「ウーバーイーツ」をご存じですか? ベトナムの「グラブフード」などと同じようなサービスで、顧客がインターネットで飲食店の商品を注文すると、配達員が代わりに飲食店に行って商品を受け取り、顧客に届けてくれるサービスです。現在、日本では「出前館」と「ウーバーイーツ」がこのサービスの大手で、在日外国人にもウーバーイーツの配達員が増えています。しかし、本来は配達員になれない人が不正に配達員になろうとしてトラブルに巻き込まれたり警察に逮捕されたりする例も増えています。
2020年夏、神奈川県で技能実習をしていたズンさん(仮名)は同僚と2人で会社から逃げ出しました。ズンさんは友人(ベトナムの送出機関の同期生)で先に失踪していたチェンさん(仮名)を訪ねて東京のアパートに一緒に住みました。このアパートはベトナム人留学生が借りており、失踪した実習生たちからお金をもらって住ませていました。
ズンさんたちは、チェンさんがしていたウーバーイーツの配達員になろうと考えました。この仕事をするには、ウーバーイーツの会社に登録して配達員としての「アカウント」を作らなければなりません。このアカウントで配達員用サイトにログインし、仕事を受注できるのです。登録するには在留カードを提示しなければなりません。しかし、技能実習生は許可された職場以外での仕事はできないので、自分の在留カードでは配達員として登録できません。
そこで、在日ベトナム人の間で配達員のアカウントのヤミ取引が行われています。ズンさんたちは、チェンさんの紹介で自称「留学生」のベトナム人2人と会い、10万円ずつ払って彼らのアカウントを購入しました。その場でログインして確かめると、確かに配達員用ページにログインすることができました。
ところが、翌日、実際に働くためにこのアカウントで配達員用ページにログインしようとすると、ログインできなくなっていました。アカウントが削除されていたのです。ズンさんだけでなく同僚とチェンさんのアカウントも削除されており、「留学生」たちとも連絡が取れなくなってしまいました。
アカウントを売って代金だけだまし取る詐欺の被害にあったのです。ズンさんは「留学生」を何とか見つけ出して代金の一部を取り返しましたが、その後、相手は再び姿をくらまし、ズンさんは残金を回収できませんでした。
他人の在留カードの写真でウーバーイーツ配達員の登録手続きをしたなどとして、大阪府警は2021年1月、大阪市に住むベトナム人男性(24)を検察庁に送りました。この男性は2020年10月、ウーバーイーツの仕事中に警察官から職務質問され、期限の切れた在留カードしか持っていなかったため、入管難民法違反(オーバーステイ)容疑で逮捕されていました。
男性はその後、入管難民法違反については懲役(ちょうえき)2年、執行猶予(しっこうゆうよ)3年の判決を言い渡されました。配達員として月15万円程度の収入を得ていましたが、最後は、強制帰国させられることになりました。
この男性も元技能実習生で、2019年に実習先の職場から逃げ出し、不法就労をくり返していました。しかし、新型コロナでアルバイト探しも難しくなり、他人の在留カードでウーバーイーツの配達員と登録していました。
在留カードの情報を検索するアプリを配付する入管のページ
ウーバーイーツは2020年末から、配達員の登録方法(アカウントの取得方法)を変更し、オンラインだけで受け付ける登録から、配達員になりたい人と実際に面談して手続きを行う方法を東京、大阪で導入し、その後、他都市にもその方式を広げています。
また、不正にアルバイトをするために、Facebookなどを通じて偽の在留カードが売買されています。しかし、最近は、入管が無料で配布しているアプリに在留カードの情報を入力すると、在留カードが本物かどうか確認できるようになっています。このため、偽の在留カードで働ける職場は限られています。
このように、失踪やオーバーステイ、不法就労をしても、お金を稼ぐことは年々難しくなっています。技能実習生や留学生は、①できるだけ少ない借金で日本に来る ②不法就労や失踪をする前に、困った状況を解決するために相談機関や支援機関を頼る――ようにしてください。
日越ともいき支援会
困難な状況やつらい状況になったときの相談先をいくつか紹介します。
技能実習で困ったことが起き、監理団体(受入組合)や受入会社がきちんと対応してくれない場合は、まずは外国人技能実習機構(OTIT)に相談してください。公式HPからベトナム語で相談内容を送信できます。フリーダイヤルの電話(0120-250-168)もあります。
OTITの事務所を直接訪れるのも有効です。その際、自分の在留カードをコンビニでコピーし、その紙の余白にあなたが何に困っているかを書いて持っていってください。事務所でそれを渡すと、説明が格段にスムーズになります。必要がある場合は、OTITが通訳を手配してくれます。
技能実習生も留学生も、残業代を払ってもらえないなどの相談は全国の労働基準監督署で相談できます。ベトナム語でもいいので、労基署の名前、「申告書」というタイトル、あなたの名前、日付を紙に書き、最後に署名をして労基署に持って行ってください。
external link 全国の労基署
OTITや労基署に相談しても解決しない場合や1人でうまく相談できない場合、次のような民間の支援団体のサポートを得ることもできます。
external link 外国人実習生支援(Facebook)
=技能実習生の労働問題、雇用問題、生活問題、在留資格関連
external link 日越ともいき支援会
=留学生や技能実習生などあらゆるベトナム人の労働・雇用・生活・就職・在留資格などに関する問題
岐阜一般労働組合 第2外国人支部
=甄凱(けんかい)支部長:090・8496・9668(日本語)=技能実習生、正社員、派遣労働者などあらゆる外国人労働者の労働や雇用、在留資格に関する問題
external link 在日ベトナム人協会(VAIJ)
=生活・医療・健康に関するホットライン:050-6874-8385
external link 在仙台ベトナム人協会(SenTVA)
external link 茨城県ベトナム人協会
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