がコメントを入れたのに、彼女からリアクションがありませんでした。
私は彼女に会ったとき、「Facebookに送った私のコメントを読みましたか?」と尋ねました。すると、彼女は「読みましたよ」と平然と答えました。「それがどうかしましたか?」というニュアンスでした。
日本人には、このように自分のSNS投稿へのコメントにリアクションしない人も少なくないようです。もっとも、他の日本人によると、コメントに返信するかしないかは、日本人の間でも個人差があるそうです。また、自分の投稿に対してコメントが少なくても、「いいね!」さえ多ければうれしい人も多いとのことです。日本人の友人ができたら、SNSでその人からリアクションがなくても、がっかりしないでくださいね。
日本のカフェでは「静かに」「きれいに」
「コーヒーショップ(カフェ)に行く」というのは、ベトナム人にとってとても楽しいことで人気があります。友人に会う▽独りでリラックスする▽写真を撮る▽勉強する▽仕事をする――など、さまざまな目的でコーヒーショップに行きます。その中でベトナムがカフェに行く一番の目的は「友人とおしゃべりする」ことです。
ベトナムでは、親子がカフェに入る姿をよく見ます。子ども同士や親同士が交流し、子どもたちは仲良くなると店内で一緒に遊んだり自由に走ったりして、かなり騒がしいこともあります。
日本人もカフェに行きます。その目的は通常、仕事相手や友人と会ったり1人で仕事をしたりすることです。ベトナムのカフェと違うのは、日本のカフェに子どもはあまりいません。仮にいても、子どもが騒いだり走り回ったりすることはありません。
日本のママが子連れでコーヒーを飲むときは、カフェよりもハンバーガーショップやファミリーレストランなどを選びます。そこなら、子どもが少し騒いでも、周りから嫌な目で見られることが少ないからです。
先日、ハノイのハムギ通りにあるハイランズカフェに行ったときのことです。2~3歳の幼児が私のテーブルに来て、私のカフェラテのグラスに手をかけました。私はパソコンを開いて仕事をしていたので、危ないと思い、急いで両親を探しました。
母親はスマートフォンに夢中で子どもの行動にまったく気づいていませんでしたが、私の視線と子どもの姿に気付くと、こちらに来て子どもを連れていきました。そのとき、ひと言の謝罪もありませんでした。
ベトナム人は「子どものことだから」と大目に見るので、お互いにこのようなできごとをまったく気にしません。しかし、もしこれが日本だったら、母親はおそらく謝っていたことでしょう。
ところで、日本の多くのカフェでは、「個人の良心」をよく目にします。何かというと、彼らは自分たちが使っている机をペーパーでふいたり、砂糖やミルクが入っていたパックをゴミ箱に捨てに行ったりするのです。特にセルフサービスのカフェでは、中学生でさえテーブルをきれいに片付けてから帰ります。
もちろん、カフェの店員もしっかり働いています。各テーブルを回り、散らかっていたらきちんと片付けます。
日本のカフェがいつもきれいなのは、このように日本人が自然にとる行動による結果なのです。日本のカフェでは「静かに」「きれいに」がルールです。
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ハノイで待ちに待った都市鉄道が開通しました。ベトナム人が鉄道に不慣れなこともあり、開業当初に混乱が起きましたが、今後の改善に向けて、日本の乗車マナーも参考にしていきたいですね。鉄道が非常に発達している日本の乗車マナーを紹介します。〈※トップの写真はクオック・フォン撮影〉 路線図〈出典:Hanoimetro.net〉 ハノイ中心部で2021年11月6日、ベトナム初の都市鉄道「カットリン―ハドン線」が開業しました。道路の渋滞緩和を目的として2011年に着工し、当初目標の2015年開通からは大幅に遅れましたが、総工費約18兆ドン(約900億円)をかけて完成しました。高架式で、初乗り運賃は8,000ドン(約40円)。カットリン(Cat Linh)駅とハドン(Ha Dong)駅を結ぶ総延長13.1 kmで、駅は12カ所です。 開業当初の混乱や課題 〈撮影:クオック・タイ〉 ベトナムの都市間を走る古い鉄道に比べ洗練されたデザインで機能もアップグレードされたカットリン―ハドン都市鉄道は、首都ハノイの風景にモダンな風を吹き込みました。