技能実習・特定技能
日本のビジネス文化_02:職場に私物を届けない
ベトナムでは、ネットショップで買った商品を職場に届けてもらうのはよくあることですが、日本ではNGです。また、日本人は長期休暇が終わった次の日から「仕事モード全開」の状態に戻ります。私はベトナムで9年間働いた経験があり、3度の日本留学を経て日本で正社員として働いています。ベトナムと日本のビジネス文化の違いをお伝えしていきます。〈Vân Hoàng〉
「オン」「オフ」の切り替え
ハノイで働いていたとき、日系企業はベトナムの会社より祝日が多いのでうらやましいと、ずっと思っていました。2021年10月に東京の会社に入社すると、正月休み以外にも毎月のように3連休がありました。
すごくうれしいのですが、私にとって大変なこともあります。それは仕事とプライベートの「オン」「オフ」を切り替えることです。連休後にいかに早く気分を切り替えられるかが課題ですが、周りの日本人の同僚たちはプロで、連休明けでも朝からしっかり「仕事モード全開」の状態です。
日本では年末年始に約1週間の休みがあり、1月の初出社の日に社長が社員に新年のあいさつを述べます。それが終わった途端、同僚たちは皆、1週間の休暇がうそのように、完全に通常の仕事モードに入っていました。
ベトナムでは「1月は遊びの月だ」という言葉があります。ベトナムの正月休み(旧正月=テト)の期間はもちろん、その前後を含めて約1カ月は遊びモードで過ごすという意味です。連休前はテトの準備や買い物、連休の過ごし方を考えることでそわそわ過ごし、連休後は新年会や初詣、春の旅といったさまざまなイベントで頭がいっぱいです。
それに比べて日本人の「オン」「オフ」の切り替え方には感心させられるものがあり、日本が大きな経済成果をあげてきた背景の一つだと、一緒に働いてみて感じました。
公私の区別もしっかり
このように「仕事の時間」と「プライベートの時間」をしっかり切り替える日本人は、時間以外の点でも公私をしっかり区別します。例えば、私の同僚たちは勤務時間中は仕事に集中し、雑談や家庭の話はほとんどしません。
また、日本では従業員の私物が会社に配達されることもありません。ベトナムでは、ネットショップで買い物する場合、会社に届けてもらう人もたくさんいます。私もそうでした。しかし、日本の会社ではそのような人はいません。私も今は、ネットショッピングで買った商品は週末に自宅で受け取っています。
昼休みは休んではいかが?
このようにしっかり働く日本人ですが、それが行き過ぎるのか、「オフの時間を大事にするのは少しへたかも」と思う場面があります。それは毎日の昼休みです。
日本の会社に入って一番驚いたことは日本人の昼休みの過ごし方です。以前、ハノイの大学で日本語を教えていたとき、同僚の日本人(法律の授業を担当する弁護士)が、「日本ではランチを5分で済ませる人も多い」と話していました。私はそれを聞いて「大げさだ」と思っていました。
しかし、日本の会社で働いてみると、それはまったく誇張ではなかったことが分かりました。当社には、昼休みを短縮する人もいますし、ランチを食べずにずっと仕事をする人もいます。また、ベトナムではあり得ないことですが、会議に出席しながらランチを食べることもあります。
ベトナムでは「天罰ですら食事の時間は避ける」ということわざがあります。食事の時間を大切にしようという意味です。日本の正社員なら、多くの場合、労働契約書に昼休みは1時間と書かれていますね? その時間をどのように過ごすかは自由ですが、自分のための時間をもう少し大切にしたほうが良いのではないかと思うこともあります。
休憩を取った方が仕事の能率向上にもつながると思います。また、会社の人と一緒にゆっくりランチを食べながら、いろいろな話をするのも有意義です。ベトナム人なら、休憩時間に同僚とプライベートな話題も含めて何でもおしゃべりします。それが良い人間関係やお互いの理解につながっています。
