日本語学習

日本の不思議なカタカナ語_02

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2022年10月14日

日本語には「カタカナ語」がたくさんあります。語源は英語なのに元の英語の意味とは少し違う「和製英語」と呼ばれるカタカナ語が多いですし、英語とは関係のないカタカナ語もあります。初めて聞いて意味を知ったときは「不思議な言葉だなあ」と思うこともありますが、語源を理解して自分でも使ってみると、使い勝手のよい言葉もあります。パート1に引き続き、よく使われるカタカナ語を紹介します。

スペック

友人:ねえ、聞いた?真子ちゃんに彼氏ができたらしいよ?
私:マジ?その彼氏さんってどんな人?
友人:真子ちゃんによると、まだ20代なのに年収が1000万円もあるんだって!しかも、すごくイケメン!おまけに頭もよくて、料理もできて、やさしいんだって!
私:うわあ、いいなぁ。私もそんなスペックの高い男を捕まえたいわぁ。

→→「スペック」は英語のspecification(スペシフィケーション=仕様、性能)の略語で、もともとはパソコンの性能を表す言葉としてよく使われていました。「スペックが高いパソコン」=「性能が高いパソコン」ということです。

そこから転じて、主に若者の間で「人の能力や属性」を指す言葉としても使われるようになりました。「仕事の能力が高い人」や「恋人や結婚相手として好条件がそろっている人」などを「スペックが高い」と表現します。「スペックが低い」は逆の意味です。

■スペック=スペシフィケーション(仕様、性能)

・スペックが高い(製品の性能が高いこと、人の能力や属性が高いこと)
・ハイスペック(性能が高い製品、能力や属性が高い人)
・オーバースペック(製品の性能が用途に比べて高すぎること)

ハードル

障害物競走のハードル

友人:リンちゃんはインスタ(SNS)やってる?フォローしたいんだけど。
私:ううん、私やっていないの(笑)。
友人:へー、そうなんだ!インスタは、みんなやってると思ってた。
私:みんなかわいい写真ばかりアップしてるので、私にはハードルが高いの。

→→「ハードル」は障害物競走で有名な言葉ですね。英語のhurdleには「障害物」や「困難」、「障害」といった意味があります。

障害物競走のハードルを越える際にハードルの高さが高いほど越えるのは難しいですね。そこで、最近の日本では、難易度が高い(実行や実現が難しい)ことを「ハードルが高い」と表現しています。

【基本】ハードルが高い=難しい

・ハードルをあげる=難しくする(難易度を上げる)
・ハードルを下げる=簡単にする(難易度を下げる)

リストラ

同僚:今年、会社の景気(業績)が悪いよね〜。そのせいでリストラされる人も増えてきてるらしいよ。
私:そうらしいね。次の四半期のノルマを達成できるように頑張らなきゃ。リストラ予備軍に入れられたら困るものね。

→→「リストラ」はrestructuring(リストラクチャリング)の略語で、(事業の)再構築などの意味があります。それに関連して、最近では「企業の人員削減や整理解雇」を指す言葉として多用されています。解雇されることを「クビになる」と表現することが多いですが、「リストラされる」も同じ意味です。

ドンピシャ

姉:誕生日おめでとう。プレゼントに普段着用のシャツを送ったんだけど、届いた?
私:うん、昨日受け取った!とってもいい感じのデザインで、私の好みにドンピシャだわ。ありがとう!

→→「ドンピシャ」は「まさにぴったり」という意味です。

もともとは「ドンピシャリ」と表現されてましたが、最近は「ドンピシャ」と略されることが多くなりました。

・「ドン」は強調の表現で、「ド派手(=ものすごく派手)」や「ド真ん中(=まん真ん中)」というように強調のために使われる「ド」が変化した言葉です。
・「ピシャリ」は「ピッタリ」という意味で、「ドアをピシャリと閉める」というふうに使われます。

マスト

学校の後輩:先輩の会社では、皆さん毎日残業しているんですか?
学校の先輩:うん、毎日結構たくさんの人が残業してるよ。うちの上司は成果重視で、残業がマストではないんだけど、成果を出すにはたくさん働かなければならないからね…。

→→「マスト」の語源は英語の助動詞mustです。

Mustは本来は動詞と一緒に用いて「〜しなければならない」という意味ですが、和製英語の「マスト」は「必要不可欠なもの(こと)」という意味で名詞として使われています。「今月は、契約3本がマストだからね!」と先輩に言われたら、それは「目標」というよりも「義務」や「ノルマ」だと理解してください。

ピーディーシーエーサイクル

新人:最近、仕事があまりうまくいってないんですけど、どうしたらいいですか?
先輩:PDCAがきちんとできているか、今一度点検してみてはどうだい?

