名古屋市の徳林寺を6月初めに訪れました。寺には十数室の宿坊(宿泊施設)があり、新型コロナウイルスの影響で生活に行き詰まったベトナム人四十数人とスリランカ人2人が身を寄せていました。
そのうちの1人ハインさん(25)=仮名=は2018年、技能実習生として沖縄の建築現場で働き始めました。しかし、仕事でミスをすると、上司に資材の鉄筋でヘルメットの上からたたかれました。ある日、鉄筋ですねをたたかれて激しく痛み、実習生の面倒をみる監理団体(受入組合)に相談しました。しかし、組合の責任者が通訳なしで訪れてほとんど調査せず、通院と休暇1日を手配しただけで終わりました。
鉄筋で頭をたたくいじめはその後も毎日続き、ハインさんは約2カ月後に姿を消します。実習生が職場を離れると不法滞在ですが、彼らに仕事を紹介する違法業者がいます。ハインさんもこうした業者を頼って全国を転々とし、アルバイトで1年半近く過ごしましたが、新型コロナで仕事がなくなり、名古屋入管に出頭しました。入管の許可を得て、出国まで徳林寺にお世話になる予定です。
ハインさん(左)
徳林寺の滞在者を管理するのは在東海ベトナム人協会副会長のユン・テイ・トゥイ・ユンさん(41)。2001年から日本に住み、地域のベトナム人の相談役です。ユンさんは生活に困った実習生や留学生の支援について高岡秀暢(しゅう・ちょう)住職(76)に相談し、4月から徳林寺でベトナム人の保護を始めました。
宿坊
宿坊の部屋
滞在者らは北海道や神奈川、大阪、鹿児島などで技能実習や留学をしていましたが、仕事がなくなり、Facebookで知ったユンさんに連絡してきました。滞在中の四十数人のうち70~80%は元技能実習生で、その大半がハインさんと同じく不法滞在者だったそうです。ほかに出国できない元留学生や元エンジニアもいます。
徳林寺は約30年前から困窮者や難民などの保護を続け、2011年の東日本大震災でも被災者を受け入れました。高岡住職は「不法滞在者が入管に出頭しても働くことはできず、だれかが生活の面倒をみなければならないので、うちで引き受けた。ただ、新型コロナの影響でいつ出国できるか見通しが立たないので、食料や資金の支援が引き続き必要です」と話しています。寺は住居と食料を提供し、協会がそれ以外の世話をするという役割分担で、料理・掃除・洗濯などは滞在者が自分たちで行っています。
保護を求める人の増加に備え、宿坊の増設を進めるベトナム人滞在者ら(2020年6月)
【徳林寺】
◇ 住所:〒468-0037 名古屋市天白区野並相生
◇ 生活や労働関係の相談=在東海ベトナム人協会・ユン副会長(080-3610-6997)
◇ 寄付(食料、お金)の連絡=高岡住職(052-896-1606)