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私は日本の食品加工会社の本社に5年以上勤務し、外国人従業員の管理・指導を担当してきました。当社は全国に12の工場を持ち、各工場にベトナム人を中心に技能実習生が約100人ずついます。また、アルバイトの外国人留学生は12工場で計約2000人がおり、約70%がベトナム人です。
当社工場では、コンビニに出荷する惣菜やサラダ、パスタ、デザートなどを作っています。従業員は、野菜の皮むき▽肉や麺をゆでる、揚げる、焼く▽袋詰め――など、さまざまな仕事を分担しています。今回は、実習生や留学生が引き起こしがちな職場での問題点を紹介します。当社工場での事例ではありますが、他の業種と共通する部分もあろうかと思います。日本で働くベトナム人の参考になれば幸いです。
ベトナム人技能実習生に多い仕事上の問題点は次の通りです。
● 指示に従わず自分の習慣で仕事をする
– 食品の熱を温度計で測るよう指示されているのに、温度計を使わず見た目や感覚だけで判断してしまうことがあります。その結果、生焼けの食品が出荷され、消費者からクレームを受ける事態になることもあります。
– 大鍋で肉をゆでる際、指定の分量やゆで時間を守らず、1度に大量の肉を投入し早く済まようとする人がいます。このやり方だと、肉のゆで具合が不均一になったり、生煮えの部分が残ったりします。
– 袋詰めの食材を開封する際、一方向ではなく何度もハサミを入れる人や、一部分だけを切って中身を取り出そうとする人がいます。これだと、切り口のビニール片が食品に混入する恐れがあります。会社はこのようなやり方を禁止していますが、指示に従わない人がいます。
● 仕事中におしゃべりする
– 作業中、私語を控えるように指導していますが、「手は動かしているのだから、話すぐらいは平気だろう」と考える人がいます。しかし、仕事に必要のない会話をすると、作業が不正確になる恐れがあるほか、周囲の人も気になって作業効率が下がる可能性があります。
● 自分が出勤できないとき、簡単に人に頼んで代わってもらう
– ほとんどのベトナム人がこの行為は仕事に支障をきたさないと考えがちですが、それは違います。会社は個々の従業員に作業を割り振って責任を持たせています。また、無断で人の配置を換えると、十分に理解していない人が作業することになり、生産ラインが混乱し生産効率や製品の質が下がる可能性があります。
● 安全、衛生の規則などを軽視する
– 例えば、床に落ちた食材を生産ラインに戻そうとする人がたまにいますが、衛生管理上、絶対にNGです。また、落ちたものを拾えば、そのときにつけていた手袋も替えなければなりません。
● 職場でのあいさつをおろそかにする
– 日本では、始業・終業の際などに顔を見て声を出してあいさつすることが大事です。職場でよい人間関係を築く第一歩となります。
当社工場では、留学生アルバイトに下記のような傾向が見られます。
● 嫌なことがあれば簡単に転職する
– 日本人の若者にも同じ傾向がありますが、外国人留学生はその傾向が一層強いと見られています。
● 遅刻や無断欠勤が多い
– 複数のアルバイトを兼務していることもあってか、留学生アルバイトは実習生に比べて規範意識が低い傾向があり、遅刻や無断欠勤、無断でのシフト変更が後を絶ちません。
● 仕事中にタバコを吸う
– 留学生の中には、「トイレに行く」と言ってトイレや喫煙室でタバコを吸う人がいますが、これも禁止されています。喫煙は休憩中のみ許されています。
● 勤労意欲が低い
– 留学生アルバイトは技能実習生と比べて仕事への意欲が低い傾向があります。「一生懸命に働く」というより「淡々と働く」というイメージが留学生にはあります。
最後に、ベトナム人の実習生や留学生アルバイトの長所を紹介します。彼らは他国の実習生、留学生と比べて以下の点で高く評価されています。
● 器用で作業が速い
– 所作が機敏でテキパキとしています。また、手先が器用です。
● 積極的に意見を言う
– 仕事に対する意見やアイデアを積極的に発言し、社内環境の改善に貢献してくれます。
● 学ぶ意欲があり、理解が早く、日本語を覚えるのも早い
いかがでしたか? 自分たちがどのように見られているかを意識することで、働く姿勢を改善することができます。そして、真面目で堅実な勤務態度を身に付ければ、将来、あなたの役に立ちます。