→→「ピーディーシーエー(PDCA)」はPlan→Do→Check→Actionの頭文字です。

Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことで仕事の効率が上がり成果が高まるとされています。この4つの行為の繰り返しを「PDCAサイクル」と言います。

ノウハウ

私:あの人、スキルアップするために、いろんな人のやり方を見てメモをとっているよ。
同僚:えらいね!他人のノウハウを盗むことがスキルアップの一番の近道だもんね!

→→「ノウハウ」とは、「ものごとを行うための(専門的な)方法・知識・手順・コツ」などのことです。

英語のknowとhowを組み合わせた言葉で、直訳すると「方法を知る」という意味です。実は英語でもknow-howという言葉があり、日本語と同じように「ものごとのやり方・コツ」という意味で使われています。しかし、英語ではknow-howよりもknowledge(知識)やskills(技)、expertise(専門知識)などの言葉を使う方が一般的です。

プッシュ

私:鈴木君は今度の人事で統括に抜擢(ばってき)されたね。私たちの同期の中で一番出世が速いよね!
同僚:部長から猛プッシュがあったらしいよ。
私:部長は日ごろから彼に目をかけているものね!

→→「プッシュ」は英語のpushから来ています。

日本のビジネス現場では「プッシュ」は「促す」「後押しする」「推薦する」「働きかける」などの意味で使われており、この例文では「推薦」の意味です。

スマート

(電話での会話)
リン:ねえ、聞いて!ダイエットに成功して8キロもやせたよ!
母:まあ、本当?よかったわねえ!じゃあ、スマートになったあなたに早く会いたいわ。今度いつベトナムに帰ってくるの?
リン:実は、来月、出張でハノイに行けそうだから、そのときに実家に泊まるわ。スマートな私に会えるのを楽しみにしててね!

→→「スマート」=「スリムな」「細い」という意味です。

日本では「スリムな」という意味で「スマート」というカタカナ語が多用されています。しかし、語源となっている英語のsmartには実はそのような意味はありません。

英語のsmartは「かしこい」「スタイリッシュな(おしゃれな)」「コンピュータ化された」などの意味です。「スマートフォン」や「スマート家電」の「スマート」には「かしこい」や「高機能の」という意味が込められています。

ケーワイ(KY)

リン:はると君、昨日の放課後、タオちゃんをデートに誘ったけど、断られたんだって。
ヴァン:だって、タオちゃんのお父さんが一昨日入院して、今週手術なんでしょ?デートどころじゃないわよ。そんなタイミングでデートに誘うなんて、はると君はケーワイ(KY)ねえ。
リン:そうなの。彼はイケメンなのに、いつもケーワイだから、女子にもてないのよね…。

→→「ケーワイ(KY)」は「空気が読めない」という意味です。「くうき」の頭文字の「K」と「よめない」の「Y」から構成され、日本人が作った言葉です。

「ケーワイ」と思われないように、場面や状況に応じた発言を心がけましょう。

アジェンダ

部長:リンさん、この打ち合わせの内容を踏まえて次回の全体会議のアジェンダを作成し、明日の夕方までに出席者に配ってください。
リン:かしこまりました。配布する前に部長にお見せしますので、チェックをお願いします。

→→「アジェンダ」は英語のagendaで、日本では「議題」や「協議事項」の意味でよく使われています。

「議題と言えばすむのに」と感じている日本人も多いそうですが、最近なぜかビジネス現場でよく使われていますので、覚えておきましょう。

まとめ

この記事では「スペック」「マスト」「ケーワイ」など11個のカタカナ語を紹介しました。中には、もとの英語とは違う意味で使われる言葉もありました。

スペック
スペックが高い=人の能力や属性が高い
ハードル
ハードルが高い=難しい
リストラ
企業の人員削減や整理解雇
ドンピシャ
まさにぴったり
マスト
必要不可欠なもの(こと)
PDCAサイクル
Plan→Do→Check→Actionの頭文字
ノウハウ
ものごとを行うための方法・知識・手順・コツ
プッシュ
推薦
スマート
(体型が)スリムな
ケーワイ(KY)
空気が読めない
アジェンダ
議題、協議事項

このようなカタカタ語が日本のビジネス現場で昔よりたくさん使われるようになり、日本人でも意味が分からない言葉が多いそうです。「日本の不思議なカタカタ語」パート1とパート2(この記事で)で計21個のカタカナ語を取り上げました。語源や使い方を理解するのに役立ててください。