困りごと解決
★基本情報=技能実習のトラブル解決
残業代を払ってもらえない▽有給休暇をもらえない▽失踪して別の仕事をしたい▽解雇されそうだ▽どうしても転職したい▽妊娠した――そのような技能実習のトラブルの解決に必要な知識と相談先を紹介します。
主なトラブルと相談先
技能実習で夢をかなえた先輩もたくさんいますが、技能実習をめぐるさまざまなトラブルも報告されています。多いのは残業代や職場での暴力・暴言、有給休暇、解雇などに関するトラブルです。妊娠に関する悩みも増えています。
行政の相談窓口
残業代を払ってもらえない、暴力や暴言を受ける、などのトラブルがあれば、まずは監理団体(組合)に相談してください。それでも解決しない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)にメッセージを送りましょう。
万一、通報によって会社や組合から不利益を受けた場合は、もう一度OTITに通報するか民間の支援団体(下記)に相談してください。また、労働基準監督署(労基署)やFRESCといった行政機関にも相談できます。各地に国際交流センターなどが設けている外国人相談窓口もあります。
一度の相談で解決しなくても、あきらめたり失踪したりせず、いくつかの機関や団体に相談してください。
民間の支援機関
民間の支援団体もあります。団体によって対応範囲は異なりますが、労働、雇用、生活、在留資格(ビザ)、再就職、妊娠などさまざまな相談に無料で応じてくれます。
〈支援団体の例〉
- 外国人実習生SNS相談室
- 日越ともいき支援会
- 岐阜一般労働組合 第2外国人支部
- 在日ベトナム人協会(VAIJ)
- 在仙台ベトナム人協会(SenTVA)
- 茨城県ベトナム人協会
これらの団体の相談窓口へは下記リンク先からアクセスできます。
さまざまなトラブルと解決方法
トラブル解決に必要な知識や解決事例を知っておき、被害を防ぎましょう。
失踪して別の仕事をしたい
「受け入れ先の会社に不満(残業代や暴力・暴言など)があるので、失踪して別の仕事をしたい」というケースがよくあります。実習先の会社から無断で逃げ出すことを「失踪」といいます。また、Facebookなどで高賃金の仕事を紹介する投稿があり、失踪を加速させています。
しかし、技能実習生が失踪して別の仕事に就いても、高収入が安定的に続くことはありません。そして、下記のようなたくさんのリスクや不利益があります。
〈失踪による不利益〉
- 他の仕事をすると不法滞在・不法就労になる。
- 雇用が不安定で、長期的な収入は元の会社より低くなる。
- 病気や大けがのときに医療保険が適用されない。
- 仕事で大けがをしても補償がないことが多い。
- 不法滞在(犯罪)なので、外を自由に歩けない。
- 紹介料をだまし取る詐欺も横行している。
失踪して得なことはありません。失踪する前にOTITや支援団体に相談しましょう。
どうしても転職したい
受け入れ先の会社が残業代を払わない、暴力を振るうなどの法律違反をしている場合は、OTITの支援を受けて会社を変えることができます。
解雇(強制帰国)されそうだ
受け入れ先の会社や組合が気に入らない技能実習生を途中でやめさせ、帰国させようとすることがあります。ひどい場合は、空港まで連れて行かれることもあります。多くの場合、自主的にやめるという趣旨の文章を書かされ、署名を強要されます。
しかし、日本の法律では「やむを得ない事由」がなければ、契約期間の途中で解雇することはできません。支援団体の助けで強制帰国を免れたり転職したりしたケースがいくつもありますので、知っておいてください。
有給休暇をもらえない
技能実習生には有給休暇を取得する権利があります。自分で交渉するか、OTITや支援団体などに相談してください。
パスポートや在留カードを預かる
実習先の会社や組合がパスポートや在留カードなどを預かることがあります。これは法律で禁止されていますので、OTITに連絡してください。対処してくれます。
難民認定申請をすると日本で働ける?
悪質なブローカーが「難民認定申請をして6カ月すると日本で自由に働けるようになる」と持ちかける場合があります。しかし、今では、本当の難民ではない人が難民認定を申請しても許可されず、ベトナムに強制送還されるリスクもあります。技能実習生が日本で難民として認められたケースはありません。
妊娠した
技能実習生が妊娠するケースが増えています。多くの場合、実習を途中で終えて帰国するように言われますが、法律では妊娠を理由に技能実習生を解雇することはできません。生まれた子どもの育児をだれかに手伝ってもらう必要がありますが、しばらく休業してから実習に戻ることも可能です。
支援団体の「NPO法人日越ともいき支援会」は妊婦の支援実績も豊富です。
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- 公益社団法人 ベトナム協会
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Vol. 48 失踪後、支援組織に助けられ
今回の先輩 グエン・ティ・ムンさん 2015年レホンフォン高校卒業〈ゲアン県〉 2015年バリアブンタウ大学入学 2016年大学中退、送出機関登録〈ハノイ〉 2017年訪日。講習後、技能実習開始〈長野県〉 2018年失踪〈長野県→愛知県〉 2019年転職〈大阪〉 〈1997年生まれ、ゲアン省出身〉 工場での技能実習以外に動物の世話やベビーシッターを長時間させられ、残業代ももらえなかったムンさん。社長の度重なる暴言もあって失踪したが、残った後輩たちを助けようと支援機関に相談した。すると、労基署が捜査に乗り出し、OTITも動いて……。 〈このページの内容〉 • 大学を中退し技能実習 • 送出機関 • 工場勤務なのにペットショップの仕事 • ベビーシッター • 心の糸が切れて失踪 • 日本人は親切だった • 失踪生活 •「外国人実習生支援」 • 行政が動いた! • 転籍 • 新しい職場 • 今の生活 大学を中退し技能実習 送出機関の日本語センターの先生や仲間〈ハノイで2017年〉 私は6人兄弟の5番目です。父は病気で2009年から仕事ができず(2019年に死亡)、母が農業で家計を支えていました。私は大学で1年間勉強しましたが、実家が苦しいのに自分だけ大学に通うことが心苦しく、中退して技能実習をすることを決意しました。家族は中退に反対しましたが、私の故郷では、多くの友人が大学に進まず外国で働いていたので、私も同じように働いて両親を助けたいと思ったのです。 送出機関 私はハノイの送出機関に登録し、全部で6,400ドルを支払いました。それ以外に、送出機関を紹介してくれた親せきの友人にも20,000,000ドン払いました。他に食費や交通費もあり、父は計200,000,000ドンを銀行から借りました。 【編集部からのアドバイス】 ・送出機関によって費用が違います。費用が高くても日本での給料が高いとは限りません。 ・ベトナム政府の規定で、送出機関の日本語教育費は約520時間に対し5,900,000VND以下、送出手数料は3,600 USD以下(3年契約の場合)となっています。 ・送出機関は、紹介者が紹介料を受け取ることを認めてはいけません。 ☆この記事を参考に送出機関を自分でも探しましょう。 こんなに違う、送出機関への費用 / 徹底比較 工場勤務なのにペットショップの仕事 飼育小屋で清掃をする同僚〈2017年〉 私は2017年6月に長野県の工場で技能実習を始めました。しかし、機械加工の実習以外に、この会社が経営するペットショップでも仕事をさせられました。