まとめ
私は日本の会社に入って日本人の働き方や仕事の文化を学び、見習うべき点が多いと感じています。ベトナムでの働き方とかなり違います。それは文化の違いであり、どちらが優れどちらが劣っていると評価する種類のものではないと思いますが、採り入れることで自分の仕事を改善できるのであれば、それも一つの方法です。
今回は、日本の職場の良い点として「オン・オフの切り替え」と「公私の区別」を紹介し、残念に感じる点として「昼休みの使い方」をお伝えしました。お互いのビジネス文化を理解し、仲良く働いていきたいですね。
人気記事ランキング
-
田んぼのタニシは食べてはいけません 27840 views
-
オンライン無料日本語教室 23154 views
-
日本での「遅刻」は何分遅れから? 18108 views
-
Vol. 60 技能実習で本当はいくら貯金できるの? 15995 views
-
Vol. 42 失踪中の不法就労の様子とは 13059 views
Platinum Sponsor
Bronze Sponsors
- 弁護士法人Global HR Strategy
- エール学園
後援
- 在ベトナム日本国大使館
- 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
- JNTOハノイ事務所
- 関西経済連合会
- 一般社団法人 国際人流振興協会
- 公益社団法人 ベトナム協会
- NPO法人 日越ともいき支援会
協力
関連記事
-
ベトナムの常識・日本の非常識_24:ハグは迷惑 !?
多くのベトナム人が相手の人への親愛の情を示すために行うハグは、日本人にはあまり歓迎されません。日本人にとってのハグの受け止め方▽お辞儀の文化▽丁寧(ていねい)な見送り――など、あいさつに関する日本の文化を見ていきましょう。 ハグはあまり歓迎されません こんな場面を想像してみてください。 あなたは旅行に行き、1週間ホームステイをしました。温かく迎え入れてくれたステイ先の家族と触れ合い、おもてなしにとても感動しました。別れのときが来て、あなたは感謝の気持ちを伝えるため何かしなければ、と思いました。 こんなとき、西洋文化の影響を受けているベトナム人はお世話になった家族にごく普通にハグ(抱擁)をします。日ごろのステイ生活でも、家族と夕食を共にしてワインを傾けたりする際には、肩や腕が触れ合うような距離感が一般的です。 しかし、日本では、たとえ親しくなったとしても、ハグをしたり肩を触れ合わせながら食事をしたりするのはまれです。夫婦や恋人、家族などをのぞき、親愛の情を示すアクションとしてハグはあまり使われないのが日本の文化であり、ハグは場合によっては非常識な態度だと思われてしまいます。 中洲エリア こんな話もあります。 福岡市の中洲エリアにある「ハナホステル福岡」というゲストハウス(安い宿泊施設)の更衣室とトイレの両方に英語の看板があります。 In Japan, we don’t hug. We say Thank you (Arigatou gozaimasu). (日本ではハグはしません。『ありがとうございます』と口で言うだけです。) 外国人客が多いこのホステルでは、受付の女性3人が欧米の男性宿泊客たちからのハグを丁寧にお断りしなければならない場面がよくあるそうです。彼らの行動は世界的には珍しくありませんが、日本では、男性が女性に過度に接触すると、非常識だと思われることが多いのです。 日本人のお辞儀文化 「ハグ」に関する日本人の感じ方については、多くのベトナム人が不思議に思うでしょう。「抱きしめずに、日本人はどのようにお別れを告げるのですか?」と聞きたくなりますね。その答えは「彼らはお辞儀をします」です。日本のお辞儀は角度によって意味も変わってきます。 