文化

目上の人との食事会でのマナー

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2023年01月10日

日本に住むベトナム人の皆さんは学校の先生や先輩、職場の上司など、目上の日本人と一緒に食事に行く機会もたまにあると思います。このように上下関係のある人たちが一緒に食事に行く場合、いくつかの暗黙のルールがあります。その中の重要ポイントを押さえておかないと、相手にがっかりされてしまうこともあります。実際の食事の席ではだれも教えてくれないことが多いので、この記事で日本の食事会でのマナーについて紹介します。

奥に座らない

ベトナム人と交流の多い日本人に聞くと、食事会で日本人の多くの人が心がけているのにベトナム人の多くが気にしていないのは座る位置だそうです。日本では、基本的に「奥」に目上の人やお客さんに座っていただきます。奥の席を「上座(かみざ)」と言います。

店にテーブルがたくさんあって「上座」がどちらかわかりにくい場合は、店の入口から遠い方が「上座」だと思ってください。上の図では個室の入口から遠い①が一番の上座で、②が2番目の上座です。逆に、出入口に近い③④を「下座(しもざ)」と言い、目下の人が座ります。③と④の間では、④が一番下の席です。

例えば、先生や先輩、同級生と4人で食事に行く場合、先生が①、先輩が②、同級生と自分は③④の席に座ります。

床の間のある和室の場合

個室で床の間(かけ軸などが飾られているスペース)がある場合は、入口の位置にかかわらず床の間の前が「上座」になります。上の図では、①が一番の上座で②が2番目の上座です。もし床の間がなければ、この部屋の場合、③が一番の上座、④が2番目の上座になります。

例えば、お客さん、上司、先輩、自分の4人で食事に行く場合、お客さんが①、上司が②、先輩が③、自分が④という席順になります。

円卓の場合

円卓の場合は少し複雑です。入口から最も遠い席が1番の「上座」で、それ以外は番号の順番になります。

テーブルが多い場合

個室での席順は上記の通りですが、広い部屋でテーブルが多い場合は、どこが上座か判断に悩むことと思います。そこで、大まかな基準を図にまとめました。広い部屋では、「入口から遠い」ことや「壁側」が上座の基準です。

目上の人に上座を勧める

目上の人と一緒に外食をする際、個室であれば、なるべく目上の人に先に入ってもらいます。自分が最後に入り、相手が上座に座るのを確認します。しかし、こちらに気をつかって自分が下座に座ろうとする人も多いので、お客様が下座に座ろうとしたら、上座に座るように急いでお願いしてください。これが日本の食事会での一般的なマナーです。

相手がどうしても下座に座ると言う場合は、例外的に下座に座っていただきますが、そのようなケースはなるべく避けましょう。店内で待ち合わせる場合は、先に店に着いて部屋に入り、下座に座って相手を待つとよいでしょう。

取りばしを使う

大皿料理は、共用のはし(取りばし)で自分の小皿に取り分ける

多くの国では、だれかと食事して料理をシェアする場合、それぞれが自分のはしで食べ物を取ります。しかし、日本では例外があります。

日本人は食事をするとき、自分のはし以外に「取りばし」をよく使います。シェアする料理については、取りばし(みんなで使うはし)で大皿から自分の小皿に取り分け、そのはしを元に戻してから、自分のはしで食べます。外食の際、取りばしがない場合、店員さんにお願いして持ってきてもらいましょう。

そして、目上の人が取りばしで自分の小皿に料理を取り分けてから、自分もその料理を取るようにしましょう。目上の人の分をこちらが代わりに取り分けると、さらにベターです。

お酒のつぎ方

お店でびんビールや日本酒を飲む場合、コップやおちょこ(さかずき)に自分で注ぐ必要があります。その場合のマナーを紹介します。

目上の人に注ぐ場合

少なくとも1杯目は目下の者から目上の人にビールやお酒をつぐように心がけましょう。その後も、相手のコップやおちょこが空(から)になっていたら、お酒を注ぐようにします。相手が「もういいです」とか「後は自分でやります」と言って断った場合はそこでやめます。

・ビールの場合は、びんのラベルが上になるように右手でびんを持って、左手を添えます。左手は軽く添える程度でいいです。

・日本酒のとっくりなどからおちょこに注ぐ場合もとっくりを両手で持ちます。

目上の人から注いでもらう場合

片手でグラスやおちょこを持ち、もう片方の手(指先)を底に軽く添えて両手で持ちます。和室の場合は正座してグラスやおちょこを持つ人もいます。そして、注いでもらう前と後に「ありがとうございます」とお礼を言います。テーブルにグラスを置いたまま片手を添えて注いでもらうのは失礼なことなので、気をつけましょう。

「いただきます」「ごちそうさまでした」

食べる前に「いただきます」、食べた後に「ごちそうさまでした」と言います。これは言わずと知れた日本の食事の始まりと終わりのあいさつですが、目上の人(上司や先輩など)がお金を多く支払ってくれる場合は、特に大事です。

また、目上の人が食べ始めてから自分も食べるようにしましょう。

会計後にも「ごちそうさまでした」

食事が終わったときに「ごちそうさまでした」と言いますが、会計の際やお店を出た直後に、費用を多く負担してくれた人にもう一度「ごちそうさまでした」と言いましょう。

上司・目上の人に言う場合、「おごってもらったので、ありがとうございました」という意味を表します。

お店の人に「ごちそうさまでした」と言う場合、「料理がおいしかった」「居心地がよかった」「また来店したい」などの感謝の意味を表します。

「ごちそうさまでした」は感謝の気持ちを表す言葉なので、忘れないでくださいね。

まとめ

今回は「上座」と「下座」など飲食店での席順を中心に日本の食事会でのマナーについて紹介しました。また、取りばしを使う習慣やお酒のつぎ方なども紹介しました。このようなマナーを守ることで上下の人間関係が円滑になりますので、この記事で得た知識を実際の食事会でぜひ活用してください。

また、「いただきます」や「ごちそうさまでした」を言うのも忘れないでください。

日本の文化に完全に慣れるのは難しいですが、知ってさえいれば簡単に守れることも多いので、お互いの良好な関係を深めるために、少しずつ実践していきましょう。