留学・就活
留学生5人のアルバイト体験_飲食店編
せっかく日本に留学したので、日本語の会話力をアップしたいですよね。それでは、どこでどのようなアルバイトをするのがよいでしょうか? 先輩留学生たちの経験を参考にして、自分に合うアルバイト先を探しましょう!今回は飲食店でのアルバイト体験を5人分紹介します。
アルバイトの一番の目的はもちろん「お金」ですが、働きながら経験を積むことができるのもアルバイトの良いところです。今回は、飲食店でのアルバイト経験があるベトナム人5人にインタビューしました。飲食店でのアルバイトにはどのような利点があり、どのような大変さがあるのでしょうか?
アルバイトの探し方
留学生が日本でアルバイトを探すには次のような方法があります。
・学校からの紹介
・先輩や友人からの紹介
・求人情報サイト
・求人情報誌
・店のはり紙
・ハローワーク
・留学生のSNSグループ
くわしい説明はこの記事をお読みください。
今回インタビューした5人のうち4人は先輩や友達の紹介でアルバイトを見つけていました。そして、残り1人は「バイトル」という求人情報サイトで牛丼店のアルバイトを見つけました。
WA. SA. Bi. でも留学生向けのアルバイトを紹介しています。母国語でも相談できますので、こちらにメールを送ってください。
飲食店での仕事の内容
日本には飲食店が多いので、飲食店のアルバイトは一番見つけやすいと言われています。飲食店にはキッチンの仕事とホールの仕事があります。日本語をあまり話せない人はキッチンの仕事しかできませんが、少し話せる場合はホールの仕事を探しましょう。日本語を話す機会が増えるからです。
ホールの仕事はおおむね次のような内容です。
① 注文を聞く
② 注文をキッチンに伝える
③ ドリンクを作って提供する
④ (居酒屋の場合)付き出し(お通し)を提供する
⑤ 料理を運ぶ
⑥ 空いた皿を下げる
⑦ レジをする
⑧ 掃除をする
牛丼店でのアルバイト
それでは、留学生のアルバイト体験を紹介していきます。まず、半年前から京都府の牛丼店で働いている大学生、バオさんに聞きました。
このアルバイトの良いところ
やさしいお客さん:深夜勤務のとき、「仕事をがんばってね」と声をかけてくれるお客さんがいます。
このアルバイトの難しいところ
さまざまなお客さん:牛丼店は様々な人が気軽に入れるお店です。話せない人や目の見えない人が来ることもあります。そういう方々にも心地よく利用していただけるように臨機応変に対応する必要があります。
1人勤務:お客さんの少ない時間帯には、1人だけで勤務をすることがあります。これはとても大変で、仕事をやめようと思ったこともありますが、まだ勉強したいことがたくさんあるので、がんばって続けています。
日本語を話す場面
ホールの担当ですが、当店では仕事中にお客さんと“おしゃべり”することはできず、ほとんどマニュアル通りに話すだけです。しかし、店長や先輩と仕事のやり取りで話す機会はたくさんあります。
敬語:この店で働いて「敬語」をたくさん覚えることができました。お客さんには当然、敬語を使わなければなりません。スタッフは、店が用意した動画を見て敬語の勉強をします。また、日本人の先輩や同期が接客するときの言葉を聞いて、まねをしています。例えば、次のような言葉です。
・少々お待ちください。
・(ご注文を)おうかがい致します。
・(注文と違う順番で商品を提供する場合)順番前後させていただきます。
・申し訳ございません。
・(代金を預かる際に)ちょうどお預かりします。
さらに、同僚のLINEグループへの書き込みを読んで、話し言葉や関西弁も勉強できました。
しゃぶしゃぶ店でのアルバイト
次に大学生のタインさんの経験です。彼女は大阪府のしゃぶしゃぶ店で1年半近く働いています。
このアルバイトの良いところ
時給アップ:この店では勤務歴や仕事ぶりに応じて時給を上げてもらえます。私の時給は最初は1000円でしたが、しばらくして1040円になり、今は1070円です。
交通費:1日500円の交通費がもらえます。私は自転車で通っていますが、その場合でも500円もらえます。
店長の指導:遅刻やミスをすると、店長や先輩に注意されますが、怒鳴られることはありません。「次回からこんなことをしないように」とやさしく注意してくれます。
やさしいお客さん:私たち店員にお菓子などをくださる常連さんが何人かいます。常連さんは帰る前にも「仕事がんばってね」と声をかけてくださいます。
このアルバイトの難しいところ
たくさんの仕事:たくさんの仕事を同時にしなければならず、最初は仕事が手に付きませんでしたが、マニュアルを頭に入れ、先輩のやり方をまねているうちに慣れました。
日本語を話す場面
お客さんと会話:客席はすべてカウンターで、お客さんと向き合って仕事をしています。お客さんから話しかけられた場合は応じてもよいので、日本語を話す機会がたくさんあり、日本語が上達しました。例えば、私が外国人だと気づいたお客さんからベトナムのことや留学のことを聞かれることがあります。
スタッフと交流:ここは良い職場で、店長や先輩、同僚とよく交流しています。定休日にみんなで飲み会をしたり、仕事が終わってから店の奥で2、3人で1時間ぐらいおしゃべりをしたり、とても楽しく、なんでも相談できます。
キャベツ焼き店でのアルバイト
今は日本の会社で正社員として働いているチャムさんは留学生時代、大阪府のキャベツ焼き店でアルバイトをしていました。
このアルバイトの良かったところ
「社会」を学んだ:最初の店長とはうまが合いませんでしたが、相手に合わせないと仕事を続けることはできません。しかし、がんばって働いていると、よい出会いもあります。次の店長は親切な人で、おかげで私はこの店で4年間働くことができました。
このアルバイトの難しかったところ
商品の焼き方:キャベツや小麦粉をまるい形に焼くのが難しく、不器用な私はうまく焼けるようになるまでに時間がかかりました。
トラブル対応など:混んでいるときの動き方やお客さんに怒られたときの対応ができるようになるまでに3カ月ぐらいかかりました。
日本語を話す場面