ベトナム人には、会ったときやお酒を飲んだ後に握手する文化があります。日本人も握手をしますが、それよりも頻繁に行われるのがお辞儀です。 日本人はお辞儀の角度によっては使い方を変えています。例えば次のような感じです。 軽いお辞儀(約15度)=一般的なあいさつ 普通のお辞儀(約30度)=丁寧なあいさつ 深いお辞儀(約45度)=深い感謝や敬意を表現 もっと深いお辞儀(45度以上)=さらに深い感謝や敬意を表現 「感謝」「敬意」以外に「謝罪」の意味でお辞儀をする場合もあります。その場合もお辞儀が深いほど、強い気持ちを込めることになります。 これが日本人のあいさつです。 丁寧(ていねい)な見送り 次に、お別れのあいさつについても見ていきましょう。日本でも、日常生活で友人に別れを告げるときは、手を振って「バイバイ」と言って別れます。細かな動きや言葉は多少異なりますが、基本的には日本もベトナムも同じです。 しかし、仕事の場面などでの別れ方は異なります。ベトナムでは「○○さんさようなら」「お先に失礼します」などと言葉に敬意を込めるだけですが、日本人は言葉に加えてお辞儀をします。地位の高い人には、深くお辞儀をします。また、大事な相手が帰る際は、エレベーターや出口まで見送ってお辞儀をします。見送る人はエレベーターの扉が閉まるまでお辞儀を続けます。 見送られる人が出口まで見送ってもらった場合は、そこでお辞儀をして別れを告げ、少し歩くと振り返ってまたお辞儀をし、さらに、交差点などで相手が見えなくなる前にもう一度振り返ってお辞儀をするといった場合がよくあります。逆に、見送る方は相手が見えなくなるまで出口で待ちます。 「バイバイ、ボス!」と言ってすぐに相手に背を向けて帰るような行動は、場合によっては「礼儀知らず」と思われてしまいます。 日本人は会社の中だけでなく、日常生活でも手厚いお別れをします。誰かの家を訪ねて帰るとき、あなたが見えなくなるまで相手が玄関の外に立って見送ってくれても驚かないでください。 “ありがとう”と“すみません”の文化 かつて『来日2週間で体験した日本の文化』というテーマでライブストリーミング動画を配信していた東京在住の米国人ブロガーは、日本ほど「ありがとう」や「ごめんなさい」という言葉が使われる国には住んだことがない、と冗談を言っていました。「日本人はその人生においてあらゆる状況で感謝と謝罪をする」というのです。 日本人がいつもお礼やお詫びの言葉を発することについては、私も少し違和感があります。例えば、あなたがエレベーターに乗り込み、ドアが閉まる直前に日本人が乗ってきたとします。そのとき、その日本人から「すみません」と頭を下げられることがあります。これは、その人が後から入ってきたためドアが閉まるのが少し遅れたことへのお詫びのようです。しかし、かつて私には彼らが何を謝罪しているのか分かりませんでした。 逆に、日本人から「ベトナム人は『ありがとう』や『すみません』をあまり言わない……」と批判されるかもしれません。しかし、これは日本とベトナムの文化の違いです。日本人にもその点は理解して頂けると幸いです。 日本人は感謝や謝罪を伝える際に礼儀正しい言葉を使いますが、ベトナム人の表現は異なります。例えば、子どもが大人からキャンディーをもらった場合、日本人は「ありがとう」と言いますが、ベトナム人の多くは「いただきます」と言います。また、あなたが誤ってだれかの靴を踏んだとします。日本人は「すみません」と謝罪しますが、ベトナム人はストレートに謝らず「わざとじゃないんです」と言うかもしれません。 感謝やお詫びの表現についてベトナム文化と日本文化では少なからず違いがあります。お互いの文化を理解し、「郷に入っては郷に従え」で、その国や地域の習慣に合わせて円滑なコミュニケーションを心がけたいですね。
-
国際カップルの出会い_part 2
