東京都港区の寺に拠点を置くNPO法人「日越ともいき支援会」は昔から在日ベトナム人(技能実習生、留学生など)の支援を行ってきました。新型コロナの感染拡大後は、困窮した在日ベトナム人の生活や就職・再就職のサポートに特に力を入れています。
支援会は新型コロナの影響で生活に困っている在日ベトナム人たちへの食料支援を行ってきました。段ボール箱に米やラーメン、調味料などを詰め、日本各地に発送しています。2020年3月~7月に約5,000箱を送り、その後も神戸のNPOと連携して食料支援を続けています。
2020年3月から約半年間で、新型コロナの影響で帰国が困難な元技能実習生や元留学生を中心に約100人の在日ベトナム人を保護しました。保護した人は無償で寺に住まわせ、食料も提供しています。
2020年9月以降は、帰国を待つ人よりも就職・再就職を希望する人への支援が中心になりました。無償で寺に住ませて食事を提供する以外に、特定技能外国人になるために必要な日本語能力試験(JLPT)や技能試験の勉強を指導しています。さらに、在留資格変更や就職先探しもサポートしています。
支援会が最近保護したベトナム人の大半が就職や再就職を希望しています。その中には元留学生や失踪していた元技能実習生もいます。
失踪中の元実習生を保護した場合、その人にまず「短期滞在」の在留資格を取らせ、不法滞在の状態を解消させます。
次に、「短期滞在」から再就職のための在留資格(雇用維持支援の「特定活動」)に変更できるように入国管理局(入管)と交渉します。失踪者であっても、職場の暴力などやむを得ない事情で失踪したということを証明できれば、再就職が可能です。
それを証明するには、監理団体(組合)や受入企業とのやり取り(メッセンジャーやLINE)、動画、写真などが証拠になります。支援会が2020年9月~2021年7月に保護した305人の失踪実習生のうち189人が「特定活動」(雇用維持支援)を取得することができました。
ただし、この在留資格を申請するには、元の監理団体に書いてもらう書類も必要です。監理団体がなかなか協力してくれないことが多く、支援会は苦労して交渉しています。
もちろん、技能実習を良好に修了した実習生は簡単な手続きでこの在留資格を取得できます。しかし、失踪期間が長すぎた場合などは、在留資格を変更できない場合もあります。その場合は、その人が帰国するまでアルバイトで収入を得られるようにサポートします。
また、技能実習の在留期間が残っている人の場合は、その人が実習を続けられなくなった事情をよく聞いたうえで、外国人技能実習機構(OTIT)・監理団体・受入企業の3者と協議し、その人を元の実習先(職場)に戻すか新しい実習先を探してもらうように調整します。
支援会の日本語授業
雇用維持支援の「特定活動」は特定技能外国人になることを前提とした在留資格です。特定技能外国人になるには日本語能力試験(JLPT)N4以上と希望職種の技能試験の合格が必要です。支援会は保護したベトナム人らの試験勉強も支援しています。
支援会には日本語を教えるスタッフが数人おり、このうち3人は日本語教師養成講座を修了しています。また、技能試験の勉強は、先に合格した先輩ベトナム人たちが週末に教えに来てくれます。
2021年は日本語の無償授業を毎日3時間行い、JLPTの模擬試験も毎週行ってきました。特定技能を目指す元実習生や元留学生たちは、授業以外にも毎日数時間、自分で勉強しています。
一方、保護しているベトナム人を雇用したいという企業が見つかれば、支援会が彼らに情報を提供します。彼らは働きたい職場があれば面接を受けますが、支援会は紹介料を一切取りません。
彼らの多くは、面接に合格すると、最初はアルバイトとして働き、JLPTや技能試験に合格すると「特定活動」から「特定技能」に在留資格を変更します。特定技能外国人は最長5年間、日本で働けます。
滞在者は毎晩一緒に食事
日越ともいき支援会は2021年7月15日現在、26人のベトナム人を保護しています。
代表の吉水慈豊さん(52)の父(前住職)はベトナム人僧侶の日本留学支援を1963年から続け、寺の離れに住まわせてきました。2011年の東日本大震災では、被災した86人のベトナム人を1カ月間保護し、その後も、困窮者を寺に一時的に住まわせる対応を続けてきました。
技能実習生(左)の職場変更のために新しい会社と交渉する吉水慈豊さん
慈豊さんはさらに、技能実習や留学などで行き詰まったベトナム人の支援を数年前から本格的に続けています。実習先の会社で不当な扱いを受けて困っている技能実習生を助けたり、予期せぬ妊娠で悩むベトナム人の出産や生活を支援したりもしています。
相談を受けた案件については、専門家と協議しながら、受入企業や監理団体、OTIT、学校などと交渉し、解決を目指します。2019年度の支援実績(関係先と交渉した案件数)は218人、保護実績は46人。2020年度は支援6,500人、保護306人でした。
【NPO法人・日越ともいき支援会】
◇電話:03-6435-6644
◇住所:〒105-0011東京都港区芝公園2-11-1-203
◇E-mail:n.tomoiki@gmail.com
◇代表理事:吉水慈豊(※電話に出た人に「りえさんをお願いします」と言うと、つないでくれます。)
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VAIJは日本にある各在日ベトナム人コミュニティグループ同士をつなぎ、助け合い、在日ベトナム人たちのあらゆるニーズに対応することを目指しています。
レクリエーションを通じた在日ベトナム人同士の交流▽学習・仕事・生活のサポート▽日越の文化交流の架け橋――などを目標に活動。全国各地に支部。
外国人在留支援センター(FRESC=フレスク)に行ってみました。弁護士による相談窓口や入管、ハローワークなどがワンフロアに集まり、通訳付きで連携して対応してくれます。
失踪した技能実習生の不安定な生活や不法就労の後ろめたさを紹介します。失踪すると、無収入の月も多いですし、働くと違法になります。