店長や同僚と交流:仕事中は忙しく、同僚やお客さんと話す機会はあまりありませんでした。しかし、店員同士の仲が良く、中国人の店長や年配の日本人、同僚(中国人、ベトナム人)が休日によく集まって女子会をしました。そのときの共通言語は日本語でした。
中華料理店でのアルバイト
大学生のリンさんは交換留学で日本の大学で1年間学んだ際、大阪府の個人経営の中華料理店でアルバイトをしました。
このアルバイトの良かったところ
中華料理を覚えた:この店ではキッチンとホールを1日ごとに交代で担当するので、接客もでき、中華料理を作るチャンスもありました。中華料理の名前や作り方を知ることができました。
日本文化を体感:昼間に日本人と一緒に働いたとき、日本人のお客さんがランチをあまり時間をかけずに食べることを知りました。それは、他のお客さんが待っているのを知っているからです。日本人は周囲への配慮が深いと実感しました。
親切な店長:店長が定休日にベトナム人の同僚と私を姫路城や神戸、淡路島など遠くの観光地に車で連れて行ってくれました。
このアルバイトの難しかったところ
敬語:接客は丁寧(ていねい)語でもよいと言われましたが、日本語の力を伸ばしたいので、自分で意識して敬語を使うようにしました。例えば、空いているお皿を取りたいときには、「取ってもいいですか?」ではなく「お下げしてもよろしいですか?」と言いました。また、満席のときには、「本当に申し訳ございませんが、今は席が空いていないので、少々お待ちくださいませんか?」と説明しました。
日本語を話す場面
お客さんと会話:お客さんから話しかけられて自分の勉強のことやベトナムのことについて日本語で話し、仲良くなったことがあります。お客さんと話すことの多い店でした。お客さんがいないときは、店長や奥さんと話をすることもありました。
お好み焼き店でのアルバイト
今は東京で正社員として働いているチさんは留学生のとき、奈良県のお好み焼き店でホールの担当をしました。
このアルバイトの良かったところ
おもてなし:8時間も働く日があって疲れましたが、先輩にならって笑顔で接客しました。そのような日本の「おもてなし」を身に付けることができました。
ベトナム人の先輩:いつも忙しく、他店と比べて時給も安かったのですが、お店の方々に仲良くしていただきました。店長やベトナム人の先輩、日本人の同僚とプライベートで飲み会をしたり、旅行に行ったりもしました。
お客さんとも交流:常連のお客さんたちと仲良くなりました。休日にお客さんと一緒に景色のきれいな場所に写真を撮りに行ったこともあります。
このアルバイトの難しかったところ
注文を聞く:最初は、料理名を短縮して言われると、何のことか分かりませんでした。慣れるのに1カ月ぐらいかかりました。
日本語を話す場面
お客さんとも話をする機会がたくさんありました。
まとめ
今回は、留学生のアルバイト体験として「飲食店」を取り上げました。牛丼店、しゃぶしゃぶ店、キャベツ焼き店、中華料理店、お好み焼き店の5つの事例を紹介しました。
同じホール担当でも、お客さんと話す機会が多いかどうかは店によって違うことがわかりましたね。また、店長や同僚と仲良くなれるかどうかも大事なポイントかも知れません。
先輩たちの体験を参考にしながら、よいアルバイト先を探し、日本語を話す機会を増やしたり、一緒に遊ぶ仲間を増やしたり、相談する相手を作ったりしてくださいね。
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日本で学ぶほとんどの外国人留学生がアルバイトをします。先輩留学生たちはどのようなアルバイトをしているのでしょうか? 今回は、コンビニ、スーパー、ホテル、保育所、工場で働いた先輩たちの経験を紹介します。アルバイトによってお金を稼げるほか、日本語を話す機会を増やしたり、さまざまな経験を積んだりすることができます。 ※このほか、飲食店でのアルバイト経験については、下記の記事で紹介しています。 [iconpress id="local_1803" title="external link" style="color:#525252; font-size:22px;" ] 留学生5人のアルバイト体験_飲食店編 アルバイトの探し方 留学生が日本でアルバイトを探すには次のような方法があります。 ・学校からの紹介・先輩や友人からの紹介・求人情報サイト・求人情報誌・店のはり紙・ハローワーク・留学生のSNSグループ くわしい説明はこの記事を読んでください。 [iconpress id="local_1803" title="external link" style="color:#525252; font-size:22px;" ] KOKORO|アルバイトの探し方 では、今回インタビューした先輩たちはどのようにしてアルバイトを探したのでしょうか? 保育所や工場の仕事は友人から紹介してもらったそうです。また、コンビニやホテル、スーパーの仕事は求人情報サイトやアプリ(タウンワーク、バイトル、LINEバイトなど)を使って見つけました。 インターネットでアルバイトを探すときは、一つ注意点があります。検索する際に「留学生歓迎」「外国人活躍中」などの条件をチェックすることを忘れないでくださいね! WA. SA. Bi. でも留学生向けのアルバイトを紹介しています。母国語でも相談できますので、こちらにメールを送ってください。 go-en@morikosan.co.jp コンビニでのアルバイト コンビニのアルバイトは外国人留学生に最も人気の高い仕事の一つです。今は新入社員として大阪で働いているリョウさん(マカオ出身)は大阪の大学に留学していたとき、コンビニでアルバイトをしていました。 このアルバイトの良かったところ 日本語を話す機会が多かった:お客さんとも日本人の同僚とも会話の機会が多く、日本語力を伸ばせました。関西弁も少し身につけることができました。 他国の友だちを作ることができた:同僚のインドネシア人留学生と仲良くなりました。 深夜勤務はお客さんが少ない:夜10時~朝6時の深夜勤務もしましたが、その時間帯はお客さんがほとんど来ないので、朝と昼の勤務より楽でした。 