生活・ビザ

日本の保育園に入るには

00
2024年03月13日

私は日本で留学して就職し、日本に13年間住んでいます。その間に結婚して2児を出産し、1人が保育園を経て幼稚園に在籍しています。もう1人は1歳で、これから保育園に入る予定です。日本の保育園に入るのは難しいと言われています。この記事では、日本の保育園に入るための準備や申し込みのコツなどについて、私の経験をまじえてお伝えします。(2022年に最初の執筆。その後、制度に関する情報を更新。)

1.日本とベトナムの保育園の5つの違い

日本の保育園

最初に日本とベトナムの保育園(保育所)の違いを簡単に説明します。

◆ベトナムの保育園・幼稚園

ベトナムの保育園や幼稚園には次のようなものがあります。そして、保育園の中には公立と私立があります。

保育園:Nhà trẻ
0歳から3歳までが入園できる。
幼稚園:Mẫu giáo
3歳から小学校就学前までが入園できる。
日本の「こども園」のような施設:Mầm non
幼稚園と保育園の両方の特徴をそなえている。

◆日本の保育園

認可外保育施設もさまざまなニーズに対応

日本の保育園(保育所)には公立も私立もありますが、それよりも認可保育園認可外保育施設(無認可保育園など)の二つに大別されます。認可保育園とは、国が定めた基準(施設の広さ、保育士の数、調理室の有無など)を満たし、都道府県知事に認可された保育施設です。

認可外保育施設も保護者のさまざまなニーズに対応していますが、保育料は認可保育園より高くなる場合が多いです。

◆日本の保育園とベトナムの保育園の違い

日本の保育園とベトナムの保育園の大きな違いが5つあります。

① 入園資格(ポイント制)
② 申し込み先
③ 入園時期と応募時期
④ 保育料
⑤ 学年分け

違い①:入園資格(ポイント制)

日本の保育園

日本とベトナムの保育園の最大の違いは入園資格(条件)です。

ベトナムの公立保育園はその地域の住民ならだれでも入園することができます。しかし、日本の認可保育園には、就労や病気、介護などの理由で子どもの面倒をみられない保護者(保育が必要な保護者)しか申し込むことができません。

これについて地域ごとに行政が定める選考基準があり、応募者の状況(保育の必要性)をその基準に基づいて数値化(選考指数)します。選考指数は一般に「ポイント」と呼ばれます。簡単に言うと、ポイントが高いほど保育の必要性が高いと判断され、優先的に入園できます。

ポイントを決める要素には、例えば次のようなものがあります。

・両親の勤務日数や労働時間
・祖父母が近くに住んでいるかどうか
・家庭の所得(世帯所得額)
・ひとり親家庭、父母のどちらかが単身赴任の家庭
・きょうだいがその保育園に通っている

違い②:申し込み先

入園の申込先についても違いがあります。

ベトナムの保育園には、公立でも私立でも保育園と直接やり取りをして入園しますが、日本の認可保育園に入るには、必ず市区町村の役所(市役所など)を通さなければなりません。ただし、認可外保育施設の場合は、保育施設に直接申し込みます。

・ベトナムでは、園と直接やり取りをするため、入りたい保育園に空きがあれば入れます。

・日本の認可保育園は、役所がポイント制で入園の可否を決めるので、保護者は保育園を自由に決めることはできません。

違い③:入園時期と応募時期

選考結果が届くのは1~2月。落ちた場合は二次募集に応募する。

3つ目の違いは入園の時期です。ベトナムの保育園では毎年8月に入園しますが、日本では4月に入園します。

日本では、保育園の申し込みの締め切りは入園の5、6カ月も前なので、早めに準備する必要があります。申込書の提出方法も、窓口で渡せる役所もあれば、郵送しか受け付けない役所もあります。日本の保育園では、締め切りはとても重要なので、注意してください。

◆保育園の申し込みから入園までの流れ(例)