毎日、朝から工場で働いた後、私を含む3人が車でペットショップに移動し、15時から19時まで仕事をしました。鳥や動物へのエサやり▽飼育小屋の掃除▽販売用のエサの包装――などです。土曜日は朝から晩までペットショップで、隣接するバラ園でせん定や掃除もさせられました。 また、寮で最初の1年間はWi-Fiのパスワードを教えてもらえず、自由に電話できませんでした。先輩も社長から怒られるので、パスワードを教えてくれません。訪日して約3カ月たったある日、先輩の携帯電話を借りて初めて家族に連絡できました。その後も、社長の目があるので自由に電話できませんでした。 ベビーシッター 仕事を記録した私のメモ(黒塗り部分は赤ちゃんの名前)〈2018年1月〉 技能実習生は工場のそばの寮に住みましたが、私を含む数人だけが2017年11月、ペットショップに近い監理団体の研修センターに移されました。社長は監理団体の理事長も兼ねており、私たちをセンターに住ませ、自分も2018年1月に1歳の娘と2人でここに移ってきました。それ以来、私たち実習生が社長の食事作りや洗濯、赤ちゃんの子守をすることになりました。また、毎日朝から鳥や犬にエサをあげたり、深夜に社長の飼っていたハトの世話をしたりもしました。 後輩実習生たちと私〈センターで2018年8月〉 失踪までの約10カ月間、私は毎日ベビーシッターをしました。赤ちゃんは私に一番なついていたので、主に私の担当でした。19時にセンターに帰り、23時から赤ちゃんと遊んだり寝かしつけたりし、1時までかかることもよくありました。おむつ交換もしました。休日もペットショップの仕事か赤ちゃんの世話です。私はこの子が好きでしたが、残業代は一円ももらえませんでした。 心の糸が切れて失踪 このような無賃労働に加え、私たちは社長からよく怒鳴られました。2018年8月に来た後輩実習生3人は日本語が分からず、社長の指示を理解できません。そんなとき、社長は「なぜ、こいつらにきちんと仕事を教えないんだ!」と私に怒鳴りました。社長はそれ以外にも気に入らないことがあるとよく激高しました。そのため男の実習生2人が失踪しました。私も同年10月のある夜、理由も分からずにひどく怒鳴られ、心の糸が切れてしまいました。 「もうここには居られない」と思い立ち、怒鳴られた3時間後にセンターを出ました。夜0時ごろのことでした。約600㍍離れた高速バス乗り場まで歩き、「私、名古屋に行きたいですけど、バスはどれですか」と聞いて名古屋行きのバスに乗ったのです。 日本人は親切だった 向かった先は愛知県の技能実習生たちの寮でした。彼らの1人を訪日前に紹介され、SNSで情報交換を続けていました。悩みを聞いてもらうこともあり、「もし失踪したら、うちにおいで」と言ってくれていました。しかし、実際に失踪するつもりはなかったので、寮への行き方が分かりません。そんな私を、道行く人たちが助けてくれました。 *高速バスを降り、タクシーに乗ろうとしましたが、目的地まで約2万円かかるとのことで断念。友人に電車での行き方を聞くにも、私の携帯電話はWi-Fiがないと使えません。そこで、運転手さんが携帯電話を貸してくれました。 *駅に着くと、今度は切符の買い方が分かりません。社長が怒るので外出許可を申請しにくく、長野県から出たことがなかったからです。通行人の少年に尋ねると、代わりに切符を買い、自動改札機まで連れて行ってくれました。 *電車内では乗客のおばさんに電話を借り、目的の駅に着いたときに教えてもらいました。 *電車を降り、切符を入れずに自動改札機を通ろうとしてアラームが鳴りました。しかし、駅員さんがやさしく助けてくれました。 失踪生活 友人は3ベッドルームの寮に3人で住んでいました。私はこのうち1室に、再就職するまで約11カ月間住ませてもらいました。失踪時、私の口座には約30万円ありましたが、途中でなくなり、彼らにお金を借りて暮らしました。失踪中は、日本語を毎日8時間勉強しました。不法就労をあっせんする有名なFacebookページは詐欺も多いので使わず、先輩や友人に仕事探しをお願いしました。また、友だちと花見などに行って気晴らしをしましたが、収入がないので遠くには行きませんでした。失踪中は「日本で働いて借金を返す前に警察に見つかってベトナムに送り返されたら……」といつも不安でした。後輩の皆さん、失踪だけはしないでください。 「外国人実習生支援」 「外国人実習生支援」のFBページ。ここからメッセージを送れます。 そんなある日、Facebookで榑松(くれまつ)さんのことを知りました。ある実習生が労働問題を彼に解決してもらったという投稿でした。榑松さんは「外国人実習生支援」というFacebookページで実習生の相談を受けています。私は長野に残っている後輩たちの処遇を改善してもらえないかと思い、2019年3月、思い切って榑松さんにSNSで連絡しました。 「仲間が工場勤務なのに他の仕事をやらされている」などと、簡単な日本語でメッセージを送り、社長が怒鳴っている動画も送りました。そして、約2週間後に彼の事務所(名古屋市)を訪ねました。彼はとても親身に相談に乗り、外国人技能実習機構(OTIT)や労基署に一緒に行って説明をしたり、電車のパスカードを作ってくれたりしました。 行政が動いた! 榑松さんに相談してからの経過は次の通りです。労基署やOTITが動いてくれました。 〈2019年〉 ・3月11日:榑松さんと面会。一緒にOTIT名古屋事務所を訪問。 ・3月20日:国会議員が私たちの事例を取り上げ、国会で質問(それを聞いてNHKが取材)。 ・4月1日:社長が怒鳴っている動画などをNHKが放送。 ・4月3日:労基署とOTITが長野県の会社に立ち入り調査。OTITが後輩実習生3人をホテルに保護。3人はその後、OTITの手配で別の会社に転職。 ・6月:フィリピン人の後輩数人もOTITに保護され、その後転職。 ・7月:私が長野県の労基署を訪問し残業代不払いを訴え。 ・11月:労基署は「小売店(ペットショップ)の清掃などを行わせた時間外労働について、技能実習生らに約1年間にわたって割増賃金を支払っていない」などとして、労働基準法違反(割増賃金不払いなど)の疑いでこの会社を送検。 厚労省発表の指導事例にも掲載(2020年10月) 〈2020年〉 ・2月:入管庁と厚労省はこの会社の技能実習計画の認定を取り消し。同社社長が理事長を務める監理団体への許可も取り消し。 NHKが全国放送〈2019年4月〉 転籍 榑松さん(左)は私の日本でのお父さん〈名古屋市で2019年9月〉 こうして会社は処分され、後輩たちは転籍できました。ただ、一度失踪したためか、私の転職先だけは決まりませんでした。榑松さんがあちこちに聞いて私の転職先を探してくれましたが、私と同じ職種の女性実習生は少なく、仕事があっても女子寮がないなどの理由で、なかなか見つかりませんでした。そんななか、榑松さんと懇意の黒田さんというベトナム語通訳の女性(西日本技能センター)が大阪府の抱月工業という会社にお願いしてくださり、就職できることになりました。2019年9月のことでした。 ・(監理団体)協同組合 西日本技能センター https://www.facebook.com/japanskill/ ※ベトナム語で問い合わせができます。 新しい職場 作業中の私〈2020年8月〉 抱月工業(大久保尚容社長)は従業員約70人で、2003年から実習生を受け入れ、今はエンジニアと実習生で計11人のベトナム人がいます。これまで女性実習生はいなかったので、私のために新たにアパートを借りてくれました。同社では、下記のようによい意味で驚きの連続でした。 ・社長が親切でやさしい。 ・現場リーダーたちが実習生に困ったことはないかよく聞いてくれる。仕事のやり方に関する意見交換会もある。 ・日本語能力試験(JLPT)に合格したら毎月の給料が上がる(N4:5,000円、N3:10,000円、N2:15,000円)。ほぼ全員がN3以上を取得して帰国する。 ・社員旅行がある(過去にベトナムに行った年もあった)。 とても働きやすい職場で、私は技能実習3号や特定技能などでできるだけ長くここで働きたいと希望しています。 抱月工業の工場 会社の忘年会(右から2人目が社長) 今の生活 私のJLPT・N3合格を祝って日本語教室の先生たちと食事会〈2020年2月〉 抱月工業の先輩たちは親切で、私と一緒に遊びに行ってくれる人もいます。また、私は地元の国際交流協会が主催する無料日本語教室に通っており、先生方の家に遊びに行ったりもします。 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円= 22,303 VND(2020年12月30日現在) 手取り給料(平均150,000円) 手取り給料 130,000円~160,000円 ※税金、社会保険料、寮費を引いた後の手取り額 ※このうち寮費は20,000円(水道・光熱費・Wi-Fi含む) 支出(合計 30,000円~50,000円) 食費 15,000円~20,000円 ※主に自炊 雑費・交通費 15,000円~20,000円 ※衣類、交通費、たまに外食 差額・貯金(100,000円~130,000円) 差額 100,000円~130,000円 ※1カ月110,000円~150,000円を実家に送金 榑松さんや黒田さん、今の社長のおかげで、私は今、充実した実習生活を送っています。後輩の実習生の皆さん、実習先で困ったことがあっても、悪い仲間に引き込まれたり、不法就労に走ったりせず、支援機関に粘り強く相談してください。 【編集部からのアドバイス】 実習先での問題はまず監理団体に相談し、それでも解決しない場合は、必ず外国人技能実習機構(OTIT)に相談してください。ベトナム語でも相談できます。電話もあります(0120-250-168)が、相談内容が深刻な場合は、紙に書いてOTITを訪問するか郵送する方が無難です。 ☆万一、OTITに相談しても解決しない場合は、下記のような民間の支援機関もあります。 外国人実習生支援(Facebook)https://www.facebook.com/jissyuseisien/ 日越ともいき支援会(E-mail)n.tomoiki@gmail.com 今回の先輩 Nguyễn Thị Mừng (グエン・ティ・ムン)さん 2015年レホンフォン高校卒業〈ゲアン〉 2015年バリアブンタウ大学入学 2016年大学中退、送出機関登録〈ハノイ〉 2017年訪日。講習後、技能実習開始〈長野〉 2018年失踪〈長野→愛知〉 2019年転職〈大阪〉 〈1997年生まれ、ゲアン省出身〉 工場での技能実習以外に動物の世話やベビーシッターを長時間させられ、残業代ももらえなかったムンさん。社長の度重なる暴言もあって失踪したが、残った後輩たちを助けようと支援機関に相談した。すると、労基署が捜査に乗り出し、OTITも動いて……。 〈このページの内容〉 • 大学を中退し技能実習 • 送出機関 • 工場勤務なのにペットショップの仕事 • ベビーシッター • 心の糸が切れて失踪 • 日本人は親切だった • 失踪生活 •「外国人実習生支援」 • 行政が動いた! • 転籍 • 新しい職場 • 今の生活 大学を中退し技能実習 私は6人兄弟の5番目です。父は病気で2009年から仕事ができず(2019年に死亡)、母が農業で家計を支えていました。私は大学で1年間勉強しましたが、実家が苦しいのに自分だけ大学に通うことが心苦しく、中退して技能実習をすることを決意しました。家族は中退に反対しましたが、私の故郷では、多くの友人が大学に進まず外国で働いていたので、私も同じように働いて両親を助けたいと思ったのです。 送出機関の日本語センターの先生や仲間〈ハノイで2017年〉 送出機関 私はハノイの送出機関に登録し、全部で6,400ドルを支払いました。それ以外に、送出機関を紹介してくれた親せきの友人にも20,000,000ドン払いました。他に食費や交通費もあり、父は計200,000,000ドンを銀行から借りました。 【編集部からのアドバイス】 ・送出機関によって費用が違います。費用が高くても日本での給料が高いとは限りません。 ・ベトナム政府の規定で、送出機関の日本語教育費は約520時間に対し5,900,000VND以下、送出手数料は3,600 USD以下(3年契約の場合)となっています。 ・送出機関は、紹介者が紹介料を受け取ることを認めてはいけません。 ☆この記事を参考に送出機関を自分でも探しましょう。 こんなに違う、送出機関への費用 / 徹底比較 工場勤務なのにペットショップの仕事 私は2017年6月に長野県の工場で技能実習を始めました。しかし、機械加工の実習以外に、この会社が経営するペットショップでも仕事をさせられました。毎日、朝から工場で働いた後、私を含む3人が車でペットショップに移動し、15時から19時まで仕事をしました。鳥や動物へのエサやり▽飼育小屋の掃除▽販売用のエサの包装――などです。土曜日は朝から晩までペットショップで、隣接するバラ園でせん定や掃除もさせられました。 また、寮で最初の1年間はWi-Fiのパスワードを教えてもらえず、自由に電話できませんでした。先輩も社長から怒られるので、パスワードを教えてくれません。訪日して約3カ月たったある日、先輩の携帯電話を借りて初めて家族に連絡できました。その後も、社長の目があるので自由に電話できませんでした。 飼育小屋で清掃をする同僚〈2017年〉 ベビーシッター 技能実習生は工場のそばの寮に住みましたが、私を含む数人だけが2017年11月、ペットショップに近い監理団体の研修センターに移されました。社長は監理団体の理事長も兼ねており、私たちをセンターに住ませ、自分も2018年1月に1歳の娘と2人でここに移ってきました。それ以来、私たち実習生が社長の食事作りや洗濯、赤ちゃんの子守をすることになりました。また、毎日朝から鳥や犬にエサをあげたり、深夜に社長の飼っていたハトの世話をしたりもしました。 仕事を記録した私のメモ(黒塗り部分は赤ちゃんの名前)〈2018年1月〉 失踪までの約10カ月間、私は毎日ベビーシッターをしました。赤ちゃんは私に一番なついていたので、主に私の担当でした。19時にセンターに帰り、23時から赤ちゃんと遊んだり寝かしつけたりし、1時までかかることもよくありました。おむつ交換もしました。休日もペットショップの仕事か赤ちゃんの世話です。私はこの子が好きでしたが、残業代は一円ももらえませんでした。 後輩実習生たちと私〈センターで2018年8月〉 心の糸が切れて失踪 このような無賃労働に加え、私たちは社長からよく怒鳴られました。2018年8月に来た後輩実習生3人は日本語が分からず、社長の指示を理解できません。そんなとき、社長は「なぜ、こいつらにきちんと仕事を教えないんだ!」と私に怒鳴りました。社長はそれ以外にも気に入らないことがあるとよく激高しました。そのため男の実習生2人が失踪しました。私も同年10月のある夜、理由も分からずにひどく怒鳴られ、心の糸が切れてしまいました。 「もうここには居られない」と思い立ち、怒鳴られた3時間後にセンターを出ました。夜0時ごろのことでした。約600㍍離れた高速バス乗り場まで歩き、「私、名古屋に行きたいですけど、バスはどれですか」と聞いて名古屋行きのバスに乗ったのです。 