このアルバイトの難しかったところ 深夜勤務による疲労:深夜勤務は朝6時までです。午前中に授業があると、帰宅しても寝る時間がなく、すぐに学校に行かなければなりません。授業中に眠気と戦うのが大変でした。 同僚との相性:コンビニで同時に働くスタッフは2、3人なので、その日一緒に働く同僚が自分と仲の良い人かどうかで居心地のよさが変わりました。 日本語を話す場面 同僚との会話:一緒にアルバイトをしていた40代の日本人男性が仕事の合間に、私によく話しかけてくれました。会話の練習にもなり、たくさん話をできて楽しかったです。 スーパーでのアルバイト 大阪大学大学院に通うヴァンさんは最近まで3年半、スーパーで働いていました。仕事内容はレジや掃除、お客さん対応などでした。 このアルバイトの良かったところ 日本の「おもてなし」を学べた:日本の店が提供するサービスは世界トップ水準だと聞いていましたが、スーパーでのアルバイトでそれを実感し、身に付けることができました。店員はどのお客さんに対しても公平に礼儀正しく親切に接します。 お客さんへの対応:お客さんへの話し方や接し方、トラブルの対処方法などを覚え、勉強になりました。お客さんの代わりに買い物客を台まで運ぶなど、妊婦や障がい者、お年寄りのお客さんへの配慮も身に付きました。 このアルバイトの難しかったところ 立ちっぱなし:レジが中心だったので、長いときは5時間連続で立ち続けなければなりませんでした。 覚えることが多い:ポイントカードやクレジットカードの扱い方、返品手続きなど、覚えることがたくさんありました。 日本語を話す場面 お客さんと会話:レジの仕事でお客さんと定型の会話をします。「いらっしゃいませ」「◯◯円になります」「レジ袋はご入り用ですか?」などです。 また、商品の補充や整理を行っていると、お客さんから「みそはどこにありますか?」とか「タバスコは置いていますか?」など、商品の有無や場所を質問されることがよくありました。最初は答えられませんでしたが、早く対応できるようになるために、食品の名前を一生懸命に覚えました。 ホテルでのアルバイト 今は東京で正社員として働いているチーさんは大学院生のころ、奈良のホテルで働きました。主な仕事は朝食バイキングの準備でした。バイキングコーナーに料理を配膳したり、料理がなくなったら新しいものと取り替えたりしました。 このアルバイトの良かったところ まかないご飯が最高!:飲食店が店員に出す食事を日本語で「まかない」と言います。仕事が終わったら、まかないを出してもらいましたが、それはお客さんに提供するものと同じだったので、内容が充実していました。 お客さんが喜ぶと、自分もうれしくなる:バイキングコーナーのミルクは常温、ヨーグルトはフルーツ入りでしたが、ホットミルクやプレーン・ヨーグルトを希望するお客さんには、私たちがキッチンから運んで提供していました。常連客にもそのような方がいたので、私はご注文をいただく前にテーブルにお持ちしたことがあります。すると、その方はとても喜んでくださいました。 また、接客では笑顔が大事なので、自宅で鏡を見ながら笑顔の練習もしました。 このアルバイトの難しかったところ 同僚の仕事ぶり:私の働いていたホテルでは、アルバイトの1人がフロント、もう1人が朝食スタッフを担当することがありました。しかし、その日の相棒があまり仕事をしない(できない)人だった場合、自分の仕事をしながら相手の仕事もカバーしなければならないので、大変でした。 日本語を話す場面 スタッフと会話:朝食を準備しながら、キッチンやフロントの日本人スタッフとよく会話をしました。ただし、年配の人が多かったので、仕事以外での交流はあまりありませんでした。 保育所でのアルバイト 今は大阪で正社員をしているチャムさんは大学生のとき、ベトナム人の子どもがたくさんいる地域(大阪府八尾市)の保育所で3年半、アルバイトをしました。 このアルバイトの良かったところ 日本語を学べた:私の主な仕事は、保育所からベトナム人園児の保護者に知らせる文書をベトナム語に翻訳することでした。翻訳したのは連絡事項や給食のメニュー表などです。また、保育所スタッフとベトナム人保護者の間の通訳もときどき担当しました。 仕事で日本語を使い続けるので、日本語力の向上に役立ちました。辞書を調べても分からない言葉があれば、スタッフの日本人たちがていねいに教えてくれました。 こうして、アルバイトを始めた大学1年のときは、日本語能力試験(JLPT)N3でしたが、2年生のときにN1に合格することができました。しかも、「読解」は満点でした! ビジネスマナー:日本人の働き方やビジネスマナーも学べました。 就活に有利:保育所でのアルバイトは珍しいので、就活で履歴書を書くと、採用担当者たちに興味を持ってもらえましたし、面接でもさまざまな体験を話すことができました。 このアルバイトの難しかったところ 翻訳:日本にしかない食材がたくさんあるので、給食メニューの翻訳に最初は苦労しました。 検便:保育所には幼児がたくさんいるので、スタッフが感染しやすい病気にかかっていないか、検便で調べます。それは面倒でした。 子どもと遊ぶ:翻訳の仕事がないときは、2歳の子どもたちと遊ぶこともありました。子どもの扱いに慣れていないので、最初は、上手に接することができませんでした。 工場でのアルバイト スーパーのアルバイト内容を紹介してくれたヴァンさんは週末にチョコレート工場で働いたこともあります。 このアルバイトの良かったところ 柔軟なシフト:17時~22時に働くと事前申告していましたが、それより長く働いても大丈夫でした(もちろん、週28時間以内に収めていました)。また、週末だけの勤務もOKでした。 仕事が単純:私が働いたラインには主に3つの仕事がありました。ベルトコンベアーにお菓子を流す仕事、流れてきたお菓子に不備がないかチェックする仕事、流れてきたお菓子を箱に詰めてシールを貼る仕事です。これらの作業を3人で担当し、30分ごとに役割を交代しました。仕事内容は単純で楽でした。 日本語を話す場面 ベトナム人が多い:私たちの職場では、日本人は工場長と課長だけで、ほかはベトナム人のアルバイトが約30人いました。このため、アルバイト仲間はすぐにベトナム語で話してしまい、日本語を話す機会がほとんどありませんでした。そこで、私は休憩時間などに課長をつかまえて雑談をするように心がけました。 まとめ 今回はコンビニやスーパー、ホテル、保育所、工場でアルバイトをした元留学生たちがアルバイトの内容を紹介してくれました。 アルバイトには、お金を稼ぐという目的以外に、 ・日本語会話の機会を増やす ・友だちを増やす ・さまざまな経験をする といった利点があります。 また、留学生が卒業後に日本で就職する場合、履歴書やエントリーシートにアルバイトでの経験を書くことが多く、面接でもその内容について聞かれます。仕事で苦労したことや学んだことを分かりやすく説明できるようにがんばってください。