日本人と結婚したベトナム人たち。前回はカップルが日本で出会った4つのケースを紹介しました。今回はベトナムで出会った4つのケースについて紹介します。 日系企業の上司と結婚 チョウさん(1980年代生まれ)はベトナムの外国語大学で日本語を専攻し、2005年に日系企業に就職しました。そして、その会社の日本人上司(男性)にいつも電子メールなどで業務連絡や報告をしていましたが、たまに仕事と関係ない雑談も送信してみました。すると、上司がある日、チョウさんをコーヒーに誘ってくれました。こうして2人は時々社外で会うようになり、交際が始まりました。 上司はベトナム語を話せるので、2人の会話は日本語とベトナム語の両方でした。交際を始めて数カ月後、チョウさんは彼を実家に連れて行きました。ベトナムでは交際相手を実家に招待するのはよくあることで、深い意味はありませんが、日本では、恋人を実家に連れて行くのは主に結婚前提の場合なのだそうです。上司はそのつもりでチョウさんの実家を訪問し、両親とすぐに仲良くなりました。 2人は間もなく婚約し、彼の親もベトナムに来てくれました。そして、出会った翌年の2006年に結婚し、夫のベトナム勤務が終わった2009年に夫婦と子どもの3人で訪日しました。その後、もう1人子どもが生まれ、今は4人で幸せに暮らしています。近所や幼稚園のママ友(日本人)、Facebookを通じてできたベトナム人の友だちなど、日本での友だちも増えました。 短期滞在の同僚と結婚 トゥイさん(ハノイ出身)はベトナムの大学で教員をしていた2000年ごろ、日本の公的なプロジェクトで教員として大学に派遣されてきた日本人男性と同僚として知り合いました。トゥイさんは大学で日本語を勉強し、日本語を話すことができました。 その後、男性は帰国しましたが、2001年に今度はトゥイさんが仕事で日本に行くことになり、半年間の滞在中にその男性がよく会いに来ました。そして、一緒に食事をしたり観光地に遊びに行ったりするうちに交際が始まりました。 トゥイさんは出張を終えてベトナムに帰国しますが、彼も同じ飛行機に乗ってトゥイさんをベトナムまで送りました。そして、一緒にハノイに着いたその夜に、彼はトゥイさんにプロポーズしました。2人は2002年にベトナムで結婚式を挙げ、夫の家族や友だちもベトナムに来て参列してくれました。その数カ月後に日本で披露宴をし、トゥイさんはそれ以来、日本に住んでいます。 トゥイさんの両親はいずれも海外留学経験者で、仕事でも外国人と接する機会が多かったので、2人の結婚に反対しませんでした。結婚後は、2人が育った文化が違うので、お互いの価値観を尊重し合い、意見の違いがある場合はていねいに話し合うようにしています。 トゥイさんにはその後、娘が生まれ、今は3人で暮らしています。娘さんはベトナム語を少し話すことができますが、話す機会が少ないので、トゥイさんは娘さんと一緒にベトナム人の友だちと会ったり一緒にベトナムに帰省したりして、ベトナム語と触れる時間を増やすように工夫しています。娘さんもチャンスがあれば積極的にベトナム語を話すようにがんばっています。 国際結婚した親友の義弟と結婚 バオ・ギさん(1977年生まれ、バーリア市出身)の親友は日本に留学して日本人男性と知り合い、結婚しました。その後、2人はベトナムで会社を設立し、夫のいとこ(親友の義弟)もその会社を手伝うためにベトナムに来ました。バオ・ギさんは親友に会うためによくその会社に行っていたので、親友の義弟とも知り合いになりました(2010年)。 しかし、彼はベトナム語がわからず1人でどこにも行けないので、親友夫婦に頼まれてバオ・ギさんが彼の通訳兼案内役としてあちこちに同行するようになりました。例えば、週末に彼がバイクで出かけるときや会社の社員旅行に参加するときなど、いつも彼女がサポートしました。バオ・ギさんは大学で日本の政治・経済や日本語を学び、日本語も話せたからです。 