技能実習の3年間でいったいいくら貯金できるのでしょうか? 実習生が3年間で送金できる額は職場によって違います(これは高い送出機関を使っても同じです)。しかし、日本での給料が少ない場合でも、訪日前の送出機関への支払いが少なければ、平均以上の貯金をすることができます。
技能実習でいくら貯金できるか
日本で3年間技能実習をすれば、いったいいくら貯金できるのでしょうか?「日本に行くための借金を返済しても、さらに500,000,000 VND(約237万円)貯金できる」と勧誘する人もいます。確かにそのようなケースもありますが、決して多数ではありません。
※100円=21,115 VND(2021年4月8日現在)
約40人の技能実習経験者へのヒアリングから典型的な8例をセレクトし、実習生が3年間で貯金できた金額とその背景を紹介します。後半では「送出機関の選び方」もお伝えします。それでは、8人のうち3年間で貯金できた額の少なかった事例から順に紹介します。
8位:234,800,000 VND
2017年から3年間、食品加工場で技能実習をした先輩の事例です。3年間の送金額が平均より少し少ないことに加え、送出機関への支払い額が平均より大きかったことが、貯金の少ない要因です。
A:送出機関に支払った額
187,500,000 ₫
B:3年間で日本からベトナムに送ったお金
¥2,000,000
422,300,000 ₫
B-A:残ったお金(貯金)
234,800,000 ₫
7位:283,790,000 VND
2014年から3年間、静岡県の電気器具部品工場で実習した先輩の事例です。
・送出機関に支払った額は平均的ですが、政府の規定よりはかなり多いです。
・日本での手取り給料があまり多くありませんでした。
A:送出機関に支払った額
138,510,000 ₫
B:3年間で日本からベトナムに送ったお金
¥2,000,000
422,300,000 ₫
B-A:残ったお金(貯金)
283,790,000 ₫
6位:307,875,000 VND
2016年から3年間、食品加工場で技能実習をした先輩の事例です。ベトナムへの送金額は平均的ですが、送出機関にかなり多くの費用を支払ったため、残ったお金が少なくなりました。
A:送出機関に支払った額
220,000,000 ₫
B:3年間で日本からベトナムに送ったお金
¥2,500,000
527,875,000 ₫
B-A:残ったお金(貯金)
307,875,000 ₫
5位:332,300,000 VND
2015年から3年間、栃木県の医療機器工場で技能実習をした先輩の事例です。インターネットで評判のよい送出機関を探して1年間勉強してから日本に行きました。
残業代が少なく、ベトナムに送金できた額は平均より少なかったのですが、送出機関に支払った費用が安かったので、借金返済には困りませんでした。また、送出機関の日本語教育がよく、日本語力をつけてから訪日したので、職場の日本人たちと仲良くなり、満足度が高い実習生活を送れました。
親切な先輩や多くの仲間と楽しい日本生活(送出機関を紹介)
A:送出機関に支払った額
90,000,000 ₫
B:3年間で日本からベトナムに送ったお金
¥2,000,000
422,300,000 ₫
B-A:残ったお金(貯金)
332,300,000 ₫
4位:412,875,000 VND
2019年から鹿児島県のパン工房で技能実習をしている先輩の事例です。3年間でベトナムに送金できそうな額は平均的ですが、送出機関に支払った額が少ないので、貯金額は平均以上になりそうです。
また、職場の日本人がみな親切なのと、監理団体(受入組合)の担当者がとても親切なので、日本で充実した生活を送っています。
いきいきとパン作り(送出機関と監理団体を紹介)
A:送出機関に支払った額
115,000,000 ₫
B:3年間で日本からベトナムに送るお金(予想)
¥2,500,000
527,875,000 ₫
B-A:残るお金(貯金・予想)
412,875,000 ₫
3位:446,220,000 VND
2016年から3年間、食品加工場で技能実習をした先輩の事例です。送出機関に支払った額は平均的ですが政府の規定よりは高いです。しかし、ベトナムへの送金額は平均以上を確保できたので、残ったお金も多くなりました。ただし、平均以上の送金をできるかどうかは訪日前には分かりにくいので、費用の少ない送出機関を選ぶ方がより確実に平均以上の貯金を残せます。
A:送出機関に支払った額
145,000,000 ₫
B:3年間で日本からベトナムに送ったお金
¥2,800,000
591,220,000 ₫
B-A:残ったお金(貯金)
446,220,000 ₫
2位:528,450,000 VND
