部屋着で出かける、エレベーターで中の人が降りる前に乗り込む、自転車の2人乗り、個人情報を根掘り葉掘りたずねるなど…ベトナムでは許容されますが、日本では非常識だったりするのです。
数年前のハロウィーンのこと。ベトナムのSNS上で3人の外国人男性がベトナム人主婦に扮した仮装の写真が話題になりました。彼らはベトナムの編み笠「ノンラー」をかぶり、ベトナム人が寝るときにも着るシルクの部屋着を着ていたのです。Hanoi expats(ベトナムに関心のある外国人コミュニティが運営するFacebookページ)上では、ベトナム人が部屋着のまま外に出て市場に買い物に出掛けることが常識であることを興味深くとらえられていました。
もしあなたにもその習慣があるなら、ベトナムでは大丈夫ですが日本ではお勧めできません。日本人には、自宅近くのコンビニに行くだけでも化粧をしないと気が済まない人もいる…という話を聞いたことがありませんか?これは少々行き過ぎた表現かもしれませんが、ある意味で的を得ているとも言えます。日本人は周りに対しての気遣いやマナーを重んじます。人前に出る時は、常に「きちんとした」姿を見せることがマナーだと考えている人が多いのです。
したがって日本では、部屋着はあくまで部屋着として使い、外出の際は「場違い」と思われることのない身なりを心がけるようにしましょう。
私は来日する前、ハノイにあるオフィスビル内の事務所で10年以上働いていました。ですから、ベトナム人がエレベーターをどのように使っているかをよく知っています。エレベーターを待つ時、多くの人がドアの真ん前に立ち、ドアが開くや否や急いで中に入ろうとします。時には、外に出ようとする人にぶつかるほどの勢いで突入するのです。
ただこの行為は、ベトナムでは(残念ですが)不快なことではあっても非難されるほどのことではないのです。しかし日本でこれをやってしまうと、迷惑行為とみなされ、非難の目にさらされるでしょう。
日本では、エレベーターの乗降マナーがしっかり決まっています。ドアが開く時、外で待つ人たちは左右に分かれ、降りてくる人たちのために“道”を作ります。たとえ中に誰も乗っていない場合でも、日本人はどちらかに寄って立っています。
またエレベーターの中では、乗降する人がいる時に操作パネルの前に立っている人が「開く」のボタンを押してあげます。乗り降りする人がドアに挟まれることのないよう、最後まで「開く」のボタンを押し続けるのです。
また最近では、新型コロナウィルス感染予防のため、日本政府はエレベーター内の“密”を避けるため(また、健康づくりのため)に1~2階まで上がる場合は階段を使うように奨励しています。積極的に階段を使うのもの良いかもしれませんね!
ベトナムでは、相手と20~30分会話をして打ち解け合えたと思えたら、たとえ初めて会った人でも家族のことや住んでいる家、趣味はもちろん、相手の給料まで自由に尋ねるのが自然です。私たちベトナム人は、世界でもトップクラスの親密度を誇る“人なつっこい”国民性を持っていると言えるのではないかと思います。
かといって日本人が疎遠で人間関係が淡泊…という意味ではなく、きっと私たちベトナム人がいきなり個人的な質問をしてしまうと、相手への気遣いを尊重する国民性の彼らは少しびっくりし、時にそれが不快に感じることがあるのだと思われます。
私のベトナム人の友人は、日本人ウェイトレスと30分近く仲良くおしゃべりをしていたのですが、次第に「どこに住んでるの?」、「家族は何人?」、「父親はどんな仕事をしてるの?」など質問がエスカレートしていきました。彼女の顔色はだんだんと曇り、ついには質問に答えるのをやめて席を離れてしまったのです。
日本人は、私たちベトナム人と比べて規律やマナーを重んじ、対人関係も相手を尊重しながら段階的に深くしていくという国民性があります。友人を作るときも、お互いの個人情報を共有しようと思うまでにはそれまでの過程が重要であり、時間が必要なのです。
ベトナムの学生といえば、ほとんどの人が「赤い花が咲き乱れたホウオウボクの木の下をアオザイのすそをはためかせたながら2人乗り自転車で走り去る…」というクラシックな風景をイメージするのではないでしょうか。
しかし、そんなベトナムの微笑ましいシーンも、日本では違法になってしまいます。日本で自転車の2人乗りができる条件は道路交通法で①運転する人が16歳以上であること②幼児用の座席が設置されていること③乗せる幼児が6歳未満であること、と定められています。もっと詳細な要件もありますが、基本はこの条件です。したがって、自転車に大人が2人乗りすることは道交法違反となってしまいます。
また、飲酒して自転車を運転することは日本では昔から禁止されていますが、ベトナムでも2019年12月30日の政令で交通違反処分される対象となりました。日本にいてもベトナムにいても、バイクと同様お酒を飲んで自転車を運転してはいけません!
(Thạch Long)