108軍中央病院が日本の大学病院と提携
2025年01月16日
ベトナムのトップ医療機関の一つであるハノイの「108軍中央病院」のレ・フー・ソン理事長(院長)とラム・カイン元副理事長が2024年10月に来日しました。ソン理事長らは大阪公立大学医学部附属病院や富山大学附属病院と今後の提携に関する合意文書(MOU)を交わし、東邦大学医療センター(東京)とも今後の提携に向けて協議を行いました。108軍中央病院は日本のこれらの病院とどのような提携を目指すのでしょうか。ソン理事長にインタビューしました。
108軍中央病院はベトナムのトップ病院
――まず、108軍中央病院がどのような病院なのか教えてください。
ソン理事長 当院は全ベトナムでトップ5に数えられる病院の一つで、軍病院としてはトップです。医師・看護師を含め約3,000人のスタッフがおり、通院患者は毎日約5,000人、入院患者は常時1,800〜2,000人います。要人を受け入れる病院としても知られており、今年7月に老衰と病気で亡くなった共産党最高指導者のチョン書記長も当院でケアしました。
軍病院は、政府関係や現役・退役軍人が治療を受けることが主眼ですが、軍に関係のない一般の人ももちろん受診できます。
当院は常に最新の医療設備・機器を採り入れています。医師もベトナムのトップレベルの医師を集め、世界レベルの医師も多数います。つまり、ベトナムで最新設備と先端技術で医療を提供している病院です。
ソン理事長 当院は全ベトナムでトップ5に数えられる病院の一つで、軍病院としてはトップです。医師・看護師を含め約3,000人のスタッフがおり、通院患者は毎日約5,000人、入院患者は常時1,800〜2,000人います。要人を受け入れる病院としても知られており、今年7月に老衰と病気で亡くなった共産党最高指導者のチョン書記長も当院でケアしました。
軍病院は、政府関係や現役・退役軍人が治療を受けることが主眼ですが、軍に関係のない一般の人ももちろん受診できます。
当院は常に最新の医療設備・機器を採り入れています。医師もベトナムのトップレベルの医師を集め、世界レベルの医師も多数います。つまり、ベトナムで最新設備と先端技術で医療を提供している病院です。
――108軍中央病院の中で特に優れた技術を持つ医療分野は何ですか?
ソン理事長 全体に高い水準ですが、特に挙げるなら、肝臓移植や幹細胞移植、骨髄移植、画像診断、脳血管疾患のカテーテル治療などです。
地理的にも文化的にも近い日本と提携
――日本の大学病院と提携する理由は何ですか?
ソン理事長 私たちは今まで多くの国々の医療機関と提携してきました。例えば、ドイツやオーストラリア、アメリカ、フランスなどです。そのなかでも、日本はベトナムから地理的に近く時差も2時間だけですし、両国には文化的な共通点もたくさんあります。また、越日両国の政府間では包括的戦略的パートナーシップも結ばれています。
これは、ベトナムのトゥオン国家主席が2023年11月に訪日して岸田首相と首脳会談を行い、両首脳は2国間関係を「アジアにおける平和と繁栄のための広範な戦略的パートナーシップ」から「アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」に格上げすると発表しました。「包括的戦略的パートナーシップ」はベトナム外交における最高レベルの2国間関係で、日本以外で同じ関係を結んでいるのは中国、ロシア、インド、韓国、米国の5カ国だけです。
交流の深い3つの大学病院を訪問
大阪公立大学医学部附属病院
――今回、日本のどこの大学病院を訪問しましたか?
ソン理事長 今回、大阪公立大学医学部附属病院と富山大学附属病院、東邦大学医療センター大橋病院(東京)の3病院とトップ会談をしました。このうち大阪・富山とは今後の医療技術の交換に関する合意文書(MOU)を締結しました。
――これらの大学と108軍中央病院とのこれまでの関係を教えてください。
ソン理事長 大阪公立大学の前身である大阪市立大学と以前からMOUを結んでおり、医療技術に関する情報交換を続けていたほか、当院の若手医師を留学生として受け入れてもらい、1人が博士号を取得、3人が3カ月の短期留学プログラムを修了し、1人が現在も博士課程で研究中です。このような関係が下地となって、今回、大阪公立大学医学部附属病院と当院との間で新しいMOUを結びました。
富山大学とも以前から交換留学に関するMOUを結び、同大学で当院の医師4人が博士号を取得し、現在も2人が留学中です。今回は富山大学とのMOUを保持したまま、大学附属病院とも医療技術の交換に関する新たなMOUを交わしました。
東邦大学には当院から短期留学プログラムに参加した医師がいました。
医療技術習得のため日本に医師派遣へ
――大阪公立大学医学部附属病院とは今後どのような提携を目指しますか?
鶴田大輔・大阪公立大学医学部長とソン理事長
ソン理事長:今回のMOUの主な目的は次の通りです。➀医療技術の移転(習得)のために当院の医師を大阪に派遣する。➁両病院がさまざまな研究課題に共同で取り組む。③先方の医師を当院に招いて先端医療技術の指導やレクチャーを行ってもらう。④両病院が協力して医療に関するシンポジウム等を行う。
――富山大学附属病院とは今後どのような提携を目指しますか?
林篤志院長(中央)ら富山大学附属病院の幹部とソン理事長
ソン理事長:富山大学附属病院から特に学びたいことはすい臓ガンの治療(手術を含む)と乳がんの手術、目の病気の治療です。まず、先方の教授や専門医を当院に招いてレクチャーを行ってもらいたいです。また、将来は、当院から富山に医師を3~6カ月間派遣し、すい臓ガン手術・治療を中心に医療技術について研修を受けさせたいと希望しています。
――東邦大学医療センターとの提携についても教えてください。
ソン理事長と東邦大学医療センター大橋病院の渡邉学院長
ソン理事長 東邦大学医療センターはとても立派な病院でした。しかも、東京の都心にあるので、在日本ベトナム大使館職員や東京に住むベトナム要人の治療をお願いできるかも知れないと思いました。今後、両病院の協力関係を一層深めていきたいと思います。
今年4月には、乳がん治療にくわしい東邦大学医学部の長田拓哉准教授にも当院を訪れ、見学をして頂きました。近い将来、長田先生のご助力を得て当院に乳がん専門の診療科を設けられたらと考えています(現在は産婦人科などで診療)。
ベトナムから日本に伝えたい医療技術
――逆に108軍中央病院から日本の大学病院に伝えたい医療技術は何ですか?
ソン理事長 今回の訪問で日本の各大学病院に当院の次のような長所をお伝えしました。➀患者数が非常に多いし、日本には少ない症例もあるので、共同研究の貴重なパートナーとなり得る。➁若い医師が多く向上心も強いので、国際プロジェクトを組んで医療技術・知識を交換し、ともに発展するための相手として適している。
日本では少ない症例としては、マラリアやデング熱などの熱帯疾患があります。また、当院ではバイク・自転車での重傷事故患者の治療件数も非常に多いです。地球温暖化の進行で日本でもデング熱患者などが増え始めていますし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に見られるように、グローバル規模の感染症拡大に対する多国間協力の重要性も増しています。
医療分野における日越の協力は非常に重要であり、私は今後、こうした協力関係の発展に引き続き尽力していきたいと思います。
Lê Hữu Song(レ・フー・ソン)
ベトナム108軍中央病院教授・理事長。ベトナム軍少将。臨床医薬研究所理事長。専門分野は感染症(ウイルス性感染症、細菌性感染症)と呼吸器疾患、消化器疾患、熱帯疾患(デング熱、マラリアなど)。