日本人は親切だった 向かった先は愛知県の技能実習生たちの寮でした。彼らの1人を訪日前に紹介され、SNSで情報交換を続けていました。悩みを聞いてもらうこともあり、「もし失踪したら、うちにおいで」と言ってくれていました。しかし、実際に失踪するつもりはなかったので、寮への行き方が分かりません。そんな私を、道行く人たちが助けてくれました。 *高速バスを降り、タクシーに乗ろうとしましたが、目的地まで約2万円かかるとのことで断念。友人に電車での行き方を聞くにも、私の携帯電話はWi-Fiがないと使えません。そこで、運転手さんが携帯電話を貸してくれました。 *駅に着くと、今度は切符の買い方が分かりません。社長が怒るので外出許可を申請しにくく、長野県から出たことがなかったからです。通行人の少年に尋ねると、代わりに切符を買い、自動改札機まで連れて行ってくれました。 *電車内では乗客のおばさんに電話を借り、目的の駅に着いたときに教えてもらいました。 *電車を降り、切符を入れずに自動改札機を通ろうとしてアラームが鳴りました。しかし、駅員さんがやさしく助けてくれました。 失踪生活 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抱月工業の先輩たちは親切で、私と一緒に遊びに行ってくれる人もいます。また、私は地元の国際交流協会が主催する無料日本語教室に通っており、先生方の家に遊びに行ったりもします。 私のJLPT・N3合格を祝って日本語教室の先生たちと食事会〈2020年2月〉 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円= 22,303 VND(2020年12月30日現在) 手取り給料(平均150,000円) 手取り給料 130,000円~160,000円 ※税金、社会保険料、寮費を引いた後の手取り額 ※このうち寮費は20,000円(水道・光熱費・Wi-Fi含む) 支出(合計 30,000円~50,000円) 食費 15,000円~20,000円 ※主に自炊 雑費・交通費 15,000円~20,000円 ※衣類、交通費、たまに外食 差額・貯金(100,000円~130,000円) 差額 100,000円~130,000円 ※1カ月110,000円~150,000円を実家に送金 榑松さんや黒田さん、今の社長のおかげで、私は今、充実した実習生活を送っています。後輩の実習生の皆さん、実習先で困ったことがあっても、悪い仲間に引き込まれたり、不法就労に走ったりせず、支援機関に粘り強く相談してください。 【編集部からのアドバイス】 実習先での問題はまず監理団体に相談し、それでも解決しない場合は、必ず外国人技能実習機構(OTIT)に相談してください。ベトナム語でも相談できます。電話もあります(0120-250-168)が、相談内容が深刻な場合は、紙に書いてOTITを訪問するか郵送する方が無難です。 ☆万一、OTITに相談しても解決しない場合は、下記のような民間の支援機関もあります。 外国人実習生支援(Facebook)https://www.facebook.com/jissyuseisien/ 日越ともいき支援会(E-mail)n.tomoiki@gmail.com
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Vol. 42 失踪中の不法就労の様子とは
今回の先輩 ミンさん=仮名 2012 年6月短大卒業〈ホーチミン〉 2017年 3月日本語センター入所〈ホーチミン〉 2018年 1月訪日→講習〈千葉県〉 2018年 2月建築会社で技能実習〈埼玉県〉 2018年 8月失踪〈千葉県→群馬県→茨城県〉 2019年 3月入管に出頭 2019年 8月日越ともいき支援会で帰国待ち〈東京〉 〈1991年生まれ、ベンチェ省出身〉 建築の技能実習先から失踪し不法就労を重ねたミンさん(=仮名)。ミンさんの失踪の経緯や失踪中の生活、どうしたら失踪せずにすんだかを紹介する。 面接に合格 ホーチミン市の街並み(資料写真) 私は短大を卒業後、ホーチミンの二つの会社で仕事をしました。しかし、日本に行ってもっとお金を稼いで両親を楽にしたいと思い、技能実習に応募しました。2017年3月、送出機関で勉強を始め、企業の面接を受けました。「とび作業は疲れる」と先輩から聞いていたので、他の業種を希望していましたが、面接に5回落ち、6回目で初めて合格したのがとび作業の仕事だったので、そこで働くことにしました。私が送出機関に支払った費用は送出手数料や授業料、寮費などすべて含めて150,000,000ドン(約68万円)でした。これは両親が銀行から借りました。 【編集部からのアドバイス】 ・送出機関によって手数料が違います。高い手数料を払ったからといって高い給料の実習先を紹介されるとは限りません。 ・ベトナム政府の規定で、技能実習生への日本語教育費は約520時間に対し5,900,000ドン以下、送出手数料は3,600 USD以下(3年契約の場合)となっています。 ・送出機関や実習先の選び方はこのリンク先を参考にしてください。 Link:こんなに違う、送出機関への費用 / 徹底比較 技能実習開始 寮の部屋(9階)からみた満開の桜並木〈埼玉県で2018年〉 私は2018年1月に訪日し、2月から埼玉県の建築会社で技能実習を始めました。送出機関の同級生2人も一緒で、私たちがこの会社で初めての技能実習生でした。毎朝、自転車で会社に行き、会社から日本人の先輩が運転する車で現場に行きました。現場は一戸建てが多く、たまに高層住宅もありました。朝5時に寮を出て夕方6時か7時に帰る生活でした。 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円=21,980ドン(2020年9月24日現在) 収入(平均90,000円) 手取り給料 90,000円 ※税金、社会保険料、寮費を差し引いた後の手取り額 ※差引額=寮費20,000円、水道・光熱費5,000円~6,000円、Wi-Fi 1,600円 支出(平均30,000円) 食費 27,000円 ※主に自炊 雑費・交通費 3,000円 差額・貯金(平均60,000~70,000円) 差額 平均60,000~70,000円 ※差額は両親に送金 給料への不満 高層住宅の大規模修繕の現場〈埼玉県で2018年2月〉 私たちは同郷の友人や送出機関の同級生などたくさんの仲間とSNSで情報交換をしながら実習生活を送ります。訪日してしばらくすると、私たちは、仕事内容はきついのに、手取り月給(約90,000円)は関東の技能実習仲間の中で最低水準であることが分かりました。 その上、別の建築会社の実習生からこんなことを聞きました。「僕たちの会社では、会社と現場を往復する移動時間の一部に対し残業代が支払われている」。私たちも会社から現場に片道30分~2時間かけて移動していましたが、その時間は無給でした。そこで、私たち3人は移動時間に対して賃金を支払ってくれるよう社長に直訴しました。しかし、社長の答えは「移動時間は仕事ではないので賃金は支払えない」というものでした。 私たちはその後、監理団体にも相談しました。担当者が寮に来たときに、ベトナムの送出機関の通訳にメッセンジャー電話で通訳してもらって交渉しました。しかし、「社長が決めたことだから仕方がない」という答えでした。 安全管理への不満 さまざまな資材が体の近くに落ちてくることがあり、身の危険を感じた もっと大きな不満は作業現場の安全性でした。