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〈記事まとめ〉アルバイト:探し方・面接・入管法との関係
日本でのアルバイトについて、これから日本で留学する人やすでに留学中の人に知っておいてほしい情報をまとめました。「アルバイトの探し方」や「アルバイトの面接の準備とこつ」についてポイントを紹介します。また、「アルバイトと入管法の関係」や「アルバイトの税金」について大事なことをお伝えします。 アルバイトで学費と生活費をすべてまかなうことはできませんが、日本語を話す機会を作ったり、仲間を増やしたりすることができます。アルバイトの探し方や注意点を押さえておきましょう。 1. アルバイトの探し方 アルバイトの探し方には次のようなものがあります。 ・学校からの紹介・先輩や友人からの紹介・求人情報サイト・求人情報誌・店のはり紙・ハローワーク・留学生のSNSグループ 最近多いのは「求人情報サイト」と「先輩や友人からの紹介」です。求人情報サイトの種類とリンクなどくわしいことは次の記事に書かれています。また、この記事では、電話をかけずに面接にこぎつける方法も紹介しています。 アルバイトの探し方(2022年) 2.アルバイト面接の準備とこつ ・面接では「なぜこの仕事に応募したのですか?」と必ず聞かれます。この質問に答える際のポイントは何でしょうか? ・面接の服装や髪型についても注意が必要です。 ・面接には何を持って行ったらよいでしょうか? ・面接会場には少し早めに着きましょう。そのために電車の時間や乗り継ぎ、駅からの経路などをあらかじめ調べておきましょう。 くわしいことを知りたい場合は、次の記事を読んでください。 アルバイト面接の準備とこつ 3.アルバイトと入管法 日本で私費留学する場合、アルバイトだけで学費と生活をまかなえるのは次のような場合に限られています。 ・(良い成績を取るなどして)大きな奨学金をもらう。 ・(良い成績を取るなどして)授業料を全額または半額以上免除してもらう。 それ以外の場合、実家からの援助とアルバイトで留学費用をまかないます。日本での留学生のアルバイトは週28時間以内と決められていますが、それを超えて働く(オーバーワーク)と、留学の在留資格を更新できない場合があります。次のようなことを覚えておきましょう。 ・オーバーワークで留学の在留資格を更新できず、ベトナムに帰国した先輩がたくさんいます。 ・オーバーワークは入管に知られてしまいます。 ・「週28時間」の正しい数え方があります。どの曜日から数えても1週間28時間に収まらないといけません。 ・日本で就職したい人は、就職先が決まって在留資格を変更する際に源泉徴収票の提出を求められます。アルバイト先から年に1回渡される源泉徴収票を捨てずに保管しておいてください。 オーバーワークが入管に知られてしまうシステムなどくわしいことを知りたい場合は、次の記事を読んでください。 アルバイトと入管法 4.留学生のアルバイトと税金 留学生のアルバイトへの税金について正しく知っておくと、トラブル防止に役立ちます。 ・ベトナム人の場合、留学生のアルバイトについても「所得税」が課税されます。これは国に納める税金で、毎月の給与から差し引かれます。 ・留学生は「厚生年金保険」「健康保険」「雇用保険」に加入できないので、その費用はアルバイトの給与から引かれません。その代わり、自分で「国民年金」と「国民健康保険」に加入します。 ・「労災保険」には加入できるので、給与からその負担額を引かれる場合もあります。 ・来日1年目の税金と2年目以降の税金は税率が違います。2年目以降の方が税率が低くなります。 もっと知りたい人はこちらの記事を読んでください。 留学生のアルバイトと税金 5.アルバイト体験談 アルバイトでは、お金を稼ぐこと以外に「日本語を話す機会が増える」「仲間が増える」などのメリットがあります。 アルバイトの種類ごとに仕事内容やメリット、日本語を話す機会などについて、先輩留学生たちの体験を読むと、参考になるかも知れません。 留学生5人のアルバイト体験_飲食店編 留学生アルバイト体験_コンビニ、スーパー、ホテル、保育所、工場 6. まとめ この記事では、日本での留学を計画している人やすでに留学中の人に役立つように下記の情報を紹介しました。 ・アルバイトの探し方で多いのは「求人情報サイト」と「先輩や友人からの紹介」 ・日本に私費留学する場合、大きな奨学金や授業料免除などがなければ、アルバイトだけで学費と生活費をまかなうことはできません。 ・週28時間を超えて働く(オーバーワーク)と、留学の在留資格を更新できない場合があります。実際、オーバーワークで留学の在留資格を更新できず、ベトナムに帰国した先輩がたくさんいます。 ・どの曜日から数えても1週間28時間に収まらないといけません。 ・ベトナム人の場合、留学生のアルバイトに「所得税」が課税されます。 ・留学生は「厚生年金保険」「健康保険」「雇用保険」に加入できません。その代わり、自分で「国民年金」と「国民健康保険」に加入します。 良いアルバイトを見つけて、あなたの留学生活を充実させてください。
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技能実習とアルバイト、ここに気をつけよう(仕事編)