やがて2人で食事をしたり遊びに行ったりする機会が増え、互いにひかれ合って交際が始まりました。訪越1年後の2011年7月、彼は会社を辞めて日本に帰りましたが、2人は毎日Skypeでやり取りをし、交際を続けました。そして、彼は同年11月、バオ・ギさんに会うためにベトナムに来て、プロポーズ。バオ・ギさんはそれを受け入れました。 バオ・ギさんの両親は「日本語ができても、親せきがいない海外で暮らすのは大変だ」などと強く反対しました。また、長年勤めた会社を辞めることにも抵抗がありました。しかし、バオ・ギさんはさまざまなハードルを乗り越えて彼と結婚し、2012年8月に訪日しました。バオ・ギさんは翌年には日本で就職し、今もその会社で働いています。そして、今は夫と5歳の娘と3人で幸せに暮らしています。 日本語学校の級友の紹介 フオンさん (1972年生まれ、ハノイ出身)はハノイで就職後、夜間の日本語教室に通いました。2000年ごろ、その教室の同級生が勤める日系企業の日本人数人と仲良くなり、一緒に食事をしたり旅行に行ったりするようになりました。 グループには、ODA関係の長期プロジェクトの担当としてベトナムに来ている日本人男性もいました。フオンさんはこの男性と結婚することになりますが、当初は別の人と付き合っていたため、交際に至りませんでした。しかし、グループでの交流が重なるうち、仲間たちから「2人はなかなかお似合いですね」などと冗談を言われ、互いにメールで連絡し合うようになりました。そして、何度もメールでやり取りをするうち、交際が始まりました。 彼は長期出張が終わってからも出張や旅行で何度かベトナムにやって来てフオンさんと会いました。そして、2004年ごろに転職し、その会社のホーチミン駐在になりました。海外で経営を体験したかったのと、恋人のフオンさんのいるベトナムで生活したかったからです。 2人はホーチミンとハノイで遠距離恋愛をします。そして、彼は2005年に別の大手日系企業に転職してハノイに戻り、この年に2人は結婚しました。その後、フオンさんはハノイ貿易大学のMBAコースに2008年まで3年間通いました。夫は2007年に先に帰国し、フオンさんもMBA修了後に日本で合流。2009年に息子が生まれました。 フオンさんは日本語があまりできないので夫婦間の会話は英語でしたが、息子が3歳のころ、言葉が遅れていることに気付き、家族間ではなるべく日本語で話すようにしました。日本に来てからは専業主婦で、今は地域のボランティア日本語教室に通い、園芸や手芸などの趣味も楽しんでいます。 まとめ 2回に渡って計8組の越日カップルの出会いを紹介しました。簡単にまとめましょう。 ◆ 出会った場所・場面(日本編) 【技能実習先の職場】 技能実習先の同僚と結婚。実習生の中で日本語が一番話せたのがきっかけになった。 【婚活サイト】 日本の婚活サイトで知り合った。学歴が高く性格も良さそうな人を選んで交際を始めた。 【日本語教室】 ボランティア日本語教室の生徒と教師として出会った。 【留学先の大学院】 日本の大学院の同級生と結婚。ベトナムに帰国後は越日で遠距離恋愛。 ◆ 出会った場所・場面(ベトナム編) 【日系企業の職場】 勤務先の上司と結婚。仕事以外の話題もメールすると、相手がコーヒーに誘ってくれた。 【勤務先の大学】 プロジェクトで同じ大学に派遣された同僚教師と結婚。相手が帰国後、自分が日本に長期出張し、交際が始まる。 【親友の紹介】 親友が先に日本人男性と結婚。その男性の弟のサポート役を頼まれ、交際に発展。 【日本語教室の級友の紹介】 日本語教室の級友から日本人駐在員を紹介され、遊び仲間に。その後、交際。 さまざまな出会いを紹介しましたが、いかがでしたか? 運命はわかりません。あなたも留学や技能実習、日本語学習がきっかけで、いつか日本人パートナーと出会うかも知れませんね。
-
日本での「遅刻」は何分遅れから?
