前回は、アルバイトに関する入管法のルールについて紹介しました。今回は、入管法のルールを守らなかったらどうなるかという点を中心に説明します。
外国人が「資格外活動許可」を取得して働くことができる時間は原則として週28時間以内です。これを超えて働くことを「オーバーワーク」と呼びます。オーバーワークをしてしまうと、①在留期間を更新できない ②学校を卒業して就職するために在留資格を変更しようとしても変更が許可されない――という結果になることがあります。
例えば、日本で大学を卒業し、貿易業務を行う企業に就職しようとしたAさん。彼は大学時代、1年以上継続して月200時間以上のアルバイトをしました。月200時間となると、112時間(週28時間×4週)と比べてかなり長時間オーバーしています。このオーバーワークが発覚したため、Aさんは、就職するための在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更を認めてもらえませんでした。Aさんの就職は取り消され、帰国するしかありませんでした。
*オーバーワークで帰国した別の事例
一部の方は「オーバーワークはバレない」と考えているかもしれません。
しかし、日本の企業が外国人を雇うと、ハローワークに「雇用状況の届出」を提出しなければなりません。この書類には在留カードの番号も記載されます。あなたが2つ以上の企業でアルバイトを行えば、2つの企業がそれぞれ「雇用状況の届け出」を提出しますので、あなたが2つの企業で働いていることはハローワークを通じて入管にもばれてしまいます。また、課税証明書や源泉徴収票からもオーバーワークが判明する場合があります。
入管はオーバーワークに対して年々厳しくなっており、「オーバーワークやダブルワークはばれない」というのは昔の話です。都合の良い話だけをうのみにせず、法令に違反することはしないようにしましょう。
留学生が在留資格を「特定技能」に切り替えて就職するケースが最近あります。特定技能への変更を希望している場合、アルバイトについてさらに注意点があります。
特定技能の在留資格に変更する際に、❶国税 ❷地方税 ❸国民健康保険 ❹国民年金保険の納付状況を示す資料を入管に提出しなければなりません。具体的には、市役所や勤務先で発行してもらう課税証明書や源泉徴収票などです。こういった書類をきちんと提出できるように、次の点に注意してください。
源泉徴収票(サンプル)
源泉徴収票(サンプル)
❶ 確定申告
同時に複数の企業でアルバイトをした場合、翌年の2~4月に地元の税務署で確定申告をしてください。そのときに「確定申告書の写し」を渡されますので、保管しておくようにしましょう。確定申告の方法が分からない場合は、1年分(1~12月)の給与明細を税務署に持って行き、窓口で相談してください。
❷ 源泉徴収票の保管
源泉徴収票の提出も求められます。アルバイト先から年に1回渡される源泉徴収票を捨てないで保管しておくようにしてください。
❸ 国民年金
留学生は、国民年金については、学生納付特例制度によって納付を猶予してもらえます。手続きはそれほど難しくありません。しかし、手続きを行っていないと「未納」となり、在留資格の期間の更新や在留資格の変更の際に不利になる可能性があります。特定技能に限らず日本での就職を希望する人は、学生納付特例制度の手続きを必ず行ってください。やり方は学校やお近くの年金事務所などに相談してください。