©毎日新聞 私は日本の食品加工会社の本社に5年以上勤務し、外国人従業員の管理・指導を担当してきました。当社は全国に12の工場を持ち、各工場にベトナム人を中心に技能実習生が約100人ずついます。また、アルバイトの外国人留学生は12工場で計約2000人がおり、約70%がベトナム人です。 当社工場では、コンビニに出荷する惣菜やサラダ、パスタ、デザートなどを作っています。従業員は、野菜の皮むき▽肉や麺をゆでる、揚げる、焼く▽袋詰め――など、さまざまな仕事を分担しています。今回は、実習生や留学生が引き起こしがちな職場での問題点を紹介します。当社工場での事例ではありますが、他の業種と共通する部分もあろうかと思います。日本で働くベトナム人の参考になれば幸いです。 ベトナム人実習生、ここに気をつけて ベトナム人技能実習生に多い仕事上の問題点は次の通りです。 ● 指示に従わず自分の習慣で仕事をする - 食品の熱を温度計で測るよう指示されているのに、温度計を使わず見た目や感覚だけで判断してしまうことがあります。その結果、生焼けの食品が出荷され、消費者からクレームを受ける事態になることもあります。 - 大鍋で肉をゆでる際、指定の分量やゆで時間を守らず、1度に大量の肉を投入し早く済まようとする人がいます。このやり方だと、肉のゆで具合が不均一になったり、生煮えの部分が残ったりします。 - 袋詰めの食材を開封する際、一方向ではなく何度もハサミを入れる人や、一部分だけを切って中身を取り出そうとする人がいます。これだと、切り口のビニール片が食品に混入する恐れがあります。会社はこのようなやり方を禁止していますが、指示に従わない人がいます。 ● 仕事中におしゃべりする - 作業中、私語を控えるように指導していますが、「手は動かしているのだから、話すぐらいは平気だろう」と考える人がいます。しかし、仕事に必要のない会話をすると、作業が不正確になる恐れがあるほか、周囲の人も気になって作業効率が下がる可能性があります。 ● 自分が出勤できないとき、簡単に人に頼んで代わってもらう - ほとんどのベトナム人がこの行為は仕事に支障をきたさないと考えがちですが、それは違います。会社は個々の従業員に作業を割り振って責任を持たせています。また、無断で人の配置を換えると、十分に理解していない人が作業することになり、生産ラインが混乱し生産効率や製品の質が下がる可能性があります。 ● 安全、衛生の規則などを軽視する - 例えば、床に落ちた食材を生産ラインに戻そうとする人がたまにいますが、衛生管理上、絶対にNGです。また、落ちたものを拾えば、そのときにつけていた手袋も替えなければなりません。 ● 職場でのあいさつをおろそかにする - 日本では、始業・終業の際などに顔を見て声を出してあいさつすることが大事です。職場でよい人間関係を築く第一歩となります。 ベトナム人留学生、ここに気をつけて 当社工場では、留学生アルバイトに下記のような傾向が見られます。 ● 嫌なことがあれば簡単に転職する - 日本人の若者にも同じ傾向がありますが、外国人留学生はその傾向が一層強いと見られています。 ● 遅刻や無断欠勤が多い - 複数のアルバイトを兼務していることもあってか、留学生アルバイトは実習生に比べて規範意識が低い傾向があり、遅刻や無断欠勤、無断でのシフト変更が後を絶ちません。 ● 仕事中にタバコを吸う - 留学生の中には、「トイレに行く」と言ってトイレや喫煙室でタバコを吸う人がいますが、これも禁止されています。喫煙は休憩中のみ許されています。 ● 勤労意欲が低い - 留学生アルバイトは技能実習生と比べて仕事への意欲が低い傾向があります。「一生懸命に働く」というより「淡々と働く」というイメージが留学生にはあります。 ベトナム人従業員、ここがいいところ! 最後に、ベトナム人の実習生や留学生アルバイトの長所を紹介します。彼らは他国の実習生、留学生と比べて以下の点で高く評価されています。 ● 器用で作業が速い - 所作が機敏でテキパキとしています。また、手先が器用です。 ● 積極的に意見を言う - 仕事に対する意見やアイデアを積極的に発言し、社内環境の改善に貢献してくれます。 ● 学ぶ意欲があり、理解が早く、日本語を覚えるのも早い いかがでしたか? 自分たちがどのように見られているかを意識することで、働く姿勢を改善することができます。そして、真面目で堅実な勤務態度を身に付ければ、将来、あなたの役に立ちます。
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Vol. 07 アルバイト時間超過でビザ更新できず、無念の帰国
今回の先輩 Duong Phuc Tin(ズオン・フック・ティン)さん 2013年6月Yến Dung So3高校 卒業 2013年9月ベトナムの外国語学校入学 2014年4月東京都内の日本語学校入学 2016年3月日本語学校卒業 2016年4月開知国際大学入学 2019年8月開知国際大学中退 〈1995年生まれ、バックジャン(Bac Giang)市出身〉 はじめに 私はベトナムの日本語学校で半年間勉強して訪日し、東京の日本語学校に2年間在籍後、千葉県柏市の開智国際大学に入りました。楽しい大学生活を送っていましたが、4年生の夏、在留期間を更新できず、卒業目前で大学を中退して2019年8月15日にベトナムに帰国しました。在留期間を更新できなかったのは、アルバイトの勤務時間が法律の制限を大きく超えたからです。今では、「アルバイトを少し減らし、もっと勉強をすればよかった」と悔やんでいます。今後、ベトナム人の仲間や後輩が同じ目にあわないよう、入管とのやり取りなど、私の具体的な体験をお伝えします。 【編集部からのアドバイス】 日本で留学したり働いたりするためには「在留資格」が必要です。「在留資格」と「ビザ」は本当は違うものですが、在留資格のことを「ビザ」と呼ぶケースも多いので、在留資格とビザを似たようなものと理解してもかまいません。「留学」の在留資格の場合、原則として就労はできませんが、「資格外活動許可」を取得すれば、アルバイトはできます。ただし、勤務時間は週28時間以内(学校の長期休暇時は週40時間以内)と制限があり、違反すると在留資格を失う(=在留期間を更新できない)原因になります。 