日本人の先輩が高所から金属パイプなどを下に落とし、私に受け取るように指示します。最初は取り損ねることもあり、「床に傷が付く」としかられました。しかし、そのような受け渡しは危険です。また、頭の近くに足場の金属板(アンチ)などが落ちてくることもありました。私は「この会社では、作業現場の安全が徹底されておらず、働き続けるのは非常に危険だ」と感じました。そこで、送出機関に「別の仕事に移れないか」と相談しましたが、「今はできない」と言われました。 「この会社には期待できない」と絶望 寮を後にして同僚と2人で失踪 こうして私たちは「この会社は給料が低すぎるし、安全面の改善も期待できない」と思うようになりました。そして、私と同僚の1人は失踪を決意しました。残る1人も私たちの半年後に失踪することになります。今から思うと、外国人技能実習機構(OTIT)に相談すべきでしたが、Wi-Fiだけを利用して携帯電話の通話契約をしていなかったのと、OTITのホームページから相談内容を送信できることを知らなかったので、相談しませんでした。 【編集部からのアドバイス】 技能実習生が受入企業から失踪すると在留資格が取り消される恐れがありますし、在留期間を過ぎると「不法滞在」になります。また、入管の許可なく別の職場で働くと「不法就労」になります。不法滞在も不法就労も犯罪(出入国管理法違反)です。 実習先での問題はまず監理団体に相談し、それでも解決しない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に必ず相談してください。下記ページからベトナム語で相談内容を送信できます。電話もあります(0120-250-168)。 ☆万一、OTITに相談しても解決しない場合は、下記のような民間の相談窓口もあります。 日越ともいき支援会(E-mail)n.tomoiki@gmail.com 外国人実習生支援(Facebook)https://www.facebook.com/jissyuseisien/ 失踪 寮の近くの駅。この駅から電車に乗って千葉県に行きました。 実習を始めて約半年後の2018年8月、給料日の翌日に私と同僚は黙って寮を去り、千葉県の実習生の寮に行きました。そして、そこで約2カ月間住ませてもらいました。私たちと同じ送出機関を出た仲間3人が住んでいる寮でした。 そこに住みながら、人づてに仕事を探していたところ、ベトナム人仲間の1人からメッセージがあり、仕事内容や給料が書かれていました。少ない給料でしたが、なかなか仕事が見つからなかったので、妥協しました。失踪者に仕事を紹介するFacebookページがありますが、「紹介料をだまし取られることも多い」「よい仕事が少ない」などと聞いていたので、私は使いませんでした。 弁当工場で不法就労(約5カ月間) 〈資料写真〉 紹介された勤務地は群馬県でした。メッセンジャーで連絡をくれた人の知人、デュックさん(=仮名)が働いている食品加工工場で、弁当箱におかずを入れたり、弁当箱のふたを閉めたりする仕事でした。デュックさんの同僚のベトナム人が何らかの事情で休みがちだったので、私はその人が休む日だけ“替え玉”として働きました。夜にデュックさんからメッセンジャーで連絡があれば、翌日出勤するという形態でした。私はこの工場で働くにあたって、会社の責任者とは一度も会わず、デュックさんに連れられて職場に行き、作業着もデュックさんから受け取り、デュックさんの指示に従って働きました。 私の1カ月の勤務日数は10日間に満たず、手取り月給は約60,000円でした。月給はデュックさんから手渡しで受け取りました。私はデュックさんがどういう在留資格で働いているのかさえ知りませんでした。私はデュックさんら5、6人のベトナム人と同じチームで働きました。大きな工場でしたが、ほとんど会話をしなかったので、全体でベトナム人が何人ぐらいいたのか分かりません。また、全身を作業着で覆って目だけを出していたので、私のことを気にする人もいませんでした。 住宅は別ルートで紹介され、ベトナム人6人で部屋をシェアしました。1人の家賃は月10,000円、水道・光熱費は5,000円~7,000円で、ほかの5人がどこで働いていたかは知りません。このときは給料が少なすぎて実家に送金できなかったので、次の仕事を探しながら働きました。 イチゴ農園で不法就労(約1年間) 在留カードの提出なしでイチゴ農園に“就職” 約5カ月後、茨城県のイチゴ農園に移りました。ここを紹介してくれたのは送出機関の同級生で、埼玉県の別の建築会社から失踪したタムさん(=仮名)でした。このイチゴ農園で先に働いていたタムさんに連れられて農園の経営者(日本人)に会いましたが、彼は私の在留カードをチェックせず、私の名前を聞いて仕事内容を説明しただけでした。 イチゴ農園での主な仕事は収穫でした〈資料写真〉 イチゴ農園での主な仕事は収穫でした。朝7時~夕方5時が定時で、残業も時々ありました。手取り月給は平均約15万円。毎月8~11万円を実家に送ることができ、ここで働き始めて約8カ月でベトナムでの借金を完済することができました。不法就労でしたが、日本に来て初めて安定した気持ちになりました。私たちには多額の借金があるので、最低限の収入がないと気持ちが落ち着かないのです。 肩身の狭い生活 失踪中の外出は食品の買い出しぐらいでした〈群馬県で2019年〉 住居は、タムさんらイチゴ農園の同僚4人とシェアし、1人あたりの家賃(水道・光熱費含む)は10,000円だけでした。同居の同僚も全員ベトナム人の失踪者で、私たちは全員、現金の手渡しで給料を受け取っていました。 群馬県でも茨城県でも不法滞在なので肩身の狭い生活でした。外出時に警察官に職務質問されて不法滞在が発覚するとベトナムに強制送還されることもあり、実家への送金ができなくなるので、休日もあまり外出しないようにしました。買い物も、外で買うのは食品ぐらいで、他の商品はインターネットで購入(代金引換)しました。私は外で警察官に会いませんでしたが、仲間は警察官を見かけると道路わきなどに隠れたそうです。 入管に出頭 入管に出頭するために降りた東京の品川駅〈2020年3月〉 2020年になって新型コロナウイルスの感染が日本で拡大し、両親がとても心配し、早く帰国するように強く言われました。また、少し前に茨城県でベトナム人が入管法違反で逮捕され、私も窮屈な生活に疲れ始めていました。そこで、2020年3月下旬、東京入管に出頭しました。入管では「出頭確認書」を手渡されてその日に仮放免され、翌月、もう一度入管に行くと「自分で航空券を買って帰国してください」と言われました。 仕事を辞めてからは節約のため食料も十分に買えませんでした〈千葉県で2020年3月〉 イチゴ園を出てからは、千葉県の友人宅に月23,000円で住ませてもらっていました。私はイチゴ園で最後にもらった給料で生活をしていましたが、新型コロナの影響でアルバイト先が見つからず、6月に実家から約10万円を送ってもらいました。その後、入管で出会ったベトナム人の紹介で8月12日からは東京のNPO法人「日越ともいき支援会」に住ませてもらい、帰国便の順番を待っています。 これから日本に来る皆さんは技能実習先の手取り給料や評判などをよく調べてから面接を受けるようにしてください。そして、希望する会社の面接に受かるよう、日本語の勉強もしっかりやってください。 今回の先輩 Mình(ミン)さん=仮名 2012 年6月短大卒業〈ホーチミン〉 2017年 3月日本語センター入所〈ホーチミン〉 2018年 1月訪日→講習〈千葉〉 2018年 2月建築会社で技能実習〈埼玉〉 2018年 8月失踪〈千葉→群馬→茨城〉 2019年 3月入管に出頭 2019年 8月日越ともいき支援会で帰国待ち〈東京〉 〈1991年生まれ、ベンチェ省出身〉 建築の技能実習先から失踪し不法就労を重ねたミンさん(=仮名)。