カンボジア人の技能実習生が寮の自分の部屋に婚約者(別の会社の技能実習生)を泊めたところ、「会社の規則に違反した」として解雇されそうになりました。この解雇は法律違反の疑いがあります。無理に解雇され帰国させられそうになったときは、どのように対処したらよいでしょうか?
【相談者】 ・技能実習生 ・20代・カンボジア人男性 ・実習地:静岡県
相談者はカンボジア人の技能実習生で、静岡県の家具工場で働いていました。2020年11月21~23日の3連休に、岐阜県で技能実習をしているカンボジア人女性が相談者に会いに来ました。この女性とは母国で親同士も会って結婚の約束をしています。女性は相談者の部屋に宿泊していましたが、11月23日朝、相談者は休日出勤のため女性を部屋に残して工場で働いていると、会社幹部(日本人)が合鍵で部屋に入り、女性を発見しました。
幹部からの連絡を受けた監理団体(受入組合)の担当社が同日午後、会社にやって来て、相談者は仕事を中断させられました。担当社は相談者を寮に連れて行って荷物をまとめさせ、監理団体の宿泊施設に連れて行きました。その日、監理団体は相談者に「会社はあなたを解雇した」と通告しました。「外部の人を寮に入れる場合は、事前に会社と相談する」という規則を破ったという理由でした。
相談者は仕事を与えられず、その日から監理団体の施設に宿泊させられました。監理団体は12月2日の航空券を買い、相談者に帰国するように言いました。相談者は日本に長く住むカンボジア人に相談したところ、ある労働組合を紹介されたので、電話をして訪問しました。強制帰国が4日後に迫っていました。
相談者が訪ねたのは外国人労働者のための労働組合支部でした。支部長は相談者の話を聞くと、相談者をその日から提携宿泊施設で保護するとともに、会社と監理団体に交渉を申し入れました。翌月、会社と監理団体が労組に来て協議し、数日後、会社の代理人(弁護士)から解雇撤回などの提案がありました。労組はこれに対し、再発防止に関する協定を結んでから職場復帰することを提案しましたが、合意に至りませんでした。現在は、11月23日以降の賃金の支払いなどを求めて交渉を続けています。支払額について合意すれば、この会社を合意退職し、労組が紹介する別の職場で仕事を続ける方針です。
この監理団体の外出・外泊ルール
この監理団体は技能実習生に対して外出・外泊ルールを課していました。「他社の寮に泊まるときは、自分の会社に事前に相談する」「自分の会社の寮に部外者を泊めるときも会社に事前に相談する」などの内容です。相談者は以前、会社に相談せずに婚約者の寮に泊まりに行ったのがばれ、監理団体から注意を受けました。今回も会社に相談せずに婚約者を宿泊させたため、監理団体から「ルールを破ったのは2回目なので、会社はあなたを解雇した。帰国してもらう」と通告されました。
会社が禁止事項を設け、従業員がそれを破ったからといって、どのような場合でも解雇できるわけではありません。労働契約法は解雇について制限を設けており、特に一定の雇用期間を定めた有期の雇用契約については、「やむを得ない事由」がある場合でなければ解雇を行うことができないと定めています。
また、外出・外泊のルールについては、技能実習法は「技能実習関係者は、技能実習生の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはならない」と定めています。相談者が婚約者と交際することや婚約者を自分の部屋に数日間泊めることは「私生活の自由」にあたり、制限できないと解釈する余地があります。
※ただし、会社に無断で寮に無制限に部外者を泊めると、会社に迷惑をかける恐れもあります。例えば、技能実習生の寮に不法滞在者が泊まる事例が散見されますが、これはその人の不法滞在を手助けしていることになり、会社の管理責任が問われることにもなりかねません。
技能実習生が強制的に帰国させられることは時々あります。しかし、それは違法です。技能実習法やその運用要領は実習生の帰国や解雇について次のように規定しています。実習生が希望していないのに無理に帰国させることは違法です。
〇 技能実習生を技能実習計画の途中で帰国させる場合は、実習生に対し、意に反して途中で帰国する必要はないことの説明や帰国の意思確認を書面で十分に行ったうえで、外国人技能実習機構(OTIT)に届けなければならない。
〇 技能実習生が技能実習の継続を希望している場合、受入会社や監理団体が責任を持って次の実習先を確保することが必要。
相談者が相談したのは岐阜一般労働組合・第2外国人支部の甄凱(けん・かい)支部長です。事務所は岐阜県羽島市にあります。甄凱さんは提携するNPO法人のシェルター(宿泊施設)に相談者を住ませ、会社や監理団体と交渉しました。その後、会社は弁護士を通じて解雇撤回と謝罪を文書で提案しましたが、支部と相談者はその内容では不十分と考え、その後も交渉を続けています。また、支部は外国人技能実習機構(OTIT)にも事実経過を申告し、OTITは2021年3月に調査を始めました。技能実習生もやむを得ない事情がある場合は、OTITや支援団体を通じて新しい職場に移ることが可能です。
岐阜一般労組・第2外国人支部の事務所と甄凱支部長
監理団体や会社が適切に対応しない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に相談しましょう。ベトナム語で相談内容を送信できます。電話もあります(0120-250-168)。事務所を直接訪れるのも有効です。
万一、OTITに相談しても解決しない場合は、次のような民間の支援団体もあります。OTITや労基署に1人でうまく相談できない場合も助けてくれます。「外国人実習生支援」は、緊急性が高い場合、代表が自分の名刺の画像をSNSで送ってくれます。そして、無理に空港に連れて行かれた場合は、出国審査(パスポート審査)で名刺の画像を見せて「本当は帰国したくない」と伝えるようアドバイスしています。
・岐阜一般労働組合 第2外国人支部(甄凱支部長) 090・8496・9668(日本語) ・外国人実習生支援(Facebook) ・日越ともいき支援会
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