「新型コロナ対策の優等生」と言われたベトナムで5月以降、新型コロナウイルスの感染者が急速に広がっている。ベトナムではワクチン摂取が周辺諸国より遅れており、今年中に人口の75%をカバーするワクチンを準備する方針だ。日本政府は6月16日、約100万回分のワクチンをベトナムに向けて航空機で発送し、同日ハノイに到着した(無償提供)。
日本政府がベトナムに寄付した約100万回分のワクチンは英・アストラゼネカ製。台湾へのワクチン無償提供に続く第2弾の国際貢献となる。
ベトナムは、日本からの援助以外にも諸外国からワクチンを入手する方針だ。保健省は今年末までに人口の75%にあたる1億5000万回分のワクチン確保を目指すと表明し、外国からの入手に加えて国内生産も目指している。
ベトナムでは5月以降、新型コロナウイルスの新規感染者が急増している。世界保健機関(WHO)の集計によると5月26日に過去最多の470人が新規感染。6月に入っても連日数十人の新規感染が報告されている。
入国制限や隔離対策の徹底で感染者数を押さえ込み、世界から「新型コロナ対策の優等生」と言われてきたベトナムだが、最近は感染経路の特定ができないケースが増え、感染が急拡大している。
グエン・タン・ロン(Nguyen Thanh Long)保健相は5月29日、インドで見つかった変異ウイルスと英国で見つかった変異ウイルスが合わさった新たな変異ウイルスがベトナムで見つかったと発表した。その後、WHO(世界保健機関)の技術責任者はこの変異ウイルスについて「混合型ではなくインド型から派生したウイルスである」との見解を示した。
このウイルスは従来の変異ウイルスよりもさらに感染力が強いとされるものの、WHOは「英国、南アフリカ、ブラジル、インドで見つかった懸念される4つの変異ウイルスについては、従来の治療やワクチンが依然として有効」としている。
変異ウイルス発見を受け、日本政府はベトナムからの水際対策を強化している。これまでベトナムからの入国者には14日間の待機を求めていたが、このうち最初の6日間は検疫所が指定した施設での待機とし、入国後3日目と6日目に検査を求めている。
ベトナムのワクチン接種率は5月末時点で1%程度と言われており、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国中で最低となっている。グエン・スアン・フック国家主席は米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領に書簡を送り、ワクチン入手への協力を依頼したという。
ベトナム政府は従来、英国のアストラゼネカ社などが開発したワクチンのほかロシアが開発したスプートニクVの使用を承認していた。さらに6月に入って中国のシノファーム社のワクチン使用も承認。保健省は年内に1億5000万回分のワクチンを調達する方針を発表し、各国の政府や製薬会社に協力を要請しているほか、保健省傘下の製薬会社で自前調達することも目指している。
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