留学生の皆さんが日本でアルバイトをする場合、1週間に28時間までという制限があることはご存じだと思います。しかし、「週28時間」以外にも重要なことがいくつかあります。留学生の在留期間の更新に関する入管の審査は年々厳しくなっていますので、知らずに違反すると大変なことになります。入管法に詳しい弁護士さんが解説します。
留学生が自分の在留カードを見ると、「在留資格」の欄に「留学」と書いてあります。そして、その横に「就労制限の有無」という欄があり、「就労不可」と書かれています。「留学」の在留資格では原則として働くことができないからです。
ただし、「資格外活動の許可」を取れば、アルバイトを行うことができます。この許可を取ると、在留カードの裏側に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と記載してもらえます。ただし、パチンコ店や性風俗の仕事はできません。
一般の資格外活動許可(包括許可)ではなく「個別許可」が必要なケースもあります。個人で事業を行う場合や稼働時間の確認が難しい場合です。例えば、個人契約で翻訳、通訳、家庭教師や配達業務などを行う場合は、後で在留期間更新の支障にならないよう、必ず入管に相談しましょう。
アルバイトを行うことができるのは原則として週28時間以内ですが、「28時間の数え方」について注意点があります。実は、「どの曜日から数えても週28時間になっていること」が必要なのです。
下記の表を見てみましょう。この例では、1週目も2週目もそれぞれ28時間以内になっています。しかし、1週目の金曜日から2週目の木曜日までの1週間(赤い文字の部分)を足すと合計48時間となってしまいます。これはNGなのです!
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
1週目 | 0時間 | 4時間 | 4時間 | 0時間 | 4時間 | 8時間 | 8時間 |
2週目 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 4時間 | 0時間 | 0時間 | 0時間 |
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
1週目 | 0時間 | 4時間 | 4時間 | 0時間 | 4時間 | 8時間 | 8時間 |
2週目 | 8時間 | 8時間 | 8時間 | 4時間 | 0時間 | 0時間 | 0時間 |
このように、「週28時間」とは、どの曜日から起算しても28時間以内である必要がありますので、注意してください。
学校の学則で定められている長期休暇の期間中は1日8時間までアルバイトを行うことができます。ただし、新型コロナウイルスなどの影響で学校が臨時休校になっている場合は、学校の正式な長期休暇ではありませんので、「1日8時間」ではなく「週28時間」のままです。ご注意ください!
卒業後も留学の在留資格の有効期間が残っていることが多いです。しかし、卒業してから帰国するまでの間にアルバイトをしてはいけません。留学生のアルバイトが認められているのは学校に在籍している間だけです。
とはいえ、今は新型コロナウイルス感染症の影響で飛行機が運休し、卒業後も帰国できない留学生がたくさんいます。このため、留学生向けの特例が設けられていますので、紹介します。
❶ アルバイトを行う期間の延長…2020年に卒業した留学生(「留学」の在留資格+資格外活動許可)について帰国便の確保などが困難な場合は、在留期間終了まで引き続き週28時間のアルバイトを行うことができます。
❷ 特定活動…①で在留期間が終わりそうな人は「特定活動(6カ月)」という在留資格への変更が特別に認められます。変更後は資格外活動許可を受けなくても週28時間のアルバイト ができます。
❸ 2020年に日本の大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)を卒業した留学生で就職活動を行いたい人も「特定活動(6カ月)」への変更が可能です。変更後は資格外活動許可なしで週28時間のアルバイトができます。
新型コロナで、帰国できなくなったり、予定が変わったりした人はたくさんいると思います。残念ながら、日本と海外を自由に行き来できるようになるまでには、もうしばらく時間がかかりそうです。留学生の皆様も、大変ですが、長期的な対応も想定して今後の計画を立ててください。
〈執筆:センチュリー法律事務所・弁護士 杉田昌平〉