遅刻は何分から? (村田奈緒=日本語教師、元ハノイ国家大学講師、元社長秘書) 昨年、ハノイの大学で学生と卒業生に対して日本語で「ビジネスマナー講座」を行いました。教室の後ろにはオブザーバーの日本人駐在員や日本語教師も座り、教室の前はベトナム人、後ろは日本人となっていました。 「皆さんは会社員です。日本で働いています。今日はお客様と会います。遅刻はいいですか、悪いですか?」 受講生たちは「そんなのわかってるよ」と言わんばかりの顔で「遅刻はダメです」と口々に言います。そこで、「午前10時のアポイントメントです。何時何分から遅刻ですか?」と、最前列の受講生にあててみました。 「遅刻は10時20分からです!」 自信満々のこの答えに、後ろの日本人たちからざわめきが起こりました。 その空気を感じとった別の受講生が何か言いたそうだったので、「どう思いますか?」とあててみました。 「遅刻は10時15分からです!」 日本人たちのざわめきはさらに大きくなり、絶句している人もいます。受講生たちは後ろを振り返り、不安そうな表情になっています。そこで、私は正解を教えました。 「遅刻は10時1秒からです」 すると、今度は教室の前半分(ベトナム人受講生たち)が大騒ぎになりました。「えっ!」「1秒過ぎたらもう遅刻!?」。答えがあまりにも意外だったのか、ざわめきがやみません。 日本社会では、約束の時刻を1秒でも過ぎると遅刻とみなされます。15分も20分も遅れると、信頼回復はかなり難しくなります。このような日本の“常識”を良いと思うかどうかは別にして、日本に行く前に、あるいは日本で働く前に、時間に関する感覚の違いを知っておくことは大切です。 逆に、ベトナム人と一緒に働く日本人にとってもこの違いを理解しておくことは重要です。私は「遅刻をしないように指導しても、改善しない」と日本人駐在員から相談を受けることがあります。そういうときは、「具体的な数字を示すと分かりやすいですよ。『10時1秒から遅刻です。遅刻しないでください』と言ってみてください」と助言しています。 Đúng giờ “時間通り” (Bùi Bình Minh=人材紹介会社役員) 私は日本に約30年間住み、日本企業で5年間役員を務めてきました。日本社会では“時間通り”が当たり前。数分遅れならまだ許容されますが、15分遅れると信頼回復は難しく、30分ともなると“論外”です。 外国人にとって、日本での仕事のスケジュールの細かさには驚くべきものがあります。また、日本に来たばかりの人にとって、公共交通機関の時間の正確さは正に“奇跡”のようだと思うでしょう。時間を守らない…それは、日本では“約束を守れない”とみなされてしまいます。相手の時間を無駄にするような人間は信頼できず、相手を尊重できない人格だとみなされてしまうのです。特に、採用面接や顧客との最初の面談など重要な機会で遅刻をしてしまうと、その後の結果に深刻な影響をもたらしかねません。 日本の常識として、仕事での“時間厳守”とは時間通りに約束の場所に着くことではなく、“少なくとも10分前に到着すべきこと”と理解した方がよいでしょう。その“10分前到着”を確実なものにするために、待ち合わせ場所までの電車などの時刻を調べた上で、道中で何か問題が起きる場合も想定し、余裕をもったスケジュールを組んでおきたいものです。 しかし、それでも遅れそうになった場合、どのように対処すればよいでしょうか。遅刻の可能性が高くなった時点で、まずそのことを相手にできるだけ早く伝えましょう。そのときに、何時に着きそうかも伝えます。到着時間がすぐにはわからなくても、時間のメドが立ち次第、必ず相手に連絡を入れてください。そうすることで、相手は待ち時間を有効に使うことができます。 社内の会議でも同じです。遅れる場合は、遅れることとその理由を早めに関係者に伝えてください。ただし、社外の人との会合の場合、遅刻の影響は会社全体の信用に関わりますので、相手が受け入れやすい理由や説明の手立てを考える必要があります。 当たり前ですが、そのような状況に陥らないことが第一です。しっかりした計画と早めの出発を心がけましょう。約束より早く到着すれば、会議に最適な状態で臨めますし、相手にも好印象を持たれます。ただし、先方への到着が早過ぎた場合、約束の時刻の10分前ぐらいまでは外で待つ方が賢明です。日本人は予定をたくさん入れる傾向があるので、早過ぎると、相手の準備が整っていない場合があるからです。 ただ、興味深いことに、日本人は“始まり”の時間には厳格なのに、“終わり”の時間には何かと寛容です。会議も終わりなく続くことも多々ありますし、終わりのない宴会も珍しくありません。開始と同様、終了にも“時間通り”が必要だと私は思うのですが、そもそも終了時刻を決めずに打ち合わせに入ることもよくあります。予定通りの時刻に会合を終わらせたい場合は、最初に自分の都合を伝えましょう。そうすれば、相手もそれを理解し、終了時刻を意識してくれます。