・市役所などに申し込み:10〜12月
・選考:1〜2月
・選考結果の通知:1~2月
・面接・健康診断:2〜3月
・入園:4月

違い④:保育料

ベトナムの公立保育園の保育料は家庭の事情を問わず定額ですが、私立保育園では園によって保育料が全然違います。

日本の保育園では、0~2歳の子どもの保育料の自己負担額は家庭の所得によって変わります。また、3~5歳児の保育料(自己負担額)は、認可保育園ではゼロ(無料)ですが、認可外保育施設では月37,000円までが給付金(補助金)によって無償になります。

違い⑤:学年分け

私の長男は1歳児クラスからスタート(写真は2歳時)

ベトナムの公立保育園の場合は、生まれた年(1~12月)でクラスが決まりますが、日本では少し違います。日本の学校も幼稚園・保育園も事業年度が毎年4月~翌年3月です。このため、学年(クラス)は生まれた年度によって分けられます。

具体的には、その年の4月1日時点での満年齢によって学年やクラスが分かれます。そして、毎年4月に1年上のクラスに進級します。

4月1日での満年齢 所属するクラス
5歳 年長(5歳児)クラス
4歳 年中(4歳児)クラス
3歳 年少(3歳児)クラス
2歳 2歳児クラス
1歳 1歳児クラス
0歳 0歳児クラス

2.保育園と幼稚園の違い

3歳未満をあずかるのは保育園だけ

日本の保育園と幼稚園にも違いがたくさんあります。

対象年齢
保育園には0歳から6歳(就学前)まで通えますが、幼稚園は満3歳からしか通えません。
長期休暇
幼稚園は夏休みや冬休みがあり、その間は子どもをあずけることができませんが、保育園では一年中あずかってもらえます。
子どもをあずかる時間
幼稚園では9時~14時のケースが多く、延長があっても8時~17時ですが、保育園では7時~19時でも可能なケースが多いです。

私たちの家族の場合は夫婦共働きで、私たちの親も近くにいないため、長男は保育園に入れるしかありませんでした。しかし、その後、次男の妊娠・出産にともなって産休と育休をとり、家も引っ越したので、長男を幼稚園に行かせることにしました。

3.私の保育園選び

私の長男(1歳のとき)

私が長男(2016年生まれ)の保育園入園に向けて本格的に準備を始めたのは2016年の夏ごろでした。暑い中で0歳の息子を抱っこして区役所に行ったり保育園を見学したり書類をそろえたりしました。

保育園を探すにあたって、私は次の4点を重視しました。

① 認可保育園(国の基準を満たしている方が安心だと思いました)
② 家から近い(通勤時間が長いため、送り迎えの時間を最短にしたい)
③ 先生がやさしそうで、ベテランの先生もいる
④ 十分な広さの園庭がある(子どもがのびのび動けるように)

私はまず近所にどんな保育園があるのかを把握するため、区役所のホームページから保育園マップと募集人数のリストをダウンロードしました。これらをよくチェックして希望に合った7つの保育園を選び、見学スケジュールを立てました。

4.申し込みは締切厳守!

まずは、HPや地元の役所で情報収集!

日本の保育園に入るのは簡単ではありません。申込書には、行きたい保育園の名前を希望順に複数書きますが、第1希望に受かる確率は低いですし、すべて受からないなんてことも珍しくありません。そのため入念な準備が欠かせません。

私はまず区役所に行って入園相談係で申し込みの締め切り日やその他の注意事項を確認し、申込用紙をもらいました。締め切り日はホームページや電話でも確認できます。

私は最初のトライでは不合格!

長男は2016年(4月以降)に生まれました。私はこの子を2017年4月に保育園に入れるために2016年11月に入園の申込書を提出しましたが、選考に受かりませんでした。2017年度に途中入園の申請も提出しましたが、空きがないとの理由でまた入れませんでした。

そこで、2017年11月に3度目の申請をしてようやく合格し、長男は2018年4月に保育園に入ることができました。ベトナムなら保育園に入るのがそれほど難しいというイメージがないので、日本で苦労してとても驚き、疲れました。

ところで、申し込みの締め切りは厳守なので、特に注意が必要です! 私のベトナム人の友人は事情があって1日遅れて申込書を出しに行きましたが、受け取ってもらえませんでした。たとえ入園資格があっても、締め切りに遅れると入園できませんので、皆さんも気を付けてください。

5.早い時期に見学

保育園を見学!

