彼は技能実習を終えましたが、新型コロナの影響で帰国できず、同じ会社で働いていました。しかし、そろそろ帰国しようと自分で飛行機を予約したところ、組合は「飛行機代は5万円までしか払わない」と言いました。彼はOTITに相談し、OTITが組合を指導し、全額を払ってもらうことができました。彼がOTITに渡した手紙などを紹介します。
【相談者】 ・元技能実習生 ・20代・ベトナム人男性 ・実習地:愛知県
日本で技能実習を終えても、最近は新型コロナの影響でベトナムにすぐには帰れません。大使館を通じて行う飛行機の予約がなかなか取れず、別ルートで帰国便を申し込んだ場合、組合が飛行機代を一部しか払ってくれないケースもあり、各地で元実習生たちが困っています。しかし、法律では、帰国費用は組合が全額を負担しなければなりません。外国人技能実習機構(OTIT)に相談し、組合から飛行機代を全額出してもらった先輩の体験談を紹介します。
ベトジェットの予約リストと旅行会社からの請求書
Tran Van Phong(チャン・ヴァン・フォン)さんは2021年1月に5年間の技能実習を終えましたが、すぐには帰国できず、在留資格(ビザ)を特定活動に変更して同じ職場(愛知県の工場)で仕事を続けていました。
フォンさんは「4月22日に有給休暇を取りたい」と会社に申請しました。有給休暇 はたくさん残っていましたが、会社は有給休暇を認めず代わりの日も示さなかったので、フォンさんは4月22日に合意なしで会社を休みました。すると、23日、会社から解雇を言い渡されてしまいました。
寮を追い出されたフォンさんはしばらく友人の家に泊まりましたが、収入がなくなったので自分で飛行機を予約して帰国しようと思いました。
ベトナム大使館を通じて申し込む安い帰国便(ベトナム航空)はなかなか順番が回ってこないので、フォンさんはベトジェットの臨時便を申し込んだところ、6月8日の便の予約が取れました。飛行機代は120,000円で、組合に支払いを求めると、組合は「帰国の飛行機代は50,000円だけサポートする。帰国後に送出機関を通じて支払う」と答えました。
しかし、50,000円では帰国できません。また、数カ月前に帰国した先輩も組合から同じことを言われ、飛行機代を立て替えて帰国しましたが、帰国して5カ月経っても送出機関から支払いを受けていませんでした。
さて、それでは組合が「飛行機代を50,000円しか負担しない」と言っていることや「ベトナムに帰国してから送出機関を通じて支払う」と言っていることは日本の法律で許されるのでしょうか? 答えはNo です。
技能実習に関する法律の施行規則は監理団体(組合など)に対し「技能実習の終了後の帰国が円滑になされるよう必要な措置」を行うことを義務づけています。技能実習生の在留資格が特定活動に変更されていても同じです。
そこで、フォンさんはKOKOROスタッフのサポートを受けて手紙を書き、OTIT名古屋事務所に持って行きました。フォンさんはベトナム語と日本語で1通の手紙を書きましたが、ベトナム語だけでも構いません。日本の行政機関では、口頭だけで説明するより文書を渡した方が効果的です。それに、担当者にも状況を正しく理解してもらえます。
また、フォンさんは日本語の得意な友人に一緒について行ってもらいましたが、そのような友人がいない場合は、OTITが通訳を用意してくれます。
宛名と日付、名前、署名を忘れずに!
フォンさんがOTITに渡した手紙の文面は下記の通りです。コンビニで在留カードをコピーして、その紙の余白に手紙を書きました。こうすると、だれが書いたのか明確になるからです。また、手紙の最初に「OTIT名古屋事務所様」と宛名を書き、最後に日付と自分の名前を書いて署名をしました。
用紙の1枚目の上の方に「申告書」というタイトルを入れると、さらに完璧です。
【手紙の本文】
私は知立市の⚫⚫工業で2021年1月まで5年間、技能実習をしました。その後、コロナですぐに帰国できないため、同社で仕事を続けていました。
(1)私は、17.5日分の有給休暇が残っていたので、今年4月20日に4月22日の有休休暇を申請しましたが、会社は認めてくれませんでした。私はなっとくできず、4月22日に会社を休みました。すると、4月23日に解雇され、収入がなくなりました。とても困っています。法律違反だと思うので、助けてください。
(2)また、私の職場では、⚫⚫協同組合が帰国のエア・チケットを負担しますが、問題があります。 ・⚫⚫は「コロナでチケット代が値上がりしたので、5万円しか負担しない」と言っています。 ・その5万円についても、「ベトナムに帰国してから送り出し機関で受け取るように」と言われました。
チケット代金をベトナムで受け取らせるのは法律違反だと思います。また、5万円だけでは帰国できません。助けてください。
組合から飛行機代全額を受け取って受領証に署名
フォンさんは5月25日にOTIT名古屋事務所を訪ねて受付で手紙を渡すと、担当官が話を聞いてくれました。担当官はフォンさんの話をていねいに聞いたうえで、「組合に聞いてみる」と回答しました。
フォンさんはその後、念のため「外国人実習生支援」という支援団体を運営している榑松(くれまつ)さん(名古屋市)を訪ねました。榑松さんに委任状を書くと、翌日、榑松さんがOTITに電話をして対応状況を確認してくれました。「外国人実習生支援」にはFacebookページがありますので、遠くからでもメッセンジャーで相談することができます。
external link 外国人実習生支援(FB)
その後、OTITは法律に基づいてこの組合を指導し、組合はフォンさんの帰国費用をすべて負担してくれることになりました。内容は愛知県から成田空港までの交通費と成田からダナンまでの飛行機代(120,000円)で、ダナンのホテルでの滞在(隔離)費150,000円はフォンさんの自己負担です。
フォンさんが乗ったベトジェットの帰国便
OTITの指導で組合から飛行機代全額を受け取ったフォンさんは6月7日夜、組合が用意したバスで成田空港に向けて出発(他の元実習生も含めて約15人)。翌8日にベトジェットで成田を発ってその日のうちにダナンに着きました。ダナンでは隔離のためにホテル(2人1室)に3週間滞在し、6月29日にハノイ経由で故郷のナムディン省に帰りました。
フォンさんが泊まったホテルの部屋と部屋からの眺め〈ダナンで2021年6月〉
技能実習生の帰国旅費(帰国後のホテル代は除く)は組合が負担しなければなりません。それは法律で決められています。組合が支払ってくれない場合は、地元のOTITに相談しましょう。OTITに行く場合は、手紙を書いて持って行く方が効果的です。手紙を書く場合の注意点や文例はこのブログを参考にしてください。
external link 外国人技能実習機構(OTIT)
ホテルでの食事と窓からの眺め
すべて
日本に行こう
日本で暮らす
日本で留学
日本で働く
困ったときは
日本語を学ぶ
わたしの体験
KOKORO BLOG
JASSO(日本学生支援機構)
外国人労働者弁護団
WA.SA.Bi.
東京のお寺を拠点とするベトナム人支援団体。住居を提供する一時保護以外に、食料、日本語教育、在留資格変更、再就職、出産など他分野に渡るサポートを数多く手がけてきました。
新型コロナの影響で仕事がなくなった外国人も多いと思います。そんな場合、どういう在留資格に変更して働き続けることができるのか、全体像をまとめました。
技能実習生やアルバイト留学生を多数指導してきたベトナム人の大先輩が、日本での寮生活や旅行など私生活での主な注意点を紹介します。
職場で多くの外国人従業員を指導してきたベトナム人担当者が、技能実習生やアルバイト留学生が引き起こしがちな職場での問題点を紹介します。