私の日本での在留期間更新 私が訪日してからの在留期間更新の流れは次の通りでした。 ① 2014年【東京の日本語学校入学】 「留学」の在留資格で訪日(在留期間は1年間) ☆在留資格取得許可申請は日本語学校が代行 ② 2015年【日本語学校2年目】 在留期間更新(1年間) ☆更新許可申請は日本語学校が代行 ③ 2016年【大学入学】 在留期間更新(2年間) ☆更新許可申請は自分で行った ☆日本語学校の成績がある程度良かったので、2年間の期間更新ができた。同じ大学に、入学時に4年間の期間更新を許可されたベトナム人も複数いた。 ④ 2018年【大学3年】 在留期間更新(1年間) ☆更新許可申請は自分で行った ☆1年間しか期間更新できなかったのは、大学での取得単位数が少なかったことが原因か。 ⑤ 2019年【大学4年】 在留期間更新(不許可)→大学中退、帰国 長時間アルバイトと暮らし 私の訪日後の最初のアルバイトは学校からの紹介で、倉庫での荷物仕分けでした。訪日して2年目以降は、大手チェーンの焼き鳥店と牛丼店で働きました。焼き鳥店では夜勤(22時~朝5時半)が多く、夜勤の時給は1,370円(約290,000ドン)もありました。私は週に2、3回(夏休みなどには週5回)、夜勤を担当しました。牛丼店では、夜勤(22時~9時)で時給1,250円、それ以外の時間で時給1,005円をもらいました。 留学生のアルバイトは日本の法律で週28時間以内と決まっていますが、私は週40時間ぐらい働いていました。また、夏休みなど長期休暇時は法律では週40時間以内なのに、私は50~60時間働きました。その結果、年間約240万円の給料をもらっていました。一方、大学での成績は低迷しました。 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円=21,195 VND(2019年11月30日現在) 収入(合計180,000円~250,000円) アルバイト2件(牛丼店、焼き鳥店) 合計180,000円~250,000円 ※税引き後の手取り給料 ※約250,000円は学校の長期休暇時 支出(合計 150,000円~162,000円) 家賃 35,000円 ※1人暮らし ※東京に比べると相当安い ※ワンルーム、シャワー&バス 光熱費 7,000円 ※電気・水道・ガスの合計 携帯電話+自宅のインターネット 10,000円 食費 28,000円~30,000円 ※バイト先の飲食店で格安で食べる日もある ※外食費含む 授業料 60,000円 ※奨学金や授業料減免なし(対象は成績優秀者のみ) 雑費 10,000~20,000円 ※衣類、交通費など 差額(30,000~90,000円) 差額 30,000~90,000円 ※貯まったお金は家族への仕送りや旅行、一時帰国、保険などに使った ※実家への仕送りは5年間で200万円以上 入国管理局とのやり取り 私は2016年の大学進学時、東京出入国在留管理局千葉出張所に在留期間更新許可を申請しました。この時は在留期間を2年間更新でき、2018年(大学3年)は1年間更新できました。 更新許可申請では、最初に許可申請書や在学証明書、成績証明書などを提出しました。すると、後日、入管から自宅にはがきが届き、課税証明書や給与明細、通帳(3カ月分のコピー)を追加で提出するように求められました。これらは、多くの留学生が求められるのと同じ資料です。 私は、二つのアルバイト先の書類を出すと勤務時間超過がばれると思い、焼き鳥店の課税証明書と給与明細だけを提出しました。通帳も、焼き鳥店からの給料が振り込まれる口座と牛丼店からの振込口座をわけていたので、焼き鳥店からの振込口座の通帳だけを提出し、在留期間を更新することができました。 しかし、2019年の更新許可申請時は違いました。入管から届いたはがきに「賃金台帳」も提出するように書かれていました。賃金台帳は、勤務先が従業員の労働時間や給与などを記載する書類で、給与明細よりも詳しい内容になっています。しかも、はがきには、焼き鳥店だけではなく牛丼店の賃金台帳も提出するように書かれていました。入管が私の勤務先のことをどこかで調査し、両方の賃金台帳を提出するように指定してきたのです。 仕方なく両店で賃金台帳を発行してもらって入管に提出すると、再度はがきが届き、入管に出頭するよう求められました。指定日時に入管に行くと、個室に連れて行かれ、私のアルバイト勤務に関する調査資料を見せられました。担当官から「あなたは規定の時間を超えて働いたので、在留期間を更新出来ない」と言われ、私は日本に在留し続けることができなくなりました。 在留資格更新の分かれ目 私は留学のために約150万円の借金をしました。ベトナムの日本語学校に支払った学費や寮費以外に紹介手数料なども含まれています。日本での学費と生活費をまかない、借金も返済するためには、週28時間のアルバイトだけでは無理でした。しかし、今にして思うと、アルバイトをもう少し減らすことはできました。 【編集部からのアドバイス】 ・ティンさんがアルバイトをしすぎたのは、留学前につくった多額の借金が背景にあります。少ない借金で留学できるケースはたくさんあります。情報を集め、なるべく借金をせずに訪日しましょう。 ・ティンさん以外にもアルバイト時間の超過で在留期間を更新できず、途中で帰国する人はたくさんいます。ティンさんは「在留期間更新は学校の成績にも左右される。大学入学時は在留期間を2年間更新できたが、3年の時は1年間しか更新できなかった。大学での取得単位数が少なかったことが影響したと思う。今回も成績は悪かったので、厳しく調査されたのかも知れない」と話しています。 写真で見る私の日本留学 私は、日本で大学を卒業して日本で就職しようと思って訪日しました。その後、ベトナムの日系企業で働きたいと希望が変わりましたが、残念ながら卒業目前で帰国するはめになりました。たくさん仕送りをして家族に喜んでもらおうと思って働きましたが、こういうことになって残念です。今にして思えば、アルバイトを少し減らして、もう少し勉強すればよかったと思います。 