ミンさんの失踪の経緯や失踪中の生活、どうしたら失踪せずにすんだかを紹介する。 面接に合格 私は短大を卒業後、ホーチミンの二つの会社で仕事をしました。しかし、日本に行ってもっとお金を稼いで両親を楽にしたいと思い、技能実習に応募しました。2017年3月、送出機関で勉強を始め、企業の面接を受けました。「とび作業は疲れる」と先輩から聞いていたので、他の業種を希望していましたが、面接に5回落ち、6回目で初めて合格したのがとび作業の仕事だったので、そこで働くことにしました。私が送出機関に支払った費用は送出手数料や授業料、寮費などすべて含めて150,000,000ドン(約68万円)でした。これは両親が銀行から借りました。 ホーチミン市の街並み(資料写真) 【編集部からのアドバイス】 ・送出機関によって手数料が違います。高い手数料を払ったからといって高い給料の実習先を紹介されるとは限りません。 ・ベトナム政府の規定で、技能実習生への日本語教育費は約520時間に対し5,900,000ドン以下、送出手数料は3,600 USD以下(3年契約の場合)となっています。 ・送出機関や実習先の選び方はこのリンク先を参考にしてください。 Link:こんなに違う、送出機関への費用 / 徹底比較 技能実習開始 私は2018年1月に訪日し、2月から埼玉県の建築会社で技能実習を始めました。送出機関の同級生2人も一緒で、私たちがこの会社で初めての技能実習生でした。毎朝、自転車で会社に行き、会社から日本人の先輩が運転する車で現場に行きました。現場は一戸建てが多く、たまに高層住宅もありました。朝5時に寮を出て夕方6時か7時に帰る生活でした。 寮の部屋(9階)からみた満開の桜並木〈埼玉県で2018年〉 私の家計簿(1カ月の平均) ※100円=21,980ドン(2020年9月24日現在) 収入(平均90,000円) 手取り給料 90,000円 ※税金、社会保険料、寮費を差し引いた後の手取り額 ※差引額=寮費20,000円、水道・光熱費5,000円~6,000円、Wi-Fi 1,600円 支出(平均30,000円) 食費 27,000円 ※主に自炊 雑費・交通費 3,000円 差額・貯金(平均60,000~70,000円) 差額 平均60,000~70,000円 ※差額は両親に送金 給料への不満 私たちは同郷の友人や送出機関の同級生などたくさんの仲間とSNSで情報交換をしながら実習生活を送ります。訪日してしばらくすると、私たちは、仕事内容はきついのに、手取り月給(約90,000円)は関東の技能実習仲間の中で最低水準であることが分かりました。 その上、別の建築会社の実習生からこんなことを聞きました。「僕たちの会社では、会社と現場を往復する移動時間の一部に対し残業代が支払われている」。私たちも会社から現場に片道30分~2時間かけて移動していましたが、その時間は無給でした。そこで、私たち3人は移動時間に対して賃金を支払ってくれるよう社長に直訴しました。しかし、社長の答えは「移動時間は仕事ではないので賃金は支払えない」というものでした。 私たちはその後、監理団体にも相談しました。担当者が寮に来たときに、ベトナムの送出機関の通訳にメッセンジャー電話で通訳してもらって交渉しました。しかし、「社長が決めたことだから仕方がない」という答えでした。 高層住宅の大規模修繕の現場〈埼玉県で2018年2月〉 安全管理への不満 もっと大きな不満は作業現場の安全性でした。日本人の先輩が高所から金属パイプなどを下に落とし、私に受け取るように指示します。最初は取り損ねることもあり、「床に傷が付く」としかられました。しかし、そのような受け渡しは危険です。また、頭の近くに足場の金属板(アンチ)などが落ちてくることもありました。私は「この会社では、作業現場の安全が徹底されておらず、働き続けるのは非常に危険だ」と感じました。そこで、送出機関に「別の仕事に移れないか」と相談しましたが、「今はできない」と言われました。 さまざまな資材が体の近くに落ちてくることがあり、身の危険を感じた。 「この会社には期待できない」と絶望 こうして私たちは「この会社は給料が低すぎるし、安全面の改善も期待できない」と思うようになりました。そして、私と同僚の1人は失踪を決意しました。残る1人も私たちの半年後に失踪することになります。今から思うと、外国人技能実習機構(OTIT)に相談すべきでしたが、Wi-Fiだけを利用して携帯電話の通話契約をしていなかったのと、OTITのホームページから相談内容を送信できることを知らなかったので、相談しませんでした。 寮を後にして同僚と2人で失踪 【編集部からのアドバイス】 技能実習生が受入企業から失踪すると在留資格が取り消される恐れがありますし、在留期間を過ぎると「不法滞在」になります。また、入管の許可なく別の職場で働くと「不法就労」になります。不法滞在も不法就労も犯罪(出入国管理法違反)です。 実習先での問題はまず監理団体に相談し、それでも解決しない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に必ず相談してください。下記ページからベトナム語で相談内容を送信できます。電話もあります(0120-250-168)。 ☆万一、OTITに相談しても解決しない場合は、下記のような民間の相談窓口もあります。 日越ともいき支援会(E-mail)n.tomoiki@gmail.com 外国人実習生支援(Facebook)https://www.facebook.com/jissyuseisien/ 失踪 実習を始めて約半年後の2018年8月、給料日の翌日に私と同僚は黙って寮を去り、千葉県の実習生の寮に行きました。そして、そこで約2カ月間住ませてもらいました。私たちと同じ送出機関を出た仲間3人が住んでいる寮でした。 そこに住みながら、人づてに仕事を探していたところ、ベトナム人仲間の1人からメッセージがあり、仕事内容や給料が書かれていました。少ない給料でしたが、なかなか仕事が見つからなかったので、妥協しました。失踪者に仕事を紹介するFacebookページがありますが、「紹介料をだまし取られることも多い」「よい仕事が少ない」などと聞いていたので、私は使いませんでした。 寮の近くの駅。この駅から電車に乗って千葉県に行きました。 弁当工場で不法就労(約5カ月間) 紹介された勤務地は群馬県でした。メッセンジャーで連絡をくれた人の知人、デュックさん(=仮名)が働いている食品加工工場で、弁当箱におかずを入れたり、弁当箱のふたを閉めたりする仕事でした。デュックさんの同僚のベトナム人が何らかの事情で休みがちだったので、私はその人が休む日だけ“替え玉”として働きました。夜にデュックさんからメッセンジャーで連絡があれば、翌日出勤するという形態でした。私はこの工場で働くにあたって、会社の責任者とは一度も会わず、デュックさんに連れられて職場に行き、作業着もデュックさんから受け取り、デュックさんの指示に従って働きました。 〈資料写真〉 私の1カ月の勤務日数は10日間に満たず、手取り月給は約60,000円でした。月給はデュックさんから手渡しで受け取りました。私はデュックさんがどういう在留資格で働いているのかさえ知りませんでした。私はデュックさんら5、6人のベトナム人と同じチームで働きました。大きな工場でしたが、ほとんど会話をしなかったので、全体でベトナム人が何人ぐらいいたのか分かりません。