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外国人が妊娠しても退職・帰国する必要はありません!―技能実習も一時的にストップして休暇後に再開できます

ninshin- (1)
2023年12月13日

出入国在留管理庁の調査によると、「出産のための休暇をとりながら技能実習を続けられること」や「技能実習生が妊娠した場合、母国に帰国して出産し、その後また来日して実習を再開できること」、「出産したら健康保険からお金がもらえること」を知っている技能実習生は40%未満でした。この記事では、技能実習生や特定技能外国人を含む外国人労働者が妊娠・出産するときのサポート制度や、妊娠を理由に解雇されそうになったときにどうしたらよいかを紹介します。

1.妊娠を理由に退職や帰国を強制することはできません

妊娠・出産を理由に解雇することは違法

日本には「男女雇用機会均等法」という法律があり、妊娠・出産を理由に従業員に不利益な取り扱い(解雇など)をすることを禁じています。技能実習生や特定技能外国人、それ以外の外国人労働者もこの法律で守られています。

このため、妊娠したことを理由に、会社が外国人労働者に退職や帰国を求めることは違法です。また、そのような内容の契約も違法です。例えば、技能実習生が来日前に送出機関との間で「妊娠したら解雇する」という内容の契約や約束をしたとしても、その契約は日本では無効です。

技能実習生が妊娠・出産したとき

技能実習生が妊娠・出産した場合も、休暇を取って実習を続けることができます。

妊娠しても技能実習をやめる必要はありません。妊娠・出産を理由に不利益な取り扱い(解雇など)をすることは日本の法律で禁止されています。
妊娠を理由に帰国する必要はありません。送出機関との間でそのような約束をした場合でも、従う必要はありません。
・技能実習生も妊娠しながら働き続けることができ、出産前後は、法律で決められた休暇をとることができます。
出産前後の休暇中は技能実習を一時的にストップ(中断)し、休暇後に再開することができます。中断期間は技能実習の期間にカウントされません。
・妊娠した場合、組合や会社に報告し、今後の技能実習のスケジュールや内容について相談してください。組合や会社が適切に対応しない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に必ず相談してください。

産前産後の技能実習生の仕事

技能実習生が妊娠した場合、会社などは次のように対応しなければなりません。

・会社などは、妊娠中や出産後の技能実習生に、重いものを運ぶ仕事をさせたり、有害ガスが発散する場所で働かせたりしてはいけません。
・会社などは、妊娠中や出産後の技能実習生から求められた場合、時間外労働や休日労働、深夜労働をさせることはできません。
・会社などは、妊娠・出産した技能実習生が病院などで受診するために必要な時間を与えなければなりません。

会社や組合がこのような決まりに大きく違反した場合、その会社は技能実習生を5年間雇うことができなくなり、組合は技能実習に関する仕事を5年間できなくなります。

2.妊娠・出産についての外国人向け相談窓口

予期せず妊娠し、仕事や日本滞在を続けられるかどうか心配なときは、行政機関や民間の支援団体などに相談してサポートを受けてください。

・妊娠、出産、育児に関するさまざまな手続きや助成などについて、各地の国際交流協会などで相談に乗ってもらえます。

external link 各都道府県の相談窓口

技能実習を一時的にストップ(中断)し、休暇が終わってから再開すること▽出産のために母国に帰り、出産後にまた来日すること――などについて、組合がサポートしてくれない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に相談してください。

技能実習を一時的にストップするときには、技能実習計画の変更や在留資格の更新(在留カードの切り替え)をします。通常、組合がその手続きをします。組合がサポートしてくれない場合はOTITに相談してください。

external link OTITの母国語相談窓口

・1人で労基署やOTITなどに相談してもうまくいかない場合は、実績のある民間の支援団体に相談しましょう。下記の記事を参考にしてください。

external link ベトナム人向け相談窓口|KOKORO

3.妊婦への公的なサポート

母子手帳

外国人を含めて日本で住んでいる人が妊娠した場合、行政から次のようなサポートが受けられます。

母子健康手帳(母子手帳)

妊娠が分かったら、住んでいる地域の市区町村役場などで母子手帳(ぼし・てちょう)を受け取ります。母子手帳をもらうと、さまざまなサポートについて説明や連絡を受けることができます。

妊婦健康診査

妊娠したら、病院やクリニックで定期的に「妊婦健康診査(妊婦健診)」を受けましょう。妊婦健診には医療保険を使えません。しかし、母子手帳と同時にもらえる「受診票」を使うと、妊婦健診の費用の一部をサポートしてもらえます。

