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知らないうちにあなたが犯罪者に―「簡単にお金がもらえる」6つの誘いに要注意!

hanzai-katan- (1)
2023年11月30日

外国人が日本で暮らしていると、知人やSNSを通じて「銀行のキャシュカードや携帯電話を売ってほしい」と持ちかけられることがよくあります。他人のキャッシュカードを使ってATMで現金を引き出す「アルバイト」や荷物を運ぶだけで謝礼をもらえる「アルバイト」を頼まれることもあります。「簡単な仕事でお金がもらえる」と思いがちですが、このような「うまい話」はとても危険です。軽い気持ちでこうした誘いに応じてしまうと、犯罪者として警察に逮捕されたり、大きな犯罪に協力したりすることになります。そして、母国に強制送還されることもあります。

1.犯罪になってしまう6つの「アルバイト」とは?

「アルバイト」や「小づかいかせぎ」のつもりでやったことが犯罪になってしまうケースがあります。そのような「アルバイト」の代表的なもの6種類を下の表で紹介します。同じ母国の人からSNSなどで誘われることが多いので、くれぐれも気をつけてください。

◆一般の外国人が犯しやすい6種類の犯罪

銀行のキャッシュカードや通帳を売る
犯罪収益移転防止法違反
他人に頼まれて自分の口座からお金を引き出す
犯罪収益移転防止法違反
他人の口座から現金を引き出す
窃盗
携帯電話(SIM付き)を売る
携帯電話不正利用防止法違反
知らない人からお金を受け取って運ぶ
詐欺など
他人に頼まれて荷物を受け取って運ぶ
詐欺、覚せい剤取締法違反など

「簡単な仕事でお金がもらえる」と軽く考え、依頼や誘いに応じてしまうと、自分のしたことも犯罪になりますし、犯罪グループに協力することにもなります。その結果、あなたが犯罪者として警察に捕まり、場合によっては、母国に強制送還されることもあります。

それでは、一つ一つについてくわしく説明していきます。

2.キャッシュカードや携帯電話を売る=犯罪

キャッシュカードなどを売ること=犯罪

日本で暮らすベトナム人向けのFacebookページ(ベトナム語)などで「キャッシュカードや通帳を高額で買います。帰国する人は売ってください」といった投稿をよく見かけます。呼びかけに応じてキャッシュカードなどを売ると、数万円をもらえる場合もあります。

しかし、このような投稿をする人は犯罪者とつながっており、あなたが銀行のキャッシュカードや通帳を売ると、犯罪(犯罪収益移転防止法違反)になります。そして、あなたの口座は、詐欺グループがだれかをだましてお金を振り込ませるための口座や不正送金を行うための口座に使われます。インターネットバンキングの口座番号やパスワードを他人に教える場合も同じです。

そのような犯罪被害が発覚し、警察が捜査すると、口座を売ったあなたはすぐに特定され、警察から事情を聴かれたり逮捕されたりします。

◎ 帰国するために不要になった口座は必ず解約してください。

external link キャッシュカードや通帳の売買は犯罪です!|KOKORO

携帯電話を売ること=犯罪

携帯電話を他人に売ると、その電話は、悪い人がだれかをだましてお金を振り込ませるときなどに使われます。たとえば、その電話を使って、相手(被害者)に電話したり、仲間に指示をしたりします。

あなたが詐欺に直接には協力しなくても、携帯電話を他人に売ったりあげたりすること自体が携帯電話不正利用防止法違反という犯罪になります。

SIMの入っていない携帯電話なら、他人にあげても大丈夫です。

3.他人に頼まれてお金を引き出す=犯罪

他人に頼まれて自分の口座から現金を引き出す=犯罪

だれかに頼まれて、あなたの銀行口座に振り込まれたお金を引き出し、別の口座に入金したり他人に渡したりすると、犯罪収益移転防止法違反という犯罪になります。そのお金は、悪い人がだれかをだまして振り込ませたお金や不正送金に関係するお金です。

他人の口座から現金を引き出す=犯罪

他人のキャッシュカードでATMからお金を引き出すことも犯罪です。他人の口座からお金を引き出すことは窃盗にあたります。

悪い人がだれかをだましてお金を振り込ませるときは、他人から買った口座に振り込ませます。そのお金をあなたがATMで引き出した場合、ATMの防犯カメラの映像などであなたが特定され、警察から事情を聴かれたり逮捕されたりすることがあります。