-
センパイ座談会_03 日本のおもてなし
相手を見てから「いらっしゃいませ」、食べるペースに合わせて配膳――日本での勤務経験が豊富なセンパイが日本の接客について話します。日本で受けたカルチャーショックや“びっくりエピソード”を先輩たちが振り返る『センパイ座談会』。今回のテーマは「日本のおもてなし(心のこもった接客)」です。 今回のセンパイたち 左からリンさん、ヴさん、ズンさん、LAさん Ngoc Linh (ゴック・リン)さん=2016年来日。神奈川県在住。私立大学4年。 Vu Ha(ヴ・ハー)さん=2017年来日。大阪府在住。大阪大学大学院修士課程2年。 Dung (ズン)さん=2008年来日。留学を経て東京で会社経営。 司会=Lan Anh(ランアイン、LA)さん=KOKORO編集部。日本在住30年以上。 本物の「おもてなし」 ――(司会:LA)「おもてなし」という言葉は「心のこもった接客」を意味します。皆さんは日本で「おもてなし」を体験しましたか? ゴック・リン 私は留学中にさまざまなアルバイトをしました。コンビニ、カフェ(秋葉原)、ファミレス、スーパー、焼き鳥店(渋谷)、ステーキ店(新宿)などです。それぞれの店にそれぞれの「おもてなし」があり、日本のサービスの真髄をたくさん知ることができました。 中でも渋谷の焼き鳥店では5年ほど働いています。ここにはさまざまな年齢層のお客様が来られ、コロナ以前は外国人客も多くいました。この店で私は多くのことを学びました。 例えば、お客様が来店すると、従業員全員がお客様を見て「いらっしゃいませ」と言います。皿を洗ったり、野菜を手に取ったり、飲み物を作ったり――といった作業をすべて止め、お客様を見てあいさつするように教わりました。他にもたくさんの店があるのに私たちの店を選んでくれたことに対して、お客さまに感謝をこめてあいさつをするのです。 もし、振り返らずに声だけで「いらっしゃいませ」と口にしても、そのようなあいさつには意味がなく、気持ちがこもっていません。また、お客様が帰られる際には、遠くから声をかけるのではなく、出口までお見送りをしています。 この店であるお客様から聞いたことがあります。スタッフが温かく迎えてくれると、次回も来たくなるそうです。食事を出すのが遅くなったりした場合でも、最初に誠意のこもったあいさつで好印象を持って頂ければ、お客様は大らかに受け止めてくださるようです。 また、人気店ではトイレが常にきれいに掃除されている場合が多く、耳掃除用の綿棒やつまようじ、うがい薬などをトイレに置いている場合もあります。中には、女性用トイレに生理用ナプキンを常備している店さえあります。 ――(LA)素晴らしいお店で働いてきたのですね。そのようなあいさつやサービスを受けると、確かに気分が良いですね。「顧客の気持ちを考え、誠意をこめて細やかに接客する」。これこそが「おもてなし」の精神ですね。 ゴック・リン はい、この店では「常にお客様の側に立って考える」ということを教わりました。ほかに、お客様が食べるペースも観察し、そのペースに合わせて料理を出すように心がけています。前の料理がたくさん残っているのに新しい料理を次々に持っていくと、お客様が新しい料理に手を付けるころには冷めてしまいます。 ズン 日本の「おもてなし」がこのレベルに到達するまでには長年の努力の積み重ねがあったと思います。ベトナムが日本に追いつくには少し時間がかかるでしょうが、ぜひ見習っていきたいですね。 ところで、私の会社はスーパーのレジや荷出しを請け負っており、多国籍の外国人50人以上に働いてもらっています。