2019年から東京の水産加工場で技能実習をしている先輩の事例です。ベトナム政府の費用規定を守っている送出機関を選び、送出機関への支払いが少なかったので、平均よい多い貯金になりそうです。
優良な送出機関を選んで無借金で技能実習(送出機関を紹介)
A:送出機関に支払った額
105,000,000 ₫
B:3年間で日本からベトナムに送るお金(予想)
¥3,000,000
633,450,000 ₫
B-A:残るお金(貯金・予想)
528,450,000 ₫
1位:538,450,000 VND
2017年から3年間、宮崎県の農場や併設の食品加工場で技能実習をした先輩の事例です。ベトナムの日本語学校で2年間学んでから訪日。職場で技能実習生のリーダー的存在になり、2020年から同じ職場で特定技能外国人になりました。
「送出機関に支払った額」には日本語学校の授業料も含まれています。この学校では、生徒が1年半~2年間勉強し、日本語能力試験(JLPT)N3レベルになってから日本に行きます。授業料は月2,000,000 VNDで、遠方の生徒も受け入れます。生徒に紹介する技能実習先は、教師たちが現地を訪問して給料や職場環境などを調べて選んだ職場だけです。また、送出機関には国が決めた手数料しか支払いません。
技能実習から特定技能へ(日本語学校を紹介)
A:送出機関に支払った額
95,000,000 ₫
B:3年間で日本からベトナムに送ったお金
¥3,000,000
633,450,000 ₫
B-A:残ったお金(貯金)
538,450,000 ₫
まとめ
技能実習生が3年間でベトナムに送金できる額は多くの場合、200万円~300万円(約422,000,000~634,000,000 VND)です。これは高い送出機関を使っても安い送出機関を使っても同じです。そこで、より多くの貯金を残すためには、費用の少ない送出機関を探すことが大切です。
ベトナム政府の規定では、送出機関による日本語教育費は約520時間に対し590万ドン以下、送出手数料は3,600ドル以下(3年契約の場合)となっています。しかし、実際の費用はこれよりかなり高くなっています。費用が高くなる背景には次のようなものがあります。
・日本の監理団体(組合)への謝礼=技能実習の求人1人につき1,000~1,500ドル
・実習生を送出機関に紹介する人(ブローカー)への謝礼=1人につき500~1,500ドル
こうした費用は実習生から送出機関への支払いに上乗せされます。しかし、最近はこのような謝礼を払わない送出機関も少しずつ増えてきました。こうした送出機関を探すと、支払いが少なくなり、3年間の技能実習で残せるお金も増えることになります。
送出機関の選び方
それでは、良心的な送出機関や監理団体をどうやって探したらよいのでしょうか? ポイントをお伝えします。
送出機関を選ぶ手順
インターネットで情報収集
「信用できる送出機関ランキング」などのキーワードで検索します。
技能実習の先輩から情報収集
帰国した人より現在日本にいる現役の実習生から話を聞く方が有効です。
送出機関に直接連絡
送出機関に自分で直接連絡して申し込むだけで、紹介手数料(500~1,500 USD)を節約できます。
監理団体(受入組合)に直接連絡
日本に行ってからのケアを重視するなら、最初に監理団体を選ぶのが得策です。監理団体のケアは非常に重要です。
送出機関を訪ねる
できれば授業も見学しましょう。
送出機関を選ぶ際のポイント
先輩たちが支払った費用
技能実習生の求人を紹介した受入組合の幹部に求人1人につき1,000~1,500ドルの謝礼が支払われる事例がまん延しています。その費用は実習生から送出機関への支払いに上乗せされます。
給料、生活費、送金額
KOKOROサイトのすべての体験談に先輩たちの給料や生活費、送金額が掲載されています。
送出機関での日本語教育の内容
日本語力をある程度身に付けてから日本に行った方が職場に溶け込みやすく、日本で日本語も上達します。日本語力を高めると、その後の就職にも有利です。
給料以外の処遇、監理団体のケアの内容
技能実習では給料以外の処遇や監理団体のケアも非常に大切ですが、監理団体によって実習生のケアに大きな差があります。
紹介手数料(紹介者への謝礼)の有無
紹介手数料を禁止している送出機関は、政府が決めた費用規定を守っていることが多く、良心的な紹介やケアを期待できる可能性が高くなります。
DOLABの認定
ベトナム労働・傷病兵・社会省(MOLISA)の海外労働管理局(DOLAB)から認定された送出機関は日本の外国人技能実習機構(OTIT)のHPに掲載されています。
外国政府認定送出機関一覧(OTIT)
それでは、この記事を参考に送出機関を上手に選び、無駄な支出のない技能実習を目指してください。