帰国後すぐに仕事が見つかり、今はハノイの技能実習生送出機関で働いていますが、これから訪日するベトナムの後輩には同じ過ちを繰り返してほしくないと思い、私の失敗談を紹介しました。 最後に、私の留学生活を写真で振り返り、日本のよさ、留学の素晴らしさをベトナム人の後輩の皆さんにお伝えできればと思います。 ■ 2015年冬・東京 日本語学校の仲間たちと宴会。ベトナムや中国、ネパール、台湾などアジア各地から留学生が集まり、会話の共通言語は日本語でした。学期末試験の後などには、こうして大勢で飲みに行きました。 ■ 2015年12月・箱根 日本語学校の旅行で、1泊2日で箱根へ。この日本語学校では、半年に一度、みんなで旅行に行きました。宿で夜遅くまで仲間とおしゃべりできて、楽しかったです。 この日は雪が積もっていました。東京でも雪は何度か体験しました。雪が降る眺めはきれいでした。 ■ 2016年3月・日本語学校卒業 日本語学校の卒業式の会場前で記念撮影。いろんな国の人と一緒に学びました。【東京都内で】 ■ 2017年・大学2年(アルバイト仲間) 焼き鳥店のバイト仲間と(手前が私、中央のバンダナの女性はベトナム人、他の5人は日本人)。バイト仲間には日本人の大学生や専門学校生が多かったです。 焼き鳥店のバイト仲間(全員ベトナム人)と東京で花火大会を見物。日が暮れる前からこうして席取りをし、花火が始まるのを待ちました。 ■ 2019年・大学4年 ベトナムで通った日本語学校の同窓生と時々、こうして同窓会。日本での進路は、就職、専門学校、日本語学校、大学など様々。【東京・池袋の居酒屋で2019年春】 授業がないときは、キャンパスで同じ学部のベトナム人仲間(4年生)と歓談。この時は、在留期間更新許可申請の結果がまだ出ていませんでした。【開知国際大学で2019年6月】 ■ 2019年・大学4年(帰国直前) 帰国することになり、牛丼屋のバイト仲間が開いてくれた送別会。奥の2人は日本人で、「寂しくなる」と言ってくれました。【2019年8月1日】 同じ大学のベトナム人の友人宅で2人でお別れ会【2019年8月6日】 焼き鳥店や牛丼屋でアルバイトをする日は、このような「まかない(従業員に格安で提供される食事)」をよく食べました。 今回の先輩 Duong Phuc Tin(ズオン・フック・ティン)さん 2013年6月Yến Dung So3高校 卒業 2013年9月ベトナムの外国語学校入学 2014年4月東京都内の日本語学校入学 2016年3月日本語学校卒業 2016年4月開知国際大学入学 2019年8月開知国際大学中退 〈1995年生まれ、バックジャン(Bac Giang)市出身〉 はじめに 私はベトナムの日本語学校で半年間勉強して訪日し、東京の日本語学校に2年間在籍後、千葉県柏市の開智国際大学に入りました。楽しい大学生活を送っていましたが、4年生の夏、在留期間を更新できず、卒業目前で大学を中退して2019年8月15日にベトナムに帰国しました。在留期間を更新できなかったのは、アルバイトの勤務時間が法律の制限を大きく超えたからです。今では、「アルバイトを少し減らし、もっと勉強をすればよかった」と悔やんでいます。今後、ベトナム人の仲間や後輩が同じ目にあわないよう、入管とのやり取りなど、私の具体的な体験をお伝えします。 【編集部からのアドバイス】 日本で留学したり働いたりするためには「在留資格」が必要です。「在留資格」と「ビザ」は本当は違うものですが、在留資格のことを「ビザ」と呼ぶケースも多いので、在留資格とビザを似たようなものと理解してもかまいません。「留学」の在留資格の場合、原則として就労はできませんが、「資格外活動許可」を取得すれば、アルバイトはできます。ただし、勤務時間は週28時間以内(学校の長期休暇時は週40時間以内)と制限があり、違反すると在留資格を失う(=在留期間を更新できない)原因になります。 私の日本での在留期間更新 私が訪日してからの在留期間更新の流れは次の通りでした。 ① 2014年【東京の日本語学校入学】 「留学」の在留資格で訪日(在留期間は1年間) ☆在留資格取得許可申請は日本語学校が代行 ② 2015年【日本語学校2年目】 在留期間更新(1年間) ☆更新許可申請は日本語学校が代行 ③ 2016年【大学入学】 在留期間更新(2年間) ☆更新許可申請は自分で行った ☆日本語学校の成績がある程度良かったので、2年間の期間更新ができた。同じ大学に、入学時に4年間の期間更新を許可されたベトナム人も複数いた。 ④ 2018年【大学3年】 在留期間更新(1年間) ☆更新許可申請は自分で行った ☆1年間しか期間更新できなかったのは、大学での取得単位数が少なかったことが原因か。 ⑤ 2019年【大学4年】 在留期間更新(不許可)→大学中退、帰国 長時間アルバイトと暮らし 私の訪日後の最初のアルバイトは学校からの紹介で、倉庫での荷物仕分けでした。訪日して2年目以降は、大手チェーンの焼き鳥店と牛丼店で働きました。焼き鳥店では夜勤(22時~朝5時半)が多く、夜勤の時給は1,370円(約290,000ドン)もありました。私は週に2、3回(夏休みなどには週5回)、夜勤を担当しました。牛丼店では、夜勤(22時~9時)で時給1,250円、それ以外の時間で時給1,005円をもらいました。 留学生のアルバイトは日本の法律で週28時間以内と決まっていますが、私は週40時間ぐらい働いていました。また、夏休みなど長期休暇時は法律では週40時間以内なのに、私は50~60時間働きました。その結果、年間約240万円の給料をもらっていました。一方、大学での成績は低迷しました。 