体験談(技能)

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By KOKORO(毎日新聞社+VAIJ主催、在ベトナム日本国大使館など後援)

今回の先輩

グェン・ティ・ホアイ・トウーさん
  • 2010年 高校卒業〈ホーチミン〉
  • 2010年 専門学校入学
  • 2013年 会社勤務、夜はアルバイト
  • 2017年 送出機関〈ホーチミン〉
  • 2018年 水産加工の技能実習〈北海道〉
  • 2021年 技能実習修了、帰国

〈1990年生まれ、ホーチミン市出身〉

良心的な送出機関を選んだため、ベトナム政府が決めた安い費用で日本に行くことができたトゥーさん。訪日前に質の高い日本語授業を受け、自分でも努力したので、技能実習の職場でたくさんの日本人のおばさんたちと仲良くなりました。また、3年間で十分な送金もできました。

「日本に行けてお金も貯まる」

私は専門学校を卒業後、ホーチミンの会社で事務仕事をしていました(月給7,000,000 VND)。日本には以前から興味があり、行ってみたいとは思っていましたが、お金がありませんでした。

そんなとき、恋人が先に日本に技能実習に行き、自己資金がなくても借金で日本に行き、借金を返した上でさらに貯金もできると知りました。そのため、私も技能実習に応募することにしました。

送出機関への支払いと3年間の送金額

自転車で美しい海岸へ。根室では、お金をあまり使わずに生活を楽しめました。

私はホーチミンの送出機関「エスハイ」を選び、約50,000,000 VND(約25万円)の借金だけで日本に行くことができました。先に日本に行った恋人がインターネットで調べ、「費用が安い」「日本語教育の質も高い」という評価が多いエスハイを見つけ、私に紹介してくれたからです。

訪日後も、根室ではあまりお金を使う場所がないので、少し多めに貯金し、母に送ることができました。

  • ・エスハイで勉強を始めて4カ月目に最初の採用面接を受け、合格
  • ・エスハイに支払った費用は全部で約90,000,000 VND(約46万円)。教育費も含む。自宅から通ったので寮費は含まない。
  • ・技能実習の3年間で母への送金は約300万円(約585,000,000 VND)

【編集部からのアドバイス】

エスハイはベトナム政府の費用規定を守っている数少ない送出機関の一つで、日本語教育にも定評があります。

external link 技能実習の費用と注意点

external link 送出機関の探し方・選び方

私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=19,505 VND(2022年3月12日現在)

収入: 130,000円
手取り給与

¥130,000

*税金、社会保険、寮費、電気・水道・ガス代を引いたあとの金額(このうち寮費は20,000円で、ここに電気・ガス・水道代・Wi-Fi代も含まれる)
支出: 40,000円
食材費

¥25,000

外食費・雑費

¥15,000

差額: 90,000円

*ほとんどを母に送金

水産加工の実習内容

私たちの工場で作った魚の加工食品〈根室市のAEONで2021年〉

私は2018年から3年間、北海道根室市で技能実習をしました。職場は魚を加工してさまざまな食品を作る工場でした。北海道はとても寒いうえ、工場では魚の鮮度を保つため暖房をあまり使いません。夏は涼しいですが、冬は寒い職場でした。仕事内容は次の通りです。

サンマやイワシがベルトコンベアで流れてくるので、6人の技能実習生が次のような作業を分担。

  • ・発砲スチロールの箱に氷と水を入れる
  • ・箱の中に魚を入れ、水や氷と混ぜる
  • ・箱にふたをする
  • ・機械を使って箱をしばる

1年ごとに担当レーンが変わるので、次のような仕事もしました。

  • ・タラの頭を取り、はらわたもかき出し、機械で3枚に分ける
  • ・マスなどの魚に味付けをする
  • ・干物を箱に詰める

職場のおばさんたちと友だちに

根室市内のお気に入りのレストランで

日本で一番うれしかったことは、職場のおばさんたちと友だちになれたことです。おばさんたちは私たち技能実習生に次のようなことをしてくれました。

  • ・仕事も日本語も親切に教えてくれた。
  • ・休み時間に私たちとたくさん話をしてくれた。
  • ・私たちにおかずやチョコレート、果物、服など、いろいろなものをくれた。

