体験談(技能)

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By KOKORO(毎日新聞社+VAIJ主催、在ベトナム日本国大使館など後援)

今回の先輩

ルオン・ティエン・ズさん
  • 2006年 9月ホアアン高校入学
  • 2009年 6月ホアアン高校卒業
  • 2010年 9月ハノイの会計専門学校入学
  • 2013年 6月ハノイの会計専門学校卒業
  • 2013年10月倉庫管理(カオバン市で)半年間
  • 2014年 6月ハノイの日本語センター
  • 2014年12月訪日。1カ月の研修後、光明製作所で実習開始
  • 2017年12月一時帰国
  • 2018年 7月光明製作所で実習再開
  • 2020年 7月帰国予定

< 1990年生まれ、カオバン省出身 >

はじめに

大阪の工場で5年間の技能実習を終えようとしているズさん。日本の財団法人が提供するプログラムに応募し、借金なしで訪日した。また、最初の3年間の実習後には60万円分の現金ももらった。技能実習の途中からは帰国後の就職のことを考え、仲間のだれよりも日本語の勉強をがんばった。ズさんの使った技能実習プログラムや仲間との実習生活について紹介する。

職場の技能実習仲間と大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)へ【2015年12月】

無借金で訪日

私は少ない費用で技能実習に行くことができました。それは、ベトナム労働・傷病兵・社会問題省と日本の公益財団法人・国際人材育成機構(略称:アイム・ジャパン)との覚書に基づくプログラムを利用できたからです。

専門学校時代の友だちとTam Daoへ【2013年6月】

この制度では、海外労働センターがベトナムで試験を行って生徒を選び、しっかりと日本語教育を行ってから技能実習生を送り出します。

Link: I’m Japanプログラムの技能実習生募集ページの例

私はハノイの専門学校を卒業後、倉庫管理の仕事をしましたが、知人の紹介でこのプログラムを知り、地元での説明会に参加しました。その後、カオバン省内で試験を受けて合格し、ハノイの海外労働センターで半年間、勉強しました。

訪日直後、大阪城公園の梅林で【2015年2月】

日本に行くまでに私が支払ったのは、授業料・寮費・食費の計約25,000,000 VNDだけで、ほかの費用は一切不要でした。だから、日本に行くための借金もゼロでした。

会社が費用を負担した社員旅行で神戸市の有馬温泉へ【2016年4月】

また、技能実習の最初の3年間を終えて一時帰国した際、アイム・ジャパンから支援金として60万円分のベトナム・ドンをもらいました。そして、半年後にまた訪日し、再び実習を続けていますが、2020年7月で合計5年になるので、技能実習はすべて修了です。 Link: I’m Japan

実習の内容と職場の様子

技能実習先は光明製作所(大阪府和泉市)で、水道の蛇口など給水装置を作るメーカーです。機械で加工された部品をケースに並べて運ぶのが私の主な仕事です。技能実習生は17人おり、全員がベトナム人男性です。

Link:  光明製作所

先輩実習生が帰国する日、職場の前で技能実習仲間で記念撮影

日本人の先輩たちはやさしい人が多く、親切です。最初は日本語があまり分かりませんでしたが、寮での勉強に加え、昼休みや残業前の休憩時間に日本人の先輩たちと話すうち、だんだん分かるようになりました。また、休日に先輩たちが私たちを野外バーベキューに連れて行ってくれたこともあります。

職場の日本人の先輩や家族とバーベキュー【2017年6月】

会社が費用を負担する1年に1度の社員旅行で【2019年4月】

日本での生活と送金

実習生17人は、会社が借りているアパート(寮)の5室に分かれて住んでいます。

2回目の訪日前にアイム・ジャパンのハノイ事務所で【2018年7月】

主な家電や家具は会社が用意してくれました。寮費は水道・光熱費を含めて毎月20,000円。私は買い物も外出もあまりしないので、4年9カ月で計約500万円を実家に送金することができました。ただし、実習が3年で終わる人もたくさんいます。

