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ハノイの都市鉄道と日本の乗車マナー

ハノイの都市鉄道と日本の乗車マナー10
2021年12月02日

ハノイで待ちに待った都市鉄道が開通しました。ベトナム人が鉄道に不慣れなこともあり、開業当初に混乱が起きましたが、今後の改善に向けて、日本の乗車マナーも参考にしていきたいですね。鉄道が非常に発達している日本の乗車マナーを紹介します。
トップの写真はクオック・フォン撮影〉

路線図〈出典:Hanoimetro.net〉

ハノイ中心部で2021年11月6日、ベトナム初の都市鉄道「カットリン―ハドン線」が開業しました。道路の渋滞緩和を目的として2011年に着工し、当初目標の2015年開通からは大幅に遅れましたが、総工費約18兆ドン(約900億円)をかけて完成しました。高架式で、初乗り運賃は8,000ドン(約40円)。カットリン(Cat Linh)駅とハドン(Ha Dong)駅を結ぶ総延長13.1 kmで、駅は12カ所です。

開業当初の混乱や課題

〈撮影:クオック・タイ〉

ベトナムの都市間を走る古い鉄道に比べ洗練されたデザインで機能もアップグレードされたカットリン―ハドン都市鉄道は、首都ハノイの風景にモダンな風を吹き込みました。映画やインターネットでしか現代の公共交通機関を見たことのなかったIT世代の若者たちにとって、「首都の真ん中で電車に乗る」という夢がついに実現したのです。

多くの若者、特に都市鉄道沿線の学校に通う学生たちは、日本や韓国の映画に出てくるような「電車通学」を自分が体験することに期待をふくらませ、コーヒーを飲みながら会話がはずんでいます。

初乗りを楽しむ家族〈撮影:カオ・ミン・ゴック〉

ただ、多くの住民にとって電車に乗るのは初体験なので、適切な乗り方を身に付けるまでには少し時間がかかりそうです。ハノイの運輸当局によると、この鉄道は大盛況で、開業から3日間で約8万人が乗車しました。そして、混雑に伴ってさまざまなトラブルが起こりました。

「撮影の邪魔(じゃま)をした」とか「ぶつかった」などという理由であちこちでけんかや乱闘が起きました。また、車内から故郷の両親にビデオ電話をかけ大音量で会話する▽人混みに慣れない子どもが泣き出やまない――など、車内はかなりにぎやかだったようです。

駐車場・駐輪場でも問題発生

カットリン駅1階の駐輪場

カットリン駅に設けられた駐車場・駐輪場に関しても問題が起こりました。正規料金は乗用車25,000 VND、オートバイ5,000 VND(約25円)ですが、料金徴収係が勝手に乗用車50,000 VND、オートバイ10,000 VNDを請求する問題も発生しました。また、他の駅にはまだ駐車場・駐輪場がないので、運輸当局は各地区の人民委員会などに働きかけています。

乗車マナーを日本に学ぼう

東京都内の駅のホーム

ベトナム人にとって都市鉄道は新鮮ですが、日本では鉄道が約150年、地下鉄も約100年の歴史があります。主要都市には鉄道網がクモの巣のように張り巡らされています。東京では地下鉄だけで9路線・180駅もあり、多くの人は最寄り駅まで歩いて行きます。したがって、東京の住民の多くは乗用車やオートバイを持たず、電車やバスだけで生活しています。

このため、日本では、電車内では電話通話をしない▽電車内でものを食べない▽電車内にゴミを捨てない▽電車を待つときは整列する――など、乗車マナーが発達しています。それは飛行機やバスでも同じです。ハノイの都市鉄道を使う際にも、こうした日本のマナーは参考になります。それでは、以下に日本の乗車マナーを見ていきましょう。

電車の待ち方と乗り方

列を作って電車を待つ人たち〈JR大阪駅〉

電車の到着を待つ間、日本人はきちんと整列します。2列か4列に並び、列車が到着するとドアの両わきに立って降りる人が通るスペースを作ります。朝夕の通勤・通学ラッシュ時間に主要駅は非常に混雑しますが、乗車・降車をめぐるけんかはありません。

残念ながら、ハノイの都市鉄道の開業直後にはけんかが起きました。皆が乗り慣れていないので仕方がないという側面もありますが、日本の乗車マナーを参考に改善していきたいですね。ちなみに、新宿駅(東京都)には五つの鉄道会社が乗り入れ、1日の利用者数は5社合計で350万人を超えます。それでも混乱が起きないのですから、日本の乗車マナーの発達ぶりが分かります。

バックパックは体の前に

日本の電車内では、多くの人がバックパックを体の前にかけます

日本人は整列して電車の到着を待つことに加え、車内が混雑しているときには、大きなバックパックはたいてい胸にかけます。そうすると、誤って他の乗客にバックパックをぶつけたり、背後を通る人の邪魔になったりすることを防げるからです。

車いすエリアや優先席

日本の電車内には車いすやベビーカーを利用する人のための専用エリアが設けられています。乗り降りも駅員が手伝ってスムーズに行われます。障がい者や妊婦、お年寄りなどを優先する席もあり、通常の席とは異なる色の布が張られています。その席には「優先席」と書かれており、車内がよほどすいていない限り一般の人はあまり座りません。混雑時に優先席と気づかずに座ってしまう若いベトナム人をときどき見かけますが、必要な人に席をゆずるのがルールになっていますので、気をつけましょうね。