また、全身を作業着で覆って目だけを出していたので、私のことを気にする人もいませんでした。 住宅は別ルートで紹介され、ベトナム人6人で部屋をシェアしました。1人の家賃は月10,000円、水道・光熱費は5,000円~7,000円で、ほかの5人がどこで働いていたかは知りません。このときは給料が少なすぎて実家に送金できなかったので、次の仕事を探しながら働きました。 イチゴ農園で不法就労(約1年間) 約5カ月後、茨城県のイチゴ農園に移りました。ここを紹介してくれたのは送出機関の同級生で、埼玉県の別の建築会社から失踪したタムさん(=仮名)でした。このイチゴ農園で先に働いていたタムさんに連れられて農園の経営者(日本人)に会いましたが、彼は私の在留カードをチェックせず、私の名前を聞いて仕事内容を説明しただけでした。 在留カードの提出なしでイチゴ農園に“就職” イチゴ農園での主な仕事は収穫でした。朝7時~夕方5時が定時で、残業も時々ありました。手取り月給は平均約15万円。毎月8~11万円を実家に送ることができ、ここで働き始めて約8カ月でベトナムでの借金を完済することができました。不法就労でしたが、日本に来て初めて安定した気持ちになりました。私たちには多額の借金があるので、最低限の収入がないと気持ちが落ち着かないのです。 イチゴ農園での主な仕事は収穫でした〈資料写真〉 肩身の狭い生活 住居は、タムさんらイチゴ農園の同僚4人とシェアし、1人あたりの家賃(水道・光熱費含む)は10,000円だけでした。同居の同僚も全員ベトナム人の失踪者で、私たちは全員、現金の手渡しで給料を受け取っていました。 群馬県でも茨城県でも不法滞在なので肩身の狭い生活でした。外出時に警察官に職務質問されて不法滞在が発覚するとベトナムに強制送還されることもあり、実家への送金ができなくなるので、休日もあまり外出しないようにしました。買い物も、外で買うのは食品ぐらいで、他の商品はインターネットで購入(代金引換)しました。私は外で警察官に会いませんでしたが、仲間は警察官を見かけると道路わきなどに隠れたそうです。 失踪中の外出は食品の買い出しぐらいでした〈群馬県で2019年〉 入管に出頭 2020年になって新型コロナウイルスの感染が日本で拡大し、両親がとても心配し、早く帰国するように強く言われました。また、少し前に茨城県でベトナム人が入管法違反で逮捕され、私も窮屈な生活に疲れ始めていました。そこで、2020年3月下旬、東京入管に出頭しました。入管では「出頭確認書」を手渡されてその日に仮放免され、翌月、もう一度入管に行くと「自分で航空券を買って帰国してください」と言われました。 入管に出頭するために降りた東京の品川駅〈2020年3月〉 イチゴ園を出てからは、千葉県の友人宅に月23,000円で住ませてもらっていました。私はイチゴ園で最後にもらった給料で生活をしていましたが、新型コロナの影響でアルバイト先が見つからず、6月に実家から約10万円を送ってもらいました。その後、入管で出会ったベトナム人の紹介で8月12日からは東京のNPO法人「日越ともいき支援会」に住ませてもらい、帰国便の順番を待っています。 これから日本に来る皆さんは技能実習先の手取り給料や評判などをよく調べてから面接を受けるようにしてください。そして、希望する会社の面接に受かるよう、日本語の勉強もしっかりやってください。 仕事を辞めてからは節約のため食料も十分に買えませんでした〈千葉県で2020年3月〉
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総まとめ・ベトナム人向け相談窓口
学習や仕事(技能実習・正社員・派遣・アルバイト)、生活、在留資格などの関係で困ったことが起こり、会社や受入組合、学校、先輩などに相談しても解決しない場合、どこに相談したらいいでしょうか? 多くの先輩がこれまでさまざまな相談窓口や支援団体に助けられています。一つの窓口で解決しない場合でもあきらめたり失踪したりせず、複数の機関に相談してみてください。 知っておきたい相談窓口 日越ともいき支援会 外国人技能実習機構(OTIT) 技能実習で困ったことが起き、監理団体(受入組合)や受入会社が適切に対応しない場合は、まずは外国人技能実習機構(OTIT)に相談してください。公式HPからベトナム語で相談内容を送信できます。フリーダイヤルの電話(0120-250-168)もあります。 OTITの事務所を直接訪れるのも有効です。その際、自分の在留カードをコンビニでコピーし、その紙の余白部分にあなたの悩みや不満の要点を書いて持参することをお勧めします。事務所に着いたら、紙を読んでもらってから自分で説明もします。必要がある場合は、OTITが通訳を手配してくれます。 労働基準監督署(労基署) 技能実習生も留学生も、残業代を払ってもらえないなどの相談は全国の労働基準監督署に相談してください。最近は外国人の相談にも対応しています。 全国の労基署 実績のある民間の支援団体 外国人実習生支援 OTITや労基署に相談しても解決しない場合やこのような公的機関に1人でうまく相談できない場合、次のような民間の支援団体のサポートを得る方法があります。いずれも実績の多い団体です。 外国人実習生SNS相談室(Facebook) =技能実習生の労働問題、雇用問題、生活問題、在留資格関連 日越ともいき支援会 =留学生や技能実習生などあらゆるベトナム人の労働・雇用・生活・就職・在留資格などに関する問題 岐阜一般労働組合 第2外国人支部 =甄凱(けんかい)支部長:090・8496・9668(日本語) =技能実習生、正社員、派遣労働者などあらゆる外国人労働者の労働や雇用、在留資格に関する問題 活発なベトナム人団体 在日ベトナム人協会(VAIJ) =生活・医療・健康に関するホットライン:050-6874-8385 在仙台ベトナム人協会(SenTVA) 茨城県ベトナム人協会 ベトナム語の通じる相談窓口(主要都市) 全国の主要都市にあるベトナム語の通じる主な相談窓口を紹介します。 ■東京都 外国人在留支援センター(FRESC) =あらゆる外国人の生活・労働・雇用・就職・在留資格などあらゆる分野の相談 =FRESCヘルプデスク:0120-76-2029=月~金(9:00~17:00) =FRESCの入管電話予約:03-5363-3025=月~金(9:00~17:00) ※ヘルプデスクは全国からの相談に対応。 ※どちらの電話でも、ベトナム語を希望する場合は、最初に「ベトナム語でお願いします」と日本語か英語で告げてください。 ■北海道 北海道外国人相談センター = 011-200-9595(平日9:00-12:00 / 13:00-17:00) ■宮城県 みやぎ外国人相談センター = 022-275-9990 ■茨城県 外国人相談センター =TEL:029-244-3811(ベトナム語:月・火・水) ■埼玉県 外国人総合相談センター埼玉 =048-833-3296 ■千葉県 千葉県外国人相談 =043-297-2966(平日9:00-12:00 / 13:00-16:00) =E-mail:ied@ccb.or.jp ■神奈川県 横浜市多文化共生総合相談センター = 045-222-1209 = E-mail:t-info@yoke.or.jp ■静岡県 静岡県多文化共生総合相談センター かめりあ = 054-204-2000(平日10:00~16:00) = E-mail:sir07@sir.or.jp ■愛知県 あいち多文化共生センター = 052-961-7902(月~土10:00~18:00) ■大阪府 大阪府外国人情報コーナー = 06-6941-2297 = E-mail:jouhou-c@ofix.or.jp ■大阪市 外国人のための相談窓口 = 06-6773-6533(平日 9:00~19:00、土日祝:9:00~17:30) ■兵庫県 神戸国際コミュニティセンター = 078-291-8441(ベトナム語:月・水 09:00~12:00、13:00~17:00) ■兵庫県 日越交流センター兵庫 = 078-646-3110 = E-mail:cntorimoto@yahoo.co.jp ■岡山県 岡山県外国人相談センター = 086-256-6052(平日9:00~17:00) = E-mail:support@opief.or.jp ■広島県 ひろしま国際センター = 0120-783-806 ■福岡県 福岡県外国人相談センター = 092-725-9207(毎日10:00~19:00) = E-mail:fukuoka-maic@kokusaihiroba.or.jp ■福岡市 福岡市外国人総合相談支援センター = 092-262-1799(平日8:45~18:00) 自治体や国際交流協会などの窓口リスト(全県) このコーナーでは、日本全国の都道府県(地方自治体)や国際交流協会などによる外国人向け相談窓口のリスト(ベトナム語版、日本語版)をご紹介します。 あなたのお住まいの都道府県名(日本語とアルファベット)が記載された四角い欄をクリックすると、その地域の相談窓口の一覧表が現れます。ベトナム語で相談できる窓口には赤い文字で「ベトナム語」と記されています。また、出てきた表の中の青いURLをクリックすると、その相談窓口のウェブサイトにつながります。 地域別:国際交流協会などの相談窓口リスト(リンク)
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困りごと相談簿 file 05:短期滞在ビザで出産
彼女は技能実習を無理にやめさせられ、自力で新しい仕事を探している最中に妊娠・出産しました。彼女は市役所や支援団体のサポートを受けて低費用で出産し、再就職もできました。彼女が出産の際に受けた助成や、再就職するまで在留資格(ビザ)をどうしたかについて紹介します。 カテゴリー 出産・子ども、在留資格 【相談者】 ・元技能実習生 ・20代・ベトナム人女性 ・関東地方在住 【概要】中途帰国→再訪日→出産&再就職 技能実習中に中途帰国 相談者は鹿児島県で介護の技能実習を始めましたが、その介護施設の経営不振によって1カ月半で宮崎県の別の施設に転職させられました。ところが、それから1カ月余りたったある日、監理団体の職人が突然、寮にやってきました。相談者は監理団体の車で空港に連れて行かれて飛行機に乗せられ、ベトナムに帰国させられました。 約100万円の借金をして訪日したのに、3カ月だけ働いて帰国させられては困ります。相談者は4日後に自費で日本に戻り、関東に住むベトナム人の友人宅を渡り歩きました。そんなある日、不法残留者の集まるパーティーで知り合った男性と関係を持ち、妊娠しました。互いに恋愛感情はなく相手に経済力もないため、妊娠の事実は知らせませんでした。相談者は1人で出産するつもりで病院に通い仕事探しも続けてきましたが、仕事が見つからず、困っていました。 再訪日、妊娠・出産、再就職 相談者はそんなとき、日越ともいき支援会と出会いました。支援会の支援で2020年12月に食品加工会社の面接を受け、合格。この会社と雇用契約を結んで新しい在留資格を取得し、その直後に出産しました。2021年4月から勤務する予定で、現在、保育所など子どもを預ける施設を探しています。 ポイント:監理団体による強制帰国は違法 希望しないのに帰国 相談者が帰国させられた背景には、勤務先の意向があったようです。2019年12月12日、相談者は監理団体から面会を求められましたが疲れていたので断ったところ、4日後に監理団体のスタッフと通訳が寮に訪れ、「今から空港に行くので荷物をまとめるように」と通告されました。また、「もう施設職員ではないので、このアパートに住むことはできない」とも言われました。その後、車で空港に連れて行かれ、ベトナム語の帰国同意書に署名させられたそうです。 強制帰国は違法 技能実習法やその運用要領で実習生の帰国や解雇については次のように規定されています。実習生が希望していないのに無理に帰国させることは違法です。 〇 技能実習生を技能実習計画の途中で帰国させる場合は、実習生に対し、意に反して途中で帰国する必要はないことの説明や帰国の意思確認を書面で十分に行ったうえで、外国人技能実習機構(OTIT)の事務所に届けなければならない。 〇 技能実習生が技能実習の継続を希望している場合は、受入会社や監理団体が責任を持って次の実習先を確保することが必要。 強制帰国への対処 日越ともいき支援会 監理団体や受入会社から上記のような対応が望めない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に相談してください。ベトナム語で相談内容を送信できます。電話もあります(0120-250-168)。事務所を直接訪れるのも有効です。 万一、OTITに相談しても解決しない場合は、次のような民間の相談機関もあります。「外国人実習生支援」は、緊急性の高い相談の場合、代表者が自分の名刺の画像をSNSで送ってくれます。そして、強制帰国させられそうになった場合は、日本の空港の出国審査(パスポート審査)で「帰国を強制されたが、本当は帰国したくない」と伝えるようアドバイスしています(その際に代表者の名刺の画像も見せます)。 外国人実習生支援(Facebook) 日越ともいき支援会 ポイント:再訪日後の在留資格 技能実習から短期滞在へ 相談者は自力で日本に戻り、不法残留者の家を渡り歩きましたが、技能実習の在留資格の期限が迫っていました。相談者が母子健康手帳をもらうために市役所の担当課を訪ねたところ、その後、市役所の担当者が通訳と一緒に何回かアパートに来て相談に乗ってくれました。この担当者が入管などに問い合わせ、短期滞在(30日)の在留資格に切り替えることができ、毎月更新してきました。 再就職先が決まり、特定活動へ 相談者は、面接で合格した会社との雇用契約書を入管に提出し、特定技能への移行を目指すことを条件に特定活動(雇用維持支援)の在留資格に変更してもらいました。在留期間は12カ月で、その間に日本語能力試験(JLPT)・N4と技能試験に合格すれば、特定技能1号の在留資格を取得できる可能性があります。特定技能1号では最長5年間働けます。 ポイント:出産費用と育児 相談者と赤ちゃん。右は日越ともいき支援会の吉水代表〈2021年〉 出産費用 市役所の担当者の手配で児童福祉法の助産制度を受けられ、分娩費用は5万円ですみました。 出産一時金 日本では出産した人に42万円を支給する「出産一時金」という制度があります。相談者の場合、 ・出産一時金を受給するには、国民健康保険への加入が必要 ・国民健康保険に加入するには、市役所への住民登録が必要 ・住民登録をするには、3カ月を超える在留資格が必要 という条件がありました。しかし、短期滞在(30日)から特定活動(12カ月)の在留資格に変更できたのは出産後となり、出産一時金はもらえませんでした。 出産一時金 相談者は、将来は子どもをベトナムの母親に預かってもらうつもりです。しかし、それまでは保育所などに預けて働くことを希望しています。
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