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円=21,195 VND(2019年11月30日現在) 収入(合計180,000円~250,000円) アルバイト2件(牛丼店、焼き鳥店) 合計180,000円~250,000円 ※税引き後の手取り給料 ※約250,000円は学校の長期休暇時 支出(合計 150,000円~162,000円) 家賃 35,000円 ※1人暮らし ※東京に比べると相当安い ※ワンルーム、シャワー&バス 光熱費 7,000円 ※電気・水道・ガスの合計 携帯電話+自宅のインターネット 10,000円 食費 28,000円~30,000円 ※バイト先の飲食店で格安で食べる日もある ※外食費含む 授業料 60,000円 ※奨学金や授業料減免なし(対象は成績優秀者のみ) 雑費 10,000~20,000円 ※衣類、交通費など 差額(30,000~90,000円) 差額 30,000~90,000円 ※貯まったお金は家族への仕送りや旅行、一時帰国、保険などに使った ※実家への仕送りは5年間で200万円以上 入国管理局とのやり取り 私は2016年の大学進学時、東京出入国在留管理局千葉出張所に在留期間更新許可を申請しました。この時は在留期間を2年間更新でき、2018年(大学3年)は1年間更新できました。 更新許可申請では、最初に許可申請書や在学証明書、成績証明書などを提出しました。すると、後日、入管から自宅にはがきが届き、課税証明書や給与明細、通帳(3カ月分のコピー)を追加で提出するように求められました。これらは、多くの留学生が求められるのと同じ資料です。 私は、二つのアルバイト先の書類を出すと勤務時間超過がばれると思い、焼き鳥店の課税証明書と給与明細だけを提出しました。通帳も、焼き鳥店からの給料が振り込まれる口座と牛丼店からの振込口座をわけていたので、焼き鳥店からの振込口座の通帳だけを提出し、在留期間を更新することができました。 しかし、2019年の更新許可申請時は違いました。入管から届いたはがきに「賃金台帳」も提出するように書かれていました。賃金台帳は、勤務先が従業員の労働時間や給与などを記載する書類で、給与明細よりも詳しい内容になっています。しかも、はがきには、焼き鳥店だけではなく牛丼店の賃金台帳も提出するように書かれていました。入管が私の勤務先のことをどこかで調査し、両方の賃金台帳を提出するように指定してきたのです。 仕方なく両店で賃金台帳を発行してもらって入管に提出すると、再度はがきが届き、入管に出頭するよう求められました。指定日時に入管に行くと、個室に連れて行かれ、私のアルバイト勤務に関する調査資料を見せられました。担当官から「あなたは規定の時間を超えて働いたので、在留期間を更新出来ない」と言われ、私は日本に在留し続けることができなくなりました。 在留資格更新の分かれ目 私は留学のために約150万円の借金をしました。ベトナムの日本語学校に支払った学費や寮費以外に紹介手数料なども含まれています。日本での学費と生活費をまかない、借金も返済するためには、週28時間のアルバイトだけでは無理でした。しかし、今にして思うと、アルバイトをもう少し減らすことはできました。 【編集部からのアドバイス】 ・ティンさんがアルバイトをしすぎたのは、留学前につくった多額の借金が背景にあります。少ない借金で留学できるケースはたくさんあります。情報を集め、なるべく借金をせずに訪日しましょう。 ・ティンさん以外にもアルバイト時間の超過で在留期間を更新できず、途中で帰国する人はたくさんいます。ティンさんは「在留期間更新は学校の成績にも左右される。大学入学時は在留期間を2年間更新できたが、3年の時は1年間しか更新できなかった。大学での取得単位数が少なかったことが影響したと思う。今回も成績は悪かったので、厳しく調査されたのかも知れない」と話しています。 写真で見る私の日本留学 私は、日本で大学を卒業して日本で就職しようと思って訪日しました。その後、ベトナムの日系企業で働きたいと希望が変わりましたが、残念ながら卒業目前で帰国するはめになりました。たくさん仕送りをして家族に喜んでもらおうと思って働きましたが、こういうことになって残念です。今にして思えば、アルバイトを少し減らして、もう少し勉強すればよかったと思います。 帰国後すぐに仕事が見つかり、今はハノイの技能実習生送出機関で働いていますが、これから訪日するベトナムの後輩には同じ過ちを繰り返してほしくないと思い、私の失敗談を紹介しました。 最後に、私の留学生活を写真で振り返り、日本のよさ、留学の素晴らしさをベトナム人の後輩の皆さんにお伝えできればと思います。 ■ 2015年冬・東京 日本語学校の仲間たちと宴会。ベトナムや中国、ネパール、台湾などアジア各地から留学生が集まり、会話の共通言語は日本語でした。学期末試験の後などには、こうして大勢で飲みに行きました。 ■ 2015年12月・箱根 日本語学校の旅行で、1泊2日で箱根へ。この日本語学校では、半年に一度、みんなで旅行に行きました。宿で夜遅くまで仲間とおしゃべりできて、楽しかったです。 この日は雪が積もっていました。東京でも雪は何度か体験しました。雪が降る眺めはきれいでした。 ■ 2016年3月・日本語学校卒業 日本語学校の卒業式の会場前で記念撮影。いろんな国の人と一緒に学びました。【東京都内で】 ■ 2017年・大学2年(アルバイト仲間) 焼き鳥店のバイト仲間と(手前が私、中央のバンダナの女性はベトナム人、他の5人は日本人)。バイト仲間には日本人の大学生や専門学校生が多かったです。 焼き鳥店のバイト仲間(全員ベトナム人)と東京で花火大会を見物。日が暮れる前からこうして席取りをし、花火が始まるのを待ちました。 ■ 2019年・大学4年 ベトナムで通った日本語学校の同窓生と時々、こうして同窓会。日本での進路は、就職、専門学校、日本語学校、大学など様々。【東京・池袋の居酒屋で2019年春】 授業がないときは、キャンパスで同じ学部のベトナム人仲間(4年生)と歓談。この時は、在留期間更新許可申請の結果がまだ出ていませんでした。【開知国際大学で2019年6月】 ■ 2019年・大学4年(帰国直前) 帰国することになり、牛丼屋のバイト仲間が開いてくれた送別会。奥の2人は日本人で、「寂しくなる」と言ってくれました。【2019年8月1日】 同じ大学のベトナム人の友人宅で2人でお別れ会【2019年8月6日】 焼き鳥店や牛丼屋でアルバイトをする日は、このような「まかない(従業員に格安で提供される食事)」をよく食べました。
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