詐欺グループの中でATMから現金を引き出す役割は「出し子」と呼ばれています。「出し子」は警察に逮捕されるリスクが高いので、犯罪グループは「出し子」の役割をアルバイトにやらせるのです。

4.知らない人からお金を受け取って運ぶ=犯罪

現金の受け取り役・運び役=犯罪

だれかに頼まれて、他人からお金を受け取る役割を引き受けると、詐欺などの犯罪に協力することになります。

悪い人がだれかをだましてお金を受け取る場合、口座に振り込ませるか、どこかで直接受け取ります。あなたが受け取り役を引き受けた場合、あなたは詐欺に協力したことになり、警察に見つかれば逮捕されます。

詐欺グループの中で被害者から現金を受け取る役割は「受け子」と呼ばれています。現金の受け渡し場所の近くに警察がかくれて待ち、「受け子」が逮捕されるケースが多いので、詐欺グループはその役割をアルバイトにやらせます。

external link 現金の受け取り役が逮捕された実例など|KOKORO

5.他人に頼まれて荷物を受け取って運ぶ=犯罪

荷物の受け取り・転送・搬送=犯罪

自宅などに配達された荷物を受け取ってどこかに運んだり宅配で転送したりする「アルバイト」も犯罪です。荷物の中身によって、どの犯罪にあたるかが決まります。

受け取る荷物は犯罪に関係するものです。中身が麻薬や覚せい剤の場合もあります。覚せい剤や麻薬などを扱うことは重大犯罪なので、「中身を知らなかった」と言い訳しても、多くの場合、あなたも罪に問われます。

external link 荷物の運び役が逮捕された実例など|KOKORO

飛行機で荷物を運ぶ「運び屋」=犯罪

「謝礼を渡すので、飛行機で荷物を運んで向こうの空港で友人に渡してほしい」とか「海外に行ってお土産をあずかって帰るだけで数万円を支払う」と頼まれることがあります。

しかし、このような誘いには絶対に乗ってはいけません。その荷物が、違法薬物(覚せい剤や麻薬)や輸入禁止の品物、または危険物である可能性が高いからです。「中身を知らずに運んだ」と主張しても、多くの場合、あなたも罪に問われることになります。

【覚せい剤取締法違反、関税法違反など】

6.「知らなかった」と言い訳しても許してもらえない

覚せい剤や麻薬の「運び屋」は重大な犯罪であり、厳しく罰せられます。他人からあずかった荷物でも、自分が運んだ以上は責任を問われます。「中身を知らなかった」「中身が分からなかった」と主張しても、簡単には認めてもらえません。

麻薬組織に利用され、「中身を知らずに運ばされた」という場合、そのことを裁判官に信じてもらえれば、裁判で無罪になる場合もあります。しかし、それはとても難しいです。

あなたが言っていることを裁判で認めてもらうには、荷物の受け渡しの状況を知っている人に証言してもらうなど、あなたの説明が本当であることを証明しなければなりません。

また、刑事裁判では、次のようなことがらも確認されます。

  • だれにどうやって頼まれたのか
  • 約束された謝礼はいくらだったのか
  • 役割を引き受ける過程で、犯罪の可能性を疑うような場面ややり取りはなかったのか
  • なぜその荷物が合法的なものだと信じたのか
  • 旅行の目的は何だったのか

そして、たとえば、「あなたが荷物の中身が覚せい剤や麻薬だとはっきり認識できなくても、何か違法なものかも知れないと疑うことは可能だった」と裁判官が判断すると、あなたは有罪になる可能性が高いです。

7.まとめ

小づかいかせぎのつもりでキャッシュカードや携帯電話を他人に売ったり、荷物運びを手伝ったりすると、それが犯罪になります。

下記のような「仕事」や「アルバイト」を引き受けると、警察に逮捕される場合もありますので、くれぐれも注意してください。

① 銀行のキャッシュカードや通帳を売る

② 他人に頼まれて自分の口座からお金を引き出す

③ 他人の口座から現金を引き出す

④ 携帯電話(SIM付き)を売る

⑤ 知らない人からお金を受け取って運ぶ

⑥ 他人に頼まれて荷物を受け取って運ぶ