4.出産・育児のための休暇

外国人労働者を含めて日本で働いている人が出産する場合の休暇について紹介します。技能実習生もこうした休暇を取りながら技能実習を続けられます。

産前産後休業(産休)

・日本には「産前産後休業(産休)」という制度があり、外国人労働者もこの制度を使えます。これは労働基準法で定められています。

出産前の休暇:出産予定日まで最長6週間(双子以上は14週間)休めますので、会社に申請してください。実際の出産が出産予定日より後になった場合は、休業もその分延長されます。

出産後の休暇:法律によって産後8週間は働けません。ただし、産後6週間を過ぎ、本人が働くことを望む場合、医師からOKが出た内容の仕事をすることはできます。

育児休業

産前産後休業が終わってから、子どもの1歳の誕生日の前日まで「育児休業」を取ることができます。ただし、「子どもが1歳6か月になる日にも労働契約が続いている可能性のある人」が対象なので、技能実習生の場合は、残りの実習期間に注意してください。

・保育所に入所できないなどの事情がある場合は、最長で子どもの2歳の誕生日の前日まで休めます。

5.出産・育児に関する手当・助成

出産育児一時金

健康保険や国民健康保険の加入者が出産したときは、「出産育児一時金」をもらえます。技能実習生や特定技能外国人も健康保険に加入しているので、この一時金を受け取れます。

出産育児一時金の額:新生児1人につき500,000円(例外で488,000円の場合もあり)。双子などの場合は人数分。

母国に帰って産んだ場合も、日本の出産育児一時金を受け取れます。ただし、休暇中も健康保険をかけ続けることが必要です。

external link 出産育児一時金の支払方法など|厚生労働省

母国と日本を往復する飛行機代は自己負担です。

日本で出産すると、病院に支払う費用などで出産育児一時金をほとんど使ってしまいますが、母国で産むと安くすむ場合があります。

出産手当金

健康保険に加入している人が出産のために仕事を休み、その間に給料をもらえなかった場合などは、勤務先の健康保険組合などから出産手当金が支給されます。

育児休業給付金

1歳未満の子どもを育てるために育児休業を取る場合、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。会社などがハローワークに申請します。

各手当・助成の支給額や支給期間、申請方法などについては、下記の記事を読んでください。

external link 出産・育児への助成・手当・支援制度|KOKORO

健康保険や年金保険の保険料免除

・会社員や技能実習生、特定技能外国人などが加入する「健康保険」と「厚生年金」については、産前産後休業と育児休業の期間中は、保険料を払わなくてもかまいません。会社に手続きをしてもらいましょう。

・留学生などが加入する「国民年金」については、出産前後の4カ月間(双子以上の場合は6カ月間)の保険料が免除されます。市区町村役場で手続きをします。

6.技能実習は一時的にストップして出産後に再開できます

技能実習生が妊娠した場合、休暇を取って実習を一時的にストップ(中断)し、出産後に再開することができます。

技能実習の中断と再開

産前産後休業や育児休業の期間中は技能実習を一時的にストップ(中断)し、休暇が終わってから実習を再開することができます。その手続きは会社や組合が行います。

例えば、技能実習の期間が15カ月間残っている時点から産前産後休業や育児休業を使った場合、休暇が終わって職場に復帰した日から15カ月間、技能実習を続けることができます。

帰国前に入管で在留期間を更新しましょう

出産のために帰国し、出産後に再来日しようとする場合、再来日するまでに日本の在留期間が終わっていることがあります。その場合、ベトナムで日本の新しい在留資格を取るには、多額の費用や複雑な手続きが必要です。

そこで、ベトナムに帰国する前に入管で在留資格(ビザ)を更新し、出産後に再来日したときに在留期間が残っているようにするとよいです。

external link 出産で帰国する前にビザを更新したベトナム人の実例|KOKORO

7.まとめ

この記事では、日本で働いているときに妊娠した場合の決まりについて紹介しました。妊娠・出産を理由に解雇などの不利益な扱いをすることは日本の法律で禁止されています。

  • 妊娠を理由に退職や帰国を迫ることは違法です。
  • 妊娠を理由に解雇や帰国を通告されたときは、労基署やOTITに相談してください。本当はいやなのに、退職届けなどに無理に署名させられた場合も違法です。
  • 技能実習生は出産・育児のための休暇を取って技能実習を一時的にストップ(中断)し、休暇が終わってから再開することができます。出産・育児のための休暇は技能実習の期間にカウントされません。
  • 子どもが生まれたら50万円の一時金をもらえます。