実習生仲間と部屋で飲み会【2016年1月】

朝は17人で一緒に寮を出て約2・6㌔の道のりを自転車で通勤します。雨の日には雨ガッパを来て自転車をこぎます。新しく後輩が来日したときや先輩が実習を終えて帰国するとき、旧正月のときなどは、寮の一室に集まってみんなで料理を作り、飲み会をします。仲間と長い時間を一緒に過ごしています。 ちなみに、日本では散髪代が高いので、仲間同士で髪の毛を切り合っています。散髪用のはさみを購入し、17人で使っています。

私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=21,604VND(2020年5月29日現在)

収入 (120,000円~160,000円)
手取り給料

120,000円~160,000円

※税金、社会保険料、寮費などを引いた後の手取り額

※このうち寮費は20,000円(※3ベッドルームのアパートに3人)、寮でのWi-Fi費用は1人1,000円

支出(合計 45,000円~50,000円)
水道・光熱費

0円

※電気・ガス・水道代(寮費に込み)

携帯電話

0円

※SIMなし(Wi-Fiのみ使用)

食費

35,000円

※主に自炊

雑費・交通費

10,000~15,000円

※職場で飲むジュース、たまに外食

差額(貯金)80,000~120,000円
貯金

80,000~120,000円

※実家への送金は毎月平均90,000円

技能実習仲間と自転車で近くの公園へ【2017年6月】

技能実習仲間と大阪城へ【2019年3月】

日本語の勉強

普段の勤務時間は残業も含めて8時~19時30分です。朝6時半に起き、夜23時に寝ますが、毎晩、就寝前の約1時間半、日本語の勉強をしています。また、1年半前からは、「ロータス・ワークス」という無料のオンライン講座で勉強しています。毎週1回、日本人の先生がスカイプで1対1の授業を行い、宿題も出してくれます。

大阪駅の上にある商業施設「ルクア大阪」で【2017年3月】

最初の3年間はあまり勉強しませんでしたが、2018年7月に2回目に日本に来てからは、帰国後の仕事のことを考え、日本語の勉強に力を入れました。日本企業のきちんとした仕事ぶりが好きですし、せっかく覚えた日本語を生かして少しでも高い収入を得たいので、帰国後も日本の会社で働くことを希望しています。2019年12月の日本語能力試験(JLPT)では、総合点は基準を超えたのですが、読解部門で2点足りなかったので、合格できませんでした。今度こそはと勉強をがんばってきたのですが、新型コロナの影響で2020年7月のJLPTが中止になり、とても残念です。

会社が費用を負担する社員旅行で姫路城へ【2016年4月】

ただ、職場の日本人の先輩が楽しい人で、休憩時間にたくさん話し相手になってくれますし、ロータス・ワークスの先生とも毎週会話をするので、この2年間で会話力は大きく伸びました。 Link: Lotus Works

日本の会社で学んだこと

「技能実習部門マイスター」の認定証【2020年2月】

2回目の訪日後、会社が費用を負担してチームリーダーとしての知識や能力を伸ばすための通信講座を受けさせてくれました。これまでに私を含む3人が受講させてもらい、テキストでの勉強や毎月の試験を経て、「技能実習部門マイスター」という認定証をもらいました。新しい実習生が入ってくると、私が仕事内容や職場での規則、買い物の仕方、ゴミの捨て方などを教えることが多く、実習生の中のリーダー的な役割を与えられていました。

5年近く日本で働いて日本人の仕事の仕方が好きになりました。掃除や整理・整とん、報告、あいさつなど、すべてにおいて仕事がきちんとしています。製品の質もすぐれており、不良品を仕分ける作業も厳格です。帰国後も、日本語力と日本での経験を生かし、日系企業で活躍できたらと思っています。

寮の近くの居酒屋で【2020年5月】

通勤途中、桜の花びらで覆われた歩道【2020年4月】