保育園は子どもにとって初めての集団生活の場で、最長5年間も過ごす場所です。また、申込書には保育園の名前を第1希望から第5希望まで記入する欄がありますが、その順番を決めるためにも、私はたくさんの保育園を見学しました。

私は各保育園に電話して予約し、2週間で7園を見学しました。すると、HPだけでは分からなかったことがたくさん分かりました。

例えば、地図では近そうに見えても、実際に行ってみたら、坂や信号が多く、通園に時間がかかる保育園がありました。また、家から遠いのであまり重視していなかった保育園でも、見学してみると、建物が新築で先生の対応も良かったというケースや、逆に、家からは近いものの、施設が古く園庭もないケースがありました。

見学して初めて分かることも多い

好みの問題もあります。私から見れば緑が多くていい保育園だと思っても、日本人の友人は「木が多くて虫がいそうだから嫌だ」と言っていました。

このようなことがあるので、自分の基準を作り、自分の目で確かめるのがベストですよね。時間的に余裕のある保護者の方はぜひ見学に行ってみてください。

6.申し込み書類の準備

申し込み書類は地域によって少し違いますが、東京都荒川区の場合は以下の書類が必要でした。

➀ 入園申込書 
② 給付金(補助金)の申請書
③ 重要事項確認書・同意書
④ 子どもの健康状況に関する申告書
⑤ 勤務証明書(就労証明書) ※夫婦2人分
⑥ 直近1年の課税証明書 ※夫婦2人分

私は⑤は会社から郵送してもらい、⑥は区役所でもらいました。

7.コツは自分のポイントを知ること

役所のHPで選考基準をチェック

子どもを保育園に入れる準備のことを日本では「保活(ほかつ)」と呼びます。保活のコツは自分のポイント(入園の選考指数)を知ることです。私は自分のポイントを知るために次のようなことをしました。

◆ポイントをこうやって調べた

・区役所のホームページで選考基準を調べ、自分のポイントを計算しました。分かりにくい部分は、区役所の入園相談係に電話で聞きました。

・保育園を見学したときに、こっそり合格ラインを聞き、自分のポイントで入園できるかどうかを調べました。ただし、保育園によっては教えてもらえない場合もあります。

◆申込書の書き方

申込書には、希望する保育園の名前を書く欄が5つしかありませんでしたが、私は長男をどうしてもどこかの保育園に入れたかったので、通えるすべての保育園の名前を欄外に書きました。

さらに、「私が仕事に復帰するためのラストチャンスです。記入した保育園ならどこでも大丈夫なので、どこかに入れてください」というお願いも書きました。単に「入れてください」とお願いするよりも、「育休を延長できない」「祖父母が病気で、保育を頼めない」など具体的な事情を書く方が参考にされる可能性があるそうです。

ちなみに、長男は第1希望の保育園に入園することができました。

8.まとめ

長男と私

この記事では、日本とベトナムの保育園の違いや、幼稚園と保育園の違いなどを紹介し、「保活」のポイントを私の経験をまじえて書きました。

冗談半分かもしれませんが、「日本の保育園に入園するのは大学に入るのと同じぐらい難しい」と言われています。このため、保育園の競争率が低い地域に引っ越す家族もいるぐらいです。まして、私たちのような外国人は言葉の壁もあるので、保活はさらに大変ですよね。そんなベトナム人の保護者の皆さんが保育園のことを調べる際に少しでも参考になればと思って書きました。

育児や保活は大変ですが、後ですべてが良い思い出になると信じ、一緒に頑張りましょう!

リポーター

グェン・トゥイ・ニュン

1986年生まれ、ハノイ市出身。2004~09年:ハノイ国家大学東洋学部(途中1年間、東京大学に交換留学)。2009~11年:文科省奨学金で立教大学観光学部。2011年:日本の産業機械メーカーに就職。2012結婚、16年長男出産、21年次男出産。共働きで育児に取り組む。