困りごと解決

困りごと相談簿 file 06:技能実習生の強制帰国

【相談】技能実習の1年目、寮に突然やって来た
2021年03月19日

彼女が技能実習を始めて数カ月で送出機関の社長がベトナムからやってきて、「会社はあなたをいらないと言っている。一緒に帰国しよう」と言いました。彼女は以前から相談していた外国人支援団体に連絡。支援団体のサポートでOTITが彼女を救出し、転職サポートもしてくれました。

カテゴリー 労働

【相談者】
・技能実習生
・30代・ベトナム人女性
・居住地:奈良県→岩手県

送出機関社長が帰国を強要

ブラック企業で技能実習

相談者は奈良県の小さな縫製工場で技能実習を始め、毎日2~5時間残業しましたが、残業代を一切もらえませんでした。社長の説明は「本来は200枚を8時間以内に縫わなければならない。200枚縫い終わるまでは残業にカウントしない」というものでした。このため、手取り給料は88,000円(約18,610,000ドン)しかありませんでした。
※100円=21,148 VND(2021年3月17日現在)

相談者はベトナムの縫製工場で12年間ミシンを踏んでいたので、経験はあります。しかし、奈良では仕上げ縫いを担当し、そで、肩、わき、えりなどすべての部分を縫わなければならないので、頑張っても1枚5分かかりました。100枚で500分。3時間残業しても1日150枚が精一杯でした。

強制帰国の危機

相談者が働き始めて3カ月目、社長は「1日200枚縫えないなら、あなたはもう会社に来なくていい」と言いました。そのときは監理団体(組合)の通訳が間に入り、仕事を再開できました。しかし、その4カ月後、送出機関の社長がベトナムから来て、「会社はあなたを要らないと言っている。私と一緒に帰国しよう」と相談者に迫りました。そして、相談者を見張るために、その夜は相談者の寮に泊まりました。

外国人技能実習機構が保護

相談者は4カ月前から「外国人実習生支援」という組織にSNSで相談を続けていました。送出機関社長が来た日の夜は、この組織の代表に「ベトナムに連れて帰られそうなので、助けてほしい」とSNSで送信しました。代表はその夜のうちに外国人技能実習機構(OTIT)と労基署に詳しいレポートをFAX送信し、翌朝、OTITの担当者たちが会社に来て相談者を保護してくれました。その後、この会社は技能実習を実施できなくなり、相談者たちは新しい会社で技能実習を続けられることになりました。

ポイント:強制帰国は違法

強制帰国の手順

技能実習生が強制的に帰国させられることは時々あります。しかし、それは違法です。そして、送出機関や監理団体が実習生を強制帰国させる際、次のようなことがよく行われます。

・技能実習生に「自分の希望で帰国する」という文書を書かせる。
・「帰国して何カ月か待てば、新しい技能実習先を紹介する」と言って実習生を説得する。

今回の送出機関社長も同じでした。しかし、相談者は本当に新しい実習先を紹介してもらえる保証はないと考え、「次の実習先が見つかるまで日本で待ちたい」と返事しました。

強制帰国は違法

技能実習法やその運用要領は実習生の帰国や解雇について次のように規定しています。実習生が希望していないのに無理に帰国させることは違法です。

〇 技能実習生を技能実習計画の途中で帰国させる場合は、実習生に対し、意に反して途中で帰国する必要はないことの説明や帰国の意思確認を書面で十分に行ったうえで、外国人技能実習機構(OTIT)に届けなければならない。

〇 技能実習生が技能実習の継続を希望している場合、受入会社や監理団体が責任を持って次の実習先を確保することが必要。

ポイント:OTITや支援団体を頼る

強制帰国への対処

監理団体や受入会社が適切に対応しない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に相談しましょう。ベトナム語で相談内容を送信できます。電話もあります(0120-250-168)。事務所を直接訪れるのも有効です。

万一、OTITに相談しても解決しない場合は、次のような民間の支援団体もあります。OTITや労基署に1人でうまく相談できない場合も助けてくれます。「外国人実習生支援」は、緊急性が高い場合、代表が自分の名刺の画像をSNSで送ってくれます。そして、無理に空港に連れて行かれた場合は、出国審査(パスポート審査)で名刺の画像を見せて「本当は帰国したくない」と伝えるようアドバイスしています。

外国人実習生支援(Facebook)
日越ともいき支援会
岐阜一般労働組合 第2外国人支部:甄凱(けんかい)支部長 090・8496・9668(日本語)

OTITが保護→別の会社で実習

相談者が「外国人実習生支援」にSOSを送った翌日、OTITの担当者たちが会社を訪れ、相談者が強制帰国させられないようにホテルに移して保護しました。相談者は約2カ月後、OTITや支援団体の手配で新しい会社に転籍しました。新しい会社は残業代をきちんと支払い、技能実習生の生活サポートもしっかりやってくれます。このように、やむを得ない事情がある場合は、OTITや支援団体を通じて新しい職場に移ることが可能です。