体験談(留学・高度)

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By KOKORO(毎日新聞社+VAIJ主催、在ベトナム日本国大使館など後援)
ハノイの大学在学中にインターンとして日本で1年間働いて会話力をつけ、その後、新潟県の大学院に留学したリンさん。大学院では経営について学び、大学院や地元行政の支援も受けて卒業直後に新潟で起業しました。また、新潟のベトナム人コミュニティの活性化にも尽力しました。

今回の先輩

ファム・フォン・リンさん

  • 2013年ハノイ国家大学日本言語文化学部入学
  • 2017年沖縄でインターン(1年間)
  • 2018年ハノイ国家大学卒業
  • 2018年事業創造大学院大学事入学〈新潟県〉
  • 2020年同大学卒業(修士号取得)
  • 2021年起業〈新潟県〉
〈1995年生まれ、ハノイ市出身〉

日本で1年間のインターンシップ

インターンシップ仲間で休日にお出かけ〈沖縄〉

私はハノイ国家大学外国語大学の4年生だった2017年1月から1年間、大学の紹介で沖縄県のホテル でインターンとして働きました。同学年から11人が一緒に行き、そのうち私を含む6人がホールを担当しました。宴会やパーティーの設営・配膳(はいぜん)・片付けなどが仕事です。週末は結婚式の給仕もやりました。

1日の労働時間は8時間で、寮費や税金を差し引いた毎月の手取り給料は約11万円(約19,000,000 VND)でした。仕事や生活の中で日本語に慣れ親しみ、休日にはインターン仲間とよく遊びに行きました。職場の上司(日本人)が私たちを車で水族館などの観光地に連れて行ってくれることもありました。インターンシップの良さは、留学と違ってお金をもらいながら日本語会話を学べることでした。

インターンシップ後に留学

留学前に叔母とムーカンチャイに旅行

私は1年間の日本暮らしで日本語の会話力が伸びました。2018年1月に帰国後、日本語力を活かしてハノイの日本大使館でアルバイト(1カ月半)をしたり、技能実習生の送出機関で働いたりしました。送出機関では半年間、日本からの顧客(監理団体や技能実習生受け入れ会社の幹部など)を日本語センターに案内したり、観光に案内したり、面接の通訳をしたりしました。

同時に、日本で経営に関する知識も身につけたいと思い、大学院に留学する準備を進めました。そして、ハノイ国家大学とつながりがあり国家大学の卒業生も多く通う事業創造大学院大学(新潟県)を選び、2018年6月にハノイで面接を受け、合格しました。

起業支援が手厚い大学院に留学

大学院でお世話になった先生(右)や同級生

私は2018年10月に事業創造大学院大学に入学しました。この大学を選んだ理由はスタートアップ(起業)支援が充実しているからでした。 私は日本で働きたいと思ってはいましたが、インターンシップのときに、会社に何かを提案しても意思決定に時間や手続きがかかりすぎ、採用されないことが多いと感じていました。それなら、最初から自分で起業する方が面白いと思い、卒業後の起業を念頭にこの大学を選んだのです。

例えば、ホテルでセミナー会場の設営をする際、各席にコースターを置き、全部置き終わってからその上にコップを置いていくのが、決まったやり方でした。しかし、人が余っていたので、コースターを配置する途中から手の空いている人がその上にコップを置いていく方が早く終わると考え、提案しましたが、上司は「言った通りにやってください」と言うのみで、検討してくれませんでした。

留学生活の費用と収入

卒業前に仲間と大学で

この大学は修士課程だけで、外国人留学生が多いですが、授業はすべて日本語でした。私が払った入学金は30万円、1年間の授業料は120万円でした。しかし、新潟は住宅費などが安いうえ、アパートを3人でシェアしてさらに節約できたので、毎月の生活費は低く抑えられました。

収入面では、来日前に事業創造大学院大学を通じて文部科学省の「外国人留学生学習奨励費」を申請して認められ、JASSO経由で1年半、毎月48,000円をいただきました。また、ホテルの宴会スタッフやコンビニ店員のアルバイトもしました。スーパーマーケットに置かれている無料の求人情報誌で仕事を探し、気に入った仕事があれば、「タウンワーク」というスマホアプリで申し込みました

私の家計簿(1カ月の平均)

※大学院1年目の家計簿

※100円=17,300 VND (2022年12月12日現在)

収入:108,000円
日本政府の奨学金 ¥48,000
アルバイト(ホテルの宴会スタッフ) ¥60,000
支出:65,000円
家賃(1人分) ¥18,000
水道・光熱費・インターネット・備品 ¥12,000
携帯電話 ¥2,500
食費(主に自炊) ¥20,000
雑費(食事会、本など) ¥12,500
毎月の差額:43,000円

新潟でのベトナム人仲間

事業創造大学院大学の協力で、私は訪日前に新潟でのアパートを探すことができ、国家大学から一緒に留学する仲間2人と2LDK(2ベッドルーム)の部屋をシェアしました。そして、その3人で一緒に遊びに行ったり、他のベトナム人留学生を部屋に呼んでだれかの誕生パーティーを開いたりしました。

また、2020年に「新潟におけるベトナム人協会」を仲間と一緒に立ち上げ、新型コロナの感染拡大の時期に支援物資を募って新潟県内で困っているベトナム人約100世帯に配ったり、テトのパーティーをしたり、一緒に観光に行ったりしました。

卒業してすぐに起業

新潟市内で起業

私は大学院に在学中、ベトナムと関わりのある日本企業などが参加する「新潟ベトナム協会」と交流するなどし、こうした企業の課題や県内に住むベトナム人の課題などを把握しました。そして、そうした課題を解決する会社を大学院卒業の半年後に設立しました。起業のアドバイザーは大学院の先生たちでした。

ところで、外国人が日本で起業して「経営管理」という在留資格を取るには、500万円以上を出資して会社を設立しなければなりません。これは自分と両親のお金で工面しました。また、最初のオフィスは、新潟市内で起業家向けのシェアタイプの安いオフィスを借りました。

これからも越日の架け橋に

新潟県南魚沼市とベトナムとの友好提携を模索して市長と打ち合わせ

私は2021年に新潟で起業し、日本人にベトナム語を教えたり、企業からの依頼で通訳・翻訳を引き受けたりしました。それ以外に、技能実習を終えて特定技能外国人になりたいベトナム人に日本語を教え、転職先を紹介する事業も少しやりました。また、「新潟におけるベトナム人協会」の代表としてベトナム人コミュニティを活性化させる取り組みを続け、新潟の自治体や企業とベトナムをつなぐお手伝いもさせていただきました。

ただ、家族の問題が生じたため、会社をいったん閉じて、2023年2月にベトナムに帰国することにしました。当面はハノイで会社員として働きますが、これからも日本とベトナムの交流に関わっていきたいと思っています。また、「新潟におけるベトナム人協会」については、顧問として残り、大好きな新潟県や新潟の仲間たちのお役に立てることをこれからも探していくつもりです。