映画やインターネットでしか現代の公共交通機関を見たことのなかったIT世代の若者たちにとって、「首都の真ん中で電車に乗る」という夢がついに実現したのです。 多くの若者、特に都市鉄道沿線の学校に通う学生たちは、日本や韓国の映画に出てくるような「電車通学」を自分が体験することに期待をふくらませ、コーヒーを飲みながら会話がはずんでいます。 初乗りを楽しむ家族〈撮影:カオ・ミン・ゴック〉 ただ、多くの住民にとって電車に乗るのは初体験なので、適切な乗り方を身に付けるまでには少し時間がかかりそうです。ハノイの運輸当局によると、この鉄道は大盛況で、開業から3日間で約8万人が乗車しました。そして、混雑に伴ってさまざまなトラブルが起こりました。 「撮影の邪魔(じゃま)をした」とか「ぶつかった」などという理由であちこちでけんかや乱闘が起きました。また、車内から故郷の両親にビデオ電話をかけ大音量で会話する▽人混みに慣れない子どもが泣き出やまない――など、車内はかなりにぎやかだったようです。 駐車場・駐輪場でも問題発生 カットリン駅1階の駐輪場 カットリン駅に設けられた駐車場・駐輪場に関しても問題が起こりました。正規料金は乗用車25,000 VND、オートバイ5,000 VND(約25円)ですが、料金徴収係が勝手に乗用車50,000 VND、オートバイ10,000 VNDを請求する問題も発生しました。また、他の駅にはまだ駐車場・駐輪場がないので、運輸当局は各地区の人民委員会などに働きかけています。 乗車マナーを日本に学ぼう 東京都内の駅のホーム ベトナム人にとって都市鉄道は新鮮ですが、日本では鉄道が約150年、地下鉄も約100年の歴史があります。主要都市には鉄道網がクモの巣のように張り巡らされています。東京では地下鉄だけで9路線・180駅もあり、多くの人は最寄り駅まで歩いて行きます。したがって、東京の住民の多くは乗用車やオートバイを持たず、電車やバスだけで生活しています。 このため、日本では、電車内では電話通話をしない▽電車内でものを食べない▽電車内にゴミを捨てない▽電車を待つときは整列する――など、乗車マナーが発達しています。それは飛行機やバスでも同じです。ハノイの都市鉄道を使う際にも、こうした日本のマナーは参考になります。それでは、以下に日本の乗車マナーを見ていきましょう。 電車の待ち方と乗り方 列を作って電車を待つ人たち〈JR大阪駅〉 電車の到着を待つ間、日本人はきちんと整列します。2列か4列に並び、列車が到着するとドアの両わきに立って降りる人が通るスペースを作ります。朝夕の通勤・通学ラッシュ時間に主要駅は非常に混雑しますが、乗車・降車をめぐるけんかはありません。 残念ながら、ハノイの都市鉄道の開業直後にはけんかが起きました。皆が乗り慣れていないので仕方がないという側面もありますが、日本の乗車マナーを参考に改善していきたいですね。ちなみに、新宿駅(東京都)には五つの鉄道会社が乗り入れ、1日の利用者数は5社合計で350万人を超えます。それでも混乱が起きないのですから、日本の乗車マナーの発達ぶりが分かります。 バックパックは体の前に 日本の電車内では、多くの人がバックパックを体の前にかけます 日本人は整列して電車の到着を待つことに加え、車内が混雑しているときには、大きなバックパックはたいてい胸にかけます。そうすると、誤って他の乗客にバックパックをぶつけたり、背後を通る人の邪魔になったりすることを防げるからです。 車いすエリアや優先席 日本の電車内には車いすやベビーカーを利用する人のための専用エリアが設けられています。乗り降りも駅員が手伝ってスムーズに行われます。障がい者や妊婦、お年寄りなどを優先する席もあり、通常の席とは異なる色の布が張られています。その席には「優先席」と書かれており、車内がよほどすいていない限り一般の人はあまり座りません。混雑時に優先席と気づかずに座ってしまう若いベトナム人をときどき見かけますが、必要な人に席をゆずるのがルールになっていますので、気をつけましょうね。
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