彼らには、お客様を見かけたら「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」としっかり言うように、くり返し指導しています。 スーパーの接客に課題 ゴック・リン 私はある大手スーパーマーケットでもバイトをしています。しかし、店が大きいほど、スタッフのトレーニングが行き届かないように感じます。私と同年代の日本人の同僚たちがいますが、彼女たちは顧客にあまり関心を持たず、ただ作業をこなしているだけです。お客様に親切にしようという「おもてなし」の心は感じられず、ただお金を稼ぐためだけに仕事をしているように見えます。 年配の従業員はもっと顧客の立場に立って仕事をしています。私も顧客によく注意を払い、例えば、年配のお客様がレジに来られたら、会計後に買い物かごを代わりに台まで持って行きます。しかし、若い同僚たちは顧客の状況には無関心で、ただレジだけを打っています。 また、小さな子どもさんが親と一緒に来た場合、キャラクター付きのキャンディーなどをよく買ってもらいます。子どもたちはそれを手に持って早く食べたそうにしているので、私は最初にキャンディーの会計を済ませて子どもさんに渡し、その後で残りの会計をします。この辺りも、若い同僚には気が回りません。 この店では、顧客への気配りについてほとんど教育がなされていません。店がスタッフに求めるのは、間違わずにレジを打ち、お金を失わないようにということが中心で、顧客の気持ちには無関心のように感じます。 ゆっくり選べない ――(LA)ヴ・ハーさんは日本のサービスについて何か思うことがありますか? ヴ・ハー 私はある日、靴屋に行きました。すると、店員がすぐに私に駆け寄り、「お客様の靴のサイズはいくつですか?探してまいります」と話しかけました。私は「入ったばかりなので、まずはゆっくり見たいです」と答えました。スタッフは「分かりました」と答えたものの、その後も私を注視しているように感じ、商品をゆっくり選んだり買ったりする気持ちになれませんでした。 ――(LA)小さな店や高級店に行くと、店員さんがぴったりくっつくケースもありますね。そのようなサービスを喜ぶ客もいるのかも知れませんが、通常はきゅうくつに感じますね。 電車・バスの案内 ――(LA)交通機関のサービスについてはいかがですか? ゴック・リン 2021年10月に東京と周辺で強い地震が発生し、多くの列車に運休や遅れが出ました。私が地震の翌日に電車を利用した際にも、列車の遅れはまだ続いていましたが、駅では最新の運行状況に関する案内が常にアナウンスされ、遅れを謝罪していました。行き届いた案内に感心しました。 ヴ・ハー ベトナムでは乗降のためにバスが完全に止まることはありません。バス停でもぎりぎりまで減速するだけなので、あわてて乗り降りしなければなりません。 ズン 日本の電車やバスには優先席がありますね。車掌も「お年寄りやお体の不自由なお客様、妊娠中や小さなお子様をお連れのお客様がいらっしゃいましたら、お席をお譲りください」と車内にアナウンスしており、必要な人を差し置いて優先席に座る乗客はほとんどいません。ベトナムのバスでも「子どもや老人に席を譲りましょう」とアナウンスしますが、優先席は見かけないですね。 ヴ・ハー 大都市以外の駅や車内では多言語での表示やアナウンスが少ないため、日本語初心者にとっては地方都市での電車・バスの利用は難しいですね。大都市以外でも多言語の案内が増えることを願います。
人気記事ランキング
-
田んぼのタニシは食べてはいけません 27840 views
-
オンライン無料日本語教室 23154 views
-
日本での「遅刻」は何分遅れから? 18108 views
-
Vol. 60 技能実習で本当はいくら貯金できるの? 15995 views
-
Vol. 42 失踪中の不法就労の様子とは 13059 views
Platinum Sponsor
Bronze Sponsors
- 弁護士法人Global HR Strategy
- エール学園
後援
- 在ベトナム日本国大使館
- 国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
- JNTOハノイ事務所
- 関西経済連合会
- 一般社団法人 国際人流振興協会
- 公益社団法人 ベトナム協会
- NPO法人 日越ともいき支援会