おばさんの1人とは休日に一緒に食事に行くこともありました。また、彼女たちから日本の文化についても教えてもらいました。例えば、日本人はプレゼントをもらったら、そのときに「ありがとうございます」と言うのはもちろん、翌日相手に会ったときに「昨日はありがとうございました」ともう一度お礼を言います。

オンライン無料日本語教室

私を訪ねて来てくれたオンライン教室の石橋先生(右)。後ろは私たちの寮。

私は寮で毎日30分以上勉強し、オンライン無料日本語教室“Lotus Works”にも参加しました。日本人の先生が毎週1、2回、ビデオ電話で日本語能力試験(JLPT)に向けて勉強を教えてくれます。また、宿題も出してくれるので、毎日勉強するくせがつきます。

external link オンライン無料日本語教室

訪日前の勉強とLotus Worksの指導のおかげで、私は来日1年後にJLPT・N3に合格しました。試験会場は根室から400 km以上離れた札幌です。組合(管理団体)が大型バス2台をチャーターし、他社の実習生たちと一緒に札幌に行きました。行きは深夜に出て翌朝に着き、帰りは18:00に出て朝2:00に根室に戻りました。その後、3時間だけ眠って仕事に行きました。その後は、新型コロナの関係で、私たちが都会に行くのを会社が嫌がり、N2の試験は受けることができずに帰国しました。

会社の実習生仲間とはとても仲が良く、休日には一緒にパーティーやゲームを楽しみました。また、自転車で一緒に買い物や食事、公園などに行くこともよくありました。

「最果ての町」にも多数のベトナム人

仲間と寮でパーティー

根室は北海道の東のはしにあり、日本では「最果ての町」とも呼ばれています。しかし、そんな根室にもたくさんのベトナム人が働いています。日本では若い人が減っているので、外国人を雇う企業が増えています。私たちの会社にも23人(男3人、女20人)のベトナム人がいました。日本に来たばかりのころは、町でベトナム人と会うことはめったにありませんでしたが、滞在中の約3年間で急増し、休みの日にAEONに行くと、必ずベトナム人を見かけるようになりました。

会社の実習生仲間とはとても仲が良く、休日には一緒にパーティーやゲームを楽しみました。また、自転車で一緒に買い物や食事、公園などに行くこともよくありました。

根室でハッピーライフ

寮の仲間と回転寿司

日本滞在中に東京に遊びに行ったこともあります。ディズニーランドに行き、たくさん食べて買い物もして、楽しく過ごしました。ただし、何をするにもお金がかかりました。その点、根室は、お店は少ないですが、お金はあまりかかりません(貯金ができます)。

また、お店の少ない根室ですが、会社の人に聞いたりグーグルマップで調べたりしてお店を開拓し、食べ歩きを楽しむことができました。

〈私たちの北海道生活〉

  • ・安いバスツアーで北海道の名所を観光
  • ・月に1回のぜいたくは回転寿司(安い寿司店)。給料日直後に数人で食べに行く。
  • ・会社が実習生に自転車を貸すが、冬(11月~4月)は路面で雪が凍って危ないので自転車を返す。

左:雪の日の根室 

右:寮の前の公園

まとめ

蹴上げインクライン

新型コロナの感染拡大で、3年間の技能実習を終えても、帰国困難を理由とする「特定活動」という在留資格を取って、引き続き半年や1年働く人も多かったのですが、私は一人暮らしの母のもとに早く帰りたかったので早めに帰国しました。そして、帰国後の2022年1月に長年交際した恋人と結婚しました。

私は少ない借金で日本に行き、日本でも安い費用で暮らせたので、3年間で平均以上の貯金(送金)ができました。そのうえ、職場の日本人は親切でしたし、寮の仲間とも楽しく過ごすことができました。私はこのようなよい技能実習ができて幸せでした。

今回の先輩

グェン・ティ・ホアイ・トウーさん
  • 2010年高校卒業〈ホーチミン〉
  • 2010年専門学校入学
  • 2013年 会社勤務、夜はアルバイト
  • 2017年 送出機関〈ホーチミン〉
  • 2018年 水産加工の技能実習〈北海道〉
  • 2021年 技能実習修了、帰国

〈1990年生まれ、ホーチミン市出身〉

良心的な送出機関を選んだため、ベトナム政府が決めた安い費用で日本に行くことができたトゥーさん。訪日前に質の高い日本語授業を受け、自分でも努力したので、技能実習の職場でたくさんの日本人のおばさんたちと仲良くなりました。また、3年間で十分な送金もできました。

「日本に行けてお金も貯まる」

私は専門学校を卒業後、ホーチミンの会社で事務仕事をしていました(月給7,000,000 VND)。日本には以前から興味があり、行ってみたいとは思っていましたが、お金がありませんでした。

そんなとき、恋人が先に日本に技能実習に行き、自己資金がなくても借金で日本に行き、借金を返した上でさらに貯金もできると知りました。そのため、私も技能実習に応募することにしました。

送出機関への支払いと3年間の送金額

私はホーチミンの送出機関「エスハイ」を選び、約50,000,000 VND(約25万円)の借金だけで日本に行くことができました。先に日本に行った恋人がインターネットで調べ、「費用が安い」「日本語教育の質も高い」という評価が多いエスハイを見つけ、私に紹介してくれたからです。

訪日後も、根室ではあまりお金を使う場所がないので、少し多めに貯金し、母に送ることができました。

  • ・エスハイで勉強を始めて4カ月目に最初の採用面接を受け、合格
  • ・エスハイに支払った費用は全部で約90,000,000 VND(約46万円)。教育費も含む。自宅から通ったので寮費は含まない。
  • ・技能実習の3年間で母への送金は約300万円(約585,000,000 VND)

自転車で美しい海岸へ。根室では、お金をあまり使わずに生活を楽しめました。

編集部からのアドバイス

エスハイはベトナム政府の費用規定を守っている数少ない送出機関の一つで、日本語教育にも定評があります。

external link 技能実習の費用と注意点

external link 送出機関の探し方・選び方

私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=19,505 VND(2022年3月12日現在)

収入: 130,000円
手取り給与

¥130,000

*税金、社会保険、寮費、電気・水道・ガス代を引いたあとの金額(このうち寮費は20,000円で、ここに電気・ガス・水道代・Wi-Fi代も含まれる)
支出: 40,000円
食材費

¥25,000

外食費・雑費

¥15,000

差額: 90,000円

*ほとんどを母に送金

水産加工の実習内容

私は2018年から3年間、北海道根室市で技能実習をしました。職場は魚を加工してさまざまな食品を作る工場でした。北海道はとても寒いうえ、工場では魚の鮮度を保つため暖房をあまり使いません。夏は涼しいですが、冬は寒い職場でした。仕事内容は次の通りです。

サンマやイワシがベルトコンベアで流れてくるので、6人の技能実習生が次のような作業を分担。

  • ・発砲スチロールの箱に氷と水を入れる
  • ・箱の中に魚を入れ、水や氷と混ぜる
  • ・箱にふたをする
  • ・機械を使って箱をしばる

1年ごとに担当レーンが変わるので、次のような仕事もしました。

  • ・タラの頭を取り、はらわたもかき出し、機械で3枚に分ける
  • ・マスなどの魚に味付けをする
  • ・干物を箱に詰める

私たちの工場で作った魚の加工食品〈根室市のAEONで2021年〉

職場のおばさんたちと友だちに

日本で一番うれしかったことは、職場のおばさんたちと友だちになれたことです。おばさんたちは私たち技能実習生に次のようなことをしてくれました。

  • ・仕事も日本語も親切に教えてくれた。
  • ・休み時間に私たちとたくさん話をしてくれた。
  • ・私たちにおかずやチョコレート、果物、服など、いろいろなものをくれた。

おばさんの1人とは休日に一緒に食事に行くこともありました。また、彼女たちから日本の文化についても教えてもらいました。例えば、日本人はプレゼントをもらったら、そのときに「ありがとうございます」と言うのはもちろん、翌日相手に会ったときに「昨日はありがとうございました」ともう一度お礼を言います。

根室市内のお気に入りのレストランで

オンライン無料日本語教室

私は寮で毎日30分以上勉強し、オンライン無料日本語教室“Lotus Works”にも参加しました。日本人の先生が毎週1、2回、ビデオ電話で日本語能力試験(JLPT)に向けて勉強を教えてくれます。また、宿題も出してくれるので、毎日勉強するくせがつきます。

external link オンライン無料日本語教室

訪日前の勉強とLotus Worksの指導のおかげで、私は来日1年後にJLPT・N3に合格しました。試験会場は根室から400 km以上離れた札幌です。組合(管理団体)が大型バス2台をチャーターし、他社の実習生たちと一緒に札幌に行きました。行きは深夜に出て翌朝に着き、帰りは18:00に出て朝2:00に根室に戻りました。その後、3時間だけ眠って仕事に行きました。その後は、新型コロナの関係で、私たちが都会に行くのを会社が嫌がり、N2の試験は受けることができずに帰国しました。

会社の実習生仲間とはとても仲が良く、休日には一緒にパーティーやゲームを楽しみました。また、自転車で一緒に買い物や食事、公園などに行くこともよくありました。

私を訪ねて来てくれたオンライン教室の石橋先生(右)。後ろは私たちの寮。

「最果ての町」にも多数のベトナム人

根室は北海道の東のはしにあり、日本では「最果ての町」とも呼ばれています。しかし、そんな根室にもたくさんのベトナム人が働いています。日本では若い人が減っているので、外国人を雇う企業が増えています。私たちの会社にも23人(男3人、女20人)のベトナム人がいました。日本に来たばかりのころは、町でベトナム人と会うことはめったにありませんでしたが、滞在中の約3年間で急増し、休みの日にAEONに行くと、必ずベトナム人を見かけるようになりました。

会社の実習生仲間とはとても仲が良く、休日には一緒にパーティーやゲームを楽しみました。また、自転車で一緒に買い物や食事、公園などに行くこともよくありました。

仲間と寮でパーティー

根室でハッピーライフ

日本滞在中に東京に遊びに行ったこともあります。ディズニーランドに行き、たくさん食べて買い物もして、楽しく過ごしました。ただし、何をするにもお金がかかりました。その点、根室は、お店は少ないですが、お金はあまりかかりません(貯金ができます)。

また、お店の少ない根室ですが、会社の人に聞いたりグーグルマップで調べたりしてお店を開拓し、食べ歩きを楽しむことができました。

〈私たちの北海道生活〉

  • ・安いバスツアーで北海道の名所を観光
  • ・月に1回のぜいたくは回転寿司(安い寿司店)。給料日直後に数人で食べに行く。
  • ・会社が実習生に自転車を貸すが、冬(11月~4月)は路面で雪が凍って危ないので自転車を返す。

寮の仲間と回転寿司

雪の日の根室 

寮の前の公園

まとめ

新型コロナの感染拡大で、3年間の技能実習を終えても、帰国困難を理由とする「特定活動」という在留資格を取って、引き続き半年や1年働く人も多かったのですが、私は一人暮らしの母のもとに早く帰りたかったので早めに帰国しました。そして、帰国後の2022年1月に長年交際した恋人と結婚しました。

私は少ない借金で日本に行き、日本でも安い費用で暮らせたので、3年間で平均以上の貯金(送金)ができました。そのうえ、職場の日本人は親切でしたし、寮の仲間とも楽しく過ごすことができました